ビジネスマンじゅんごろうのONとOFF

ビジネスマンならではの視点で趣味やビジネス、社会について論じます。

沈まぬ太陽

2009-10-25 21:49:44 | 映画・DVD
映画「沈まぬ太陽」を映画館で見てきた。
この映画の原作となった小説はすでに読んでおり、その深さに
ショックさえ覚え、どのように映画化されるのか興味深かった。

ストーリーを知らない方はネットで検索していただければ、
あらすじを知ることができるが、「ナショナルフラッグキャリア」
である「国民航空」の一社員の物語である。

国民航空とはもちろんJALのことで、御巣鷹山の事件など、実在の
事件、人物をモデルとしたストーリーである。

映画の完成度はまあまあだと思う。
昭和の雰囲気が出ていたし、パキスタンやアフリカなどちゃんと
現地で撮影した後が見て取れるし、
なんといっても棺おけが体育館に並ぶ姿は壮観である。

ただ、原作に忠実とするあまり、肝心のメッセージ性が薄れている気
がする。小説を読むとわかるが、主人公が会社の体質や社内政治に挑む姿が
描かれている。
が、いかんせん登場人物が多いので、原作を知らない人が見てもついていくのが
大変なのではないか。

この映画はなんと3時間半を越えるもので、途中に10分間の休憩が入る。

無理にひとつにしなくとも御巣鷹山の事件の前でいったん区切ったほうが
作品として完結できたのではないだろうか。
ちなみに主人公は転勤でパキスタンやアフリカに行くことになるのだが、
それを見て「ある意味うらやましい」などと思ったとしたら大間違えである。
小説を読めばわかるが、日本の、しかも民間企業でこんなことがあるのか、
という感想を持つだろう。

それにしても、この作品は全体を通して「国民航空」という会社の体質を
批判的に描いていることから、JALはひどくこの映画化に反対しただろう。
小説が連載された新潮社は当時JALはいっせいに広告を出さなくなったと
いう。
雑誌より影響の大きい映画化にも当然圧力を与えたことは想像できる。

最近JALの再建が報道されているが、圧力をかける体力もなくなっている
のだろう。映画化がこれほど遅れたのもそれが理由だろう。
一般の人から見ると航空会社というのは簡単に入れるものでなく
頭が切れる人たちが集まっていると思うものだが、今は「政府に首根っこ
をつかまれている」状態だ。

この映画は今のJALと重ね合わせてみると非常にタイムリーであるが、
もし映画を見ようと思っていたら小説を読んでからにすることをお勧めする。

ちなみに私、今は山崎豊子の別の小説「二つの祖国」を読んでいます。