JMのバレーボール観戦記

テレビのバレーボール解説では触れられない戦術面や選手個人の特徴について、「全員応援」の立場から語ります。

レフトとセンターの表裏 全日本女子の場合

2012-09-12 20:14:09 | 用語解説
前回の記事では、基本的に表に攻撃力のある選手を入れる、と紹介しました。しかし、全日本女子の表裏は以下のようになっています。

表レフト:木村沙織選手
裏レフト:江畑幸子選手、迫田さおり選手
表センター:荒木絵里香選手、大友愛選手
裏センター:荒木絵里香選手、井上香織選手

これを見ると、あたかもレフトの江畑幸子選手と迫田さおり選手は攻撃力が無いように見えますが、本当にそうでしょうか。またセンターでは荒木絵里香選手が表と裏の掛け持ちをしています。全日本女子の表裏は単に攻撃力の比較で決まるわけではない、と分かりますね。

この理由はいくつかあります。

・サーブレシーブフォーメーション
全日本女子は、表レフト、ライト、リベロでサーブを取ります。そのため、レフトの中でサーブレシーブできるのが木村沙織選手だけなので、木村沙織選手は自動的に表に入り、江畑幸子選手と迫田さおり選手が裏に入ります。また、江畑幸子選手や迫田さおり選手はバックアタックが非常に良いので、前衛が2枚の時にバックアタックを打って攻撃参加できます。このようにして、全日本女子ではバックアタックが得意な攻撃専門レフトの2人を裏に入れています。

・バックライトが無い
全日本女子のライトの新鍋理沙選手と山口舞選手はバックライトから打たないため、ライトが後衛(つまりセッターが前衛)の時には右半分からの攻撃がなくなります。セッター前衛を2回経験する表センターには、ブロードでライト側に回れる選手を入れたいのです。そうでないと、マークが絞られてしまいます。そのため、ブロードが得意な大友愛選手は表、AクイックやBクイックが得意な荒木絵里香選手は裏に入ります。

・山口舞選手と井上香織選手のコンビ
井上香織選手はブロードが得意なため、本来は表に入ります。しかし、山口舞選手と井上香織選手は、隣に並んでダブルクイック、ダブルブロード、山口舞選手のBセミへの切り込み、山口舞選手のクイックを追い越してのブロードなど、多彩な攻撃を見せます。そのため、山口舞選手がライトに入るときには、井上香織選手は山口舞選手と隣り合うように裏に入ります。その際、荒木絵里香選手は表となります。この場合は、裏レフトがバックライトからも攻撃参加し、右半分からの攻撃を補います。

・控えセンターの攻撃力のなさ
OQT時は荒木絵里香選手が最も攻撃力のあるセンターでしたから、荒木絵里香選手が表に入りました。

レフトとセンターの表裏 一般論

2012-09-12 19:03:42 | 用語解説
バレーボールのアタッカーのポジションは、レフト、センター、ライトの3種類です。この中から、レフト2人、センター2人、ライト1人がコートに立ちます。常に前衛にレフトもセンターも1人ずつ居られるように、両レフトと両センターは互いに対角を組み、以下の2通りのフォーメーションを組みます。両方ともセッターサーブ時を表し、点線はネットです。

・フロントオーダー
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R l C
c L S

・バックオーダー
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R c L
l C S

このフォーメーションでくるくる回るので、レフトが右にいたりライトが左にいたりセンターが左右にいる場合があります。その時には、サーブが打たれた瞬間に各選手が自分のポジションへとダッシュして戻ります(例外あり、今後解説します)。

どちらのフォーメーションにしろ、セッターの隣にいるレフトとセンター(上の図では大文字)は、そのままセッターの隣で前衛に回るので、セッターと同時に前衛にいるローテが2回あります。つまり、前衛のアタッカーが2人になる苦しいローテを2回経験するため、それなりの攻撃力が必要となります。そのため、このレフトとセンターを表レフトや表センターと呼びます。

また、ライトの隣のレフトとセンター(上の図では小文字)は、セッターと隣り合わないため、前衛でセッターと居合わせる苦しいローテが1回しかありません。そのため、ブロックに囲まれると打てない選手が入ることが多く、裏レフトや裏センターと呼びます。

つまり、セッターという攻撃できない選手がいるので、その隣には表レフトや表センターという攻撃力のある選手を配置して、セッターの穴を埋めよう、という考え方です。

ここまでが一般論です。次の記事では、全日本女子でのレフトやセンターの表裏について、詳しく解説していきます。

木村沙織選手

2012-09-12 18:52:57 | 選手紹介
・基本情報
背番号18番、185cmのレフト

・スパイク
木村選手はWC2007からロンドンにかけてスパイクが年々変化してきました。WC2007のころは、決まるのが不思議で仕方ないような軟攻で嫌な所に嫌なタイミングで落としていました。当時は高速ブロックアウトの高橋みゆき選手や強打の栗原恵選手がいたので、木村選手は打ち屋ではありませんでした。北京では、バックセンターの攻撃が速くなり、強打も見られるようになりましたが、前衛では基本的にライトからややブロードしながら両足ジャンプでクロスを中心に嫌な所に落とす感じでした。2009年からはレフトエースとして、前に大きくジャンプして体重を乗せた攻撃を見せ始め、また手首の柔らかを活かしたレフトからの超クロスも次第に強打できるようになりました。WC2011のころからはパワーもつけています。ロンドンでは圧倒的な攻撃力を活かして、前衛では主にレフトから打ち、S1時のみライトから打ちます。バックからは、ほとんど全てをセンターから高速で打っていました。ただ、バックセンターはトスが合わず、軟攻になっていました。

・レシーブ
表レフトなので、サーブでかなり狙われ、乱される場面が多いですが、あそこまで狙われたら仕方ないでしょう。自分のサーブレシーブが乱されても、自分で2段を打ち失敗を帳消しにしていました。ただ、本当に狙われ続けるとどうにもならないことになってしまいます。スパイクレシーブは、読みも上げる確率も上がったレシーブの球質も最高峰と言えます。強打に対する守備範囲はやや狭いですが、軟打に対してはどこまででも食らいつきます。

・トス
球質も良いしクイックやブロードにも上げられます。しかし、2段を上げるより2段を打つ役割が大きいので、最近ではあまりトスを上げません。

・ブロック
なぜか昔から苦手のようです。最近ではブロードに対する待ちかまえるブロックは上達しました。その他についても上達に期待です。

・サーブ
コートの左側から、ブロードジャンプフローターを打ちます。以前のネットに平行に走ってふんわり揺らすサーブのイメージがありますが、最近はネットに垂直に近い斜め方向に走り、球速がフローターとは思えないくらい速いです。狙いも抜群です。

・JMが選ぶ思い出のシーン
ロンドンの中国戦、相手レフトのクロスをレシーブしてからレフトからクロスに打ち込んだりと、本当に覚醒している感じでした。