JMのバレーボール観戦記

テレビのバレーボール解説では触れられない戦術面や選手個人の特徴について、「全員応援」の立場から語ります。

狩野舞子選手2枚替え分析 ロンドンイタリア戦

2012-10-29 13:52:07 | メディア注目選手のその後
ロンドンのイタリア戦は、第三セットは日本が取ったものの、第一第二第四セットはイタリアが日本のレフト攻撃のコースを徹底的に分析して拾って繋ぐバレーを展開し、日本が負けてしまいました。データが無かった大友愛選手と新鍋理沙選手は通用する部分もありましたが、やはりポイントゲッターではないため苦しい試合でした。ライトスタメンに新鍋理沙選手を配置したこの試合についても、各セットの前衛2枚ローテと2枚替えローテの得点-失点数を計算しましょう。

第一セット
前衛2枚ローテ 6得点7失点→-1点
狩野舞子選手2枚替えローテ 3得点6失点→-3点

第二セット
2枚替えなし

第三セット
1回目の前衛2枚ローテ 4得点4失点→±0点
2回目の前衛2枚ローテ 5得点3失点→+2点
山口舞選手2枚替えローテ(1ローテで終了) 0得点3失点→-3点で、これが3ローテ続けば-9点

第四セット
2枚替えなし

さて、第一セットでは狩野舞子選手2枚替えにより-2点の効果があったことになります。これは2枚替えの最低条件を満たしていません。イタリアはもともと日本と同レベルのチームで、この試合に限っては完全に格上でした。狩野舞子選手2枚替えが格上には通用しないというOQTからの傾向が繰り返されたことになります。

このように、狩野舞子選手2枚替えの失敗がきっかけで、第三セットには山口舞選手を使った2枚替えを行いました。しかし、山口舞選手が中道瞳選手のトスを打つこの2枚替えは、相性的にもデータ的にも最悪です。実際、-10点の効果がありました。この2枚替えは途中で戻されてしまいましたが、山口舞選手がS1でレフトから打ち切れなかったのが原因です。それなら、新鍋理沙選手がサーブを打つローテまでは2枚替えせずに、江畑幸子選手サーブ時に2ローテのみ2枚替えして、山口舞選手がレフトから打つローテを回避すれば良かったのではないでしょうか。新鍋理沙選手はサーブも良いですし。もしくは、OQTセルビア戦と同じく、裏センターのサーブ時にピンサとワンブロで中道瞳選手と山口舞選手を投入しても良かったはず。

このように、この試合では絶対に苦しくなると分かっている狩野舞子選手2枚替えで失敗し、その代案として不適切な山口舞選手2枚替えを第三セットに行ってしまいました。監督のデータ活用力を疑わざるを得ない結果となってしまい、残念です。

狩野舞子選手2枚替え分析 ロンドンアルジェリア戦

2012-10-27 23:01:34 | メディア注目選手のその後
一つ前の記事で書いたとおり、OQT期間中で狩野舞子選手2枚替えは格下にしか通用しないことが分かりました。なのに、ロンドンでも狩野舞子選手が2枚替えで出場しました。分析しましょう。

第一セット
前衛2枚ローテ 7得点4失点→+3点
2枚替えローテ 4得点4失点→±0点

第二セット
2枚替えなし

第三セット
前衛2枚ローテなし

この試合で比較分析が可能なのは第一セットのみです。第三セットは2枚替えがありましたが、前衛2枚ローテがなく、メンバーもローテも代わっていたので比較対象がありません。

さて、格下ということで2枚替えの最低条件は満たされると期待したいところですが、なんと第一セットでは-3点の効果。これは目を疑う結果です。そのうち-1点分は狩野舞子選手自身のスパイクミスでした。

もちろん、この2枚替えが完全に失敗であったわけではありません。アルジェリアが狩野舞子選手のブロックを警戒し、頼りないライト攻撃を主体とした単調なバレーを展開したからです。しかしやはり最終的には点数が全てです。

このような具合で、ロンドンの初戦は2枚替えによる-3点というハンデを追ってスタートしたのでした。

もちろん、狩野舞子選手は一本良いブロックをしましたし、繋ぎの部分ではサイドアタッカーとは思えないような質のトスを上げていました。サーブもかなり良かったです。このあたりは、2枚替え分析連載が終わってから取り上げます。それまでは狩野舞子選手に対して批判的な言葉が並びますが、連載終了後までお読みいただいてから総合的に考えていただければと思います。

狩野舞子選手2枚替え OQT総括

2012-10-27 13:59:34 | メディア注目選手のその後
ここまでOQTの各試合について狩野舞子選手の2枚替えの効果を数値化して考察してきました。ここでまとめをしたいと思います。

まずは、時系列順に、狩野舞子選手が2枚替えで入ったセット数を見てみましょう。

ペルー戦 3/3セット
台湾戦 2/3セット
タイ戦 3/3セット
韓国戦 3/4セット
キューバ戦 1/5セット
ロシア戦 1/3セット
セルビア戦 0/5セット

このように比較すると、狩野舞子選手の2枚替えの使用回数は日を追うごとに減っていきます。狩野舞子選手2枚替えが交替枠の消費数に見合わないという判断が徐々になされてきたものだと考えられます。

次に、1セットあたりの狩野舞子選手2枚替えによる効果を、参加国の最終順位で並べてみました。

1位 ロシア ±0点
2位 韓国 -0.83点
3位 セルビア 出場なし
4位 日本
5位 タイ +5.67点
6位 キューバ ±0点
7位 ペルー +1.67点
8位 台湾 +1.2点

このように見ると、狩野舞子選手2枚替えがプラスに働いたのはいずれも格下相手の試合ばかりです。逆に、格上相手の試合ではプラスに働いていません。また、セルビア戦では、中道瞳選手と山口舞選手が表センターがサーブ時にピンサとワンブロで入る新戦略が打ち出され、狩野舞子選手2枚替えに代わる道が開けました。

ロンドン本番では、もちろん格下相手との試合もありますが、勝敗が大事になってくるのはあくまでも格上相手との試合です。そのため、格下相手にしか通用しないとOQTで判明した狩野舞子選手の2枚替えは、OQT終了時点で白紙に戻すべきでした。データはそれを支持しています。

狩野舞子選手の2枚替えが格上相手に通用しないのは、OQTだけではなくWC2011から見られた傾向です。その傾向がOQTでも繰り返されたわけですから、ロンドン本番でもそうなる可能性が高いと言うことは明らかでしょう。

もちろん、格下キラー的な枠はあってしかるべきです。格下相手時に主力を休ませる役回りも必要だからです。しかし、狩野舞子選手はその役回りもできません。1試合通して出場することができず、2枚替えの3ローテ分しか主力を休ませられないからです。また、ライトには既に新鍋理沙選手と山口舞選手がいますから、分担すれば負担もありません。既にライトが2人いる中で、2枚替え専用ライト枠を設けて狩野舞子選手をロンドンに連れて行くのは不自然です。

狩野舞子選手2枚替え分析 OQTセルビア戦

2012-10-26 14:16:25 | メディア注目選手のその後
セルビア戦は2セット取ればロンドンへの出場権が獲得できる試合で、全日本女子は第一セットと第三セットを取りました。その後の第四セットと第五セットは負けておいた方がロンドンで有利になるため、全日本女子は有り得ないミスを演出して綺麗に負けました。そのため、今回は両チームが本気で戦っていた第一~第三セットのみを分析します。

第一セット
前衛2枚ローテ 5得点6失点→-1点
中道瞳選手と山口舞選手のピンサワンブロ 3得点1失点→+2点

第二セット
前衛2枚ローテ 3得点6失点→-3点
中道瞳選手と山口舞選手のピンサワンブロ 3得点1失点→+2点

第三セット
前衛2枚ローテ 11得点3失点→+8点
中道瞳選手と山口舞選手のピンサワンブロ 0得点1失点→-1点

このように、この試合ではライトとセッターが中道瞳選手と狩野舞子選手に交替する通常の2枚替えはなく、表センターの荒木絵里香選手サーブ時に荒木絵里香選手を中道瞳選手に、前衛の竹下佳江選手を山口舞選手に替えるピンサワンブロの形の2枚替えが行われました。後衛では中道瞳選手がバックライトを守り、本来バックライトを守る新鍋理沙選手がバックレフトを守りました。リベロ不在を補う狙いです。ロシア戦の反省から、中道瞳選手は山口舞選手にはトスを上げず、完全に囮として使用。この使い方で、+2点、+2点、-1点と、かなりの効果が出ました。狩野舞子選手は、第一セットと第三セットに裏センターのサーブでピンサで出場し、第一セットは実質的にサーブポイントを取りました。またここでもリベロ不在ローテが回避されています。第二セットは、新鍋理沙選手を迫田さおり選手に替えるワンブロがありました。

この形、新鍋理沙選手がスタメンなら非常に効果があります。
・竹下佳江選手を前衛で使いたくない
・山口舞選手にサーブを打たせたくない
・山口舞選手にサーブレシーブさせたくない
・山口舞選手に中道瞳選手のトスを打たせたくない
・リベロ不在ローテを減らしたい
・狩野舞子選手に攻撃させたくない
・新鍋理沙選手のレシーブに頼りたい
このような全日本女子の事情を全て解決出来るからです。また、ロンドン本番では、新鍋理沙選手スタメンなら荒木絵里香選手が裏センターに回る予定だったはずなので、ロンドン本番ではサーブが苦手の大友愛選手サーブ時に中道瞳選手と山口舞選手のピンサワンブロを使えるはず。良い形を見いだせました。

狩野舞子選手2枚替え分析 OQTロシア戦

2012-10-24 21:55:56 | メディア注目選手のその後
OQTロシア戦はストレート負けでした。ライトスタメンは新鍋理沙選手でした。この試合についても、前衛2枚ローテと2枚替えローテの得点-失点数を計算してみましょう。

第一セット
1回目の前衛2枚ローテ 3得点3失点→±0点
2回目の前衛2枚ローテ 4得点7失点→-3点
山口舞選手の2枚替えローテ(2ローテで終了) 2得点3失点→-1点で、これが3ローテ続けば-1.5点

第二セット
2枚替えなし

第三セット
前衛2枚ローテ 3得点4失点→-1点
狩野舞子選手2枚替えローテ 5得点6失点→-1点

まず注目すべきは、第一セットに狩野舞子選手をピンサに回して山口舞選手の2枚替えを使ったことです。監督の頭の中でも、狩野舞子選手による2枚替えの効果に疑問が生じてきたのでしょう。しかしこれは大失敗でした。その理由は、過去記事をお読みいただけばはっきりします。2枚替えセッターの中道瞳選手は、球質を優先するタイプのセッター。山口舞選手は球質などどうでも良いかわりに、きちんと約束した場所に約束した時間に到達する一定のトスを好むため、中道瞳選手とは全く合わないのです。

実際、山口舞選手はBクイックの囮に入りますが、なんとタイミングが大幅にズレてほとんどセミ状態に。次はロシアセットポイントで山口舞選手のブロードにトスが上がりましたが、ほとんど空振り状態でロシアが第一セットを取りました。

第三セットでは、お馴染みの狩野舞子選手の2枚替えが使われました。これは得点-失点数を比較しても分かるように、効果はありませんでした。さらに、狩野舞子選手は低空飛行ジャンプでレフトから打って1本は上手くリバウンドを取りましたが、次のレフト打ちはシャットアウトされました。その後はレシーブすればアタック助走にも入れなくなってしまい、せっかく狩野舞子選手が綺麗にレシーブしても前衛は実質2枚のまま、という状態でした。

そもそも、新鍋理沙選手がスタメンの時に、どれほど2枚替えする意義があるのでしょうか。山口舞選手がスタメンなら、山口舞選手のサーブとサーブレシーブを回避するために2枚替えが必要なのは容易に理解できます。しかし、新鍋理沙選手はサーブもサーブレシーブも良く、また竹下佳江選手の上を抜かれたスパイクのレシーブも合格点です。新鍋理沙選手スタメンなら、狩野舞子選手と中道瞳選手はセンターサーブ時のピンサに使い、竹下佳江選手にはワンブロを入れるべきです。