JMのバレーボール観戦記

テレビのバレーボール解説では触れられない戦術面や選手個人の特徴について、「全員応援」の立場から語ります。

S1ローテの連続失点

2012-09-13 19:28:16 | 用語解説
ここまでオーダーを解説してきましたが、その中で前衛のレフトとライトが入れ替わってしまうローテがあることに触れました。

世界の標準となったバックオーダーにおいて、セッターがサーブを打つポジションに入ると、全体のフォーメーションは以下のようになります。

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R C L
L C S

自分のチームがサーブを打つ場合は、サーブが打たれた瞬間にダッシュして以下のようにポジションスイッチします。

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L C R
C L S

しかし、相手チームがサーブを打つと、ダッシュしている暇がないため、前衛はRCLのままとなってしまいます。

こうなってしまうと、レフトとライトが本来のポジションと逆になってしまいます。さらに、前衛にいるセンターは、攻撃力が弱い裏センターです。これはまさにチームの危機。この危機的ローテをS1ローテと呼びます。

S1ローテではどのチームも連続失点が見られます。そのため、S1ローテを何とか回そうと、どのチームもあの手この手を尽くしています。次回の記事から、それぞれのナショナルチームがどんなS1対策をしているか、解説します。

フロントオーダーとバックオーダー

2012-09-13 11:27:32 | 用語解説
以前の記事でも触れましたが、バレーボールのサーブ順にはフロントオーダーとバックオーダーの2通りがあります。

・フロントオーダー
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R L C
C L S

・バックオーダー
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R C L
L C S

フロントオーダーの図を、サーブ順を一つ戻して書くと、以下のようになります。

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L C S
R C L

すると、フロントオーダーでは前衛でLCSの並び、バックオーダーでは後衛でLCSの並びが現れていますね。それが名前の由来です。当然LCSは最も自然な並びなので、それが前衛に現れるフロントオーダーの方が良く思いませんか?

実はそれは大きな間違い。フロントオーダーで、前衛がLCSになった後を追うと、前衛はRLC、CRL、LCRと推移していきます。すると、前3枚の3ローテでは、2ローテでレフトとライトが入れ替わってしまっています。そのため、サーブが打たれたら2回もレフトとライトが入れ替わって本来のポジションにダッシュして戻る必要があり、全く自然な動きになりません。多くのチームではレフトもライトもサーブレシーブに入るので、その2人がサーブレシーブを担当しつつサーブを打たれた瞬間にスイッチするのは不可能です。韓国女子はフロントオーダーですが、ライトのキムヒジン選手とファンヨンジュ選手はサーブレシーブに入らないため、サーブが打たれたらレシーブは他に任せてライトにダッシュして戻っています。韓国女子がサーブ直後に前衛がごちゃごちゃ動くのは、そのためです。2008年の全日本女子はフロントオーダーでした。これについては別記事で解説していきます。

バックオーダーでは、前衛はRCL、LRC、CLRとなります。そのため、前3枚の3ローテでは2ローテでレフトとライトがスイッチする必要がなく、自然な動きとなります。全日本女子ではライトと表レフトがサーブレシーブに入る上に、ライトの山口舞選手はレフト打ちが苦手のため、バックオーダーを採用しています。また、ライトに左利きのスーパーエースがいる男子型のチームでは、ほぼ確実にバックオーダーを使います。

さらに、単に前衛の並びだけではなく、誰がサーブレシーブを担当するか、セッターはどの経路でフロントセンターにダッシュするか、ライトがブロードを打てるか、表センターのAクイックとBクイックを打ちたがるかどうかにより、適切なオーダーは変わってきます。