JMのバレーボール観戦記

テレビのバレーボール解説では触れられない戦術面や選手個人の特徴について、「全員応援」の立場から語ります。

狩野舞子選手2枚替え分析 ロンドンまとめ

2013-01-05 11:13:50 | メディア注目選手のその後
明けましておめでとうございます。またまた間が空いてしまいました。

ロンドンでは、狩野舞子選手にトスが上がらなければ、狩野舞子選手2枚替えが有効になる傾向が示されました。またブロックでも、直接のポイント以外の貢献もありました。OQTの時点ではセンターと跳ぶタイミングがバラバラでしたから、そこから大きく進化したと言えます。狩野舞子選手はレシーバー兼ブロッカーとして頭角を現したということで、これは現代バレーの枠組みには存在しない全く新しいタイプのポジションになります。しかし、勝負所で狩野舞子選手にトスが上がってしまい、彼女は効果率がマイナスですから、当然失点します。狩野舞子選手2枚替えでの失点は、スパイカーではない選手にトスを上げてしまったことに集約されるのです。

もちろん狩野舞子選手にはスパイカーとしての活躍も期待しましたが、そもそもレシーブとブロックだけで十分貢献できる選手ですから、トスを上げない前提で2枚替えした方が良かったのではないでしょうか。

また、これは計算するまでもないので計算しませんが、狩野舞子選手にはサーバーとしての一面もあります。狩野舞子選手は2枚替え終了後に、竹下佳江選手を休ませる目的でピンチサーブを打っていました。このサーブ、パンチ力こそ無いものの、狙いたいところにしっかり落ちるのでかなり崩せます。またミスする確率も少ない。また、後衛でのディグもしっかりできます。それなら、サーブが悪くディグも悪い大友愛選手か井上香織選手のピンチサーバーとして狩野舞子選手を起用しても良かったのではないでしょうか。もしくは、後衛で足を引っ張る山口舞選手に替えて、ピンチサーブから後衛固めまで、3ローテで使っても良かったはずです。

そもそも、山口舞選手スタメンなら、新鍋理沙選手で2枚替えすることもできたはずですし、新鍋理沙選手スタメンなら2枚替えの必要性は低いです。そこにレシーバー兼ブロッカーである狩野舞子選手を2枚替え専用ライトとしてメンバー登録したのは大きなミスです。狩野舞子選手を使うなら、
・大友愛選手か井上香織選手のピンチサーブ兼0.5ローテリベロ代行
・山口舞選手のピンチサーブ兼3ローテレシーバー
・低身長選手のワンポイントブロック
・トスを上げない2枚替え
などの有効な起用法があったはず。これはiPadには出ていなかったのでしょうか。バレーファンの皆様はどう思われますか?

狩野舞子選手2枚替え分析 ロンドンブラジル戦 その2

2012-12-20 12:14:57 | メディア注目選手のその後
続きです。

第二セットと第三セットは2枚替えはなしでした。しかし2枚替えの悪影響はここにも現れています。

第二セット
1回目の前衛2枚ローテ 5得点3失点→+2点
2回目の前衛2枚ローテ 4得点9失点→-5点

これは不思議な数字です。なぜここまで流れを失ったのでしょうか。それは、ブラジルの新鍋理沙選手対策が効いてきたからです。

ブラジルは、
・サーブを徹底的に新鍋理沙選手に狙う
・新鍋理沙選手はマークしない
・新鍋理沙選手に速いトスが上がれば、バンチリードで得意のクロスを締める(その一歩分レフト攻撃へのブロックへの移動が短くなり、レフトも潰せる)
・新鍋理沙選手に高いトスが上がれば、ストレート側でキルブロックを狙い、クロスにはレシーバーを2人配置する
という対策をしてきました。サーブレシーブが巧すぎて普段は狙われない新鍋理沙選手ですが、この試合では第二セット中盤から崩れ始めました。そもそも、新鍋理沙選手をサーブで狙うのは何故でしょうか。それは、「山口舞選手を出したらサーブで潰すぞ」という脅しのようなものです。それに怯み、新鍋理沙選手を山口舞選手に替えたのは第三セットで時すでに遅し。そんなにブラジルが山口舞選手を嫌がっているなら、出したら良かったのです。それをしなかったのは、セット後半で2枚替えをする予定があったからでしょう。2枚替えに固執したため、他の有効な交代が出来なくなってしまったのです。

それにしても、第二セットの1回目の前衛2枚ローテは素晴らしい。竹下佳江選手含む3枚ブロックで間接的に1得点、竹下佳江選手のロックを嫌がりジャケリネ選手がアウト、迫田さおり選手がバックライトでライト不在を補う。これで5得点3失点なので、そもそも前衛2枚ローテは問題ではなかったのです。第一セットも第二セット中盤までも、失点は前衛3枚ローテに集中しています。それなら、新鍋理沙選手の前衛時に山口舞選手を入れるなど、対策はあったはず。前衛2枚ローテ対策としての2枚替えにこだわり、前衛3枚ローテの問題点の修正が出来なかったのが痛すぎました。

この試合、同然ブラジルの強さは存分に見せてもらいました。これでは2枚替えしなくても負けていた可能性が高いです。しかし、同じ負けるにしても、日本が交代で自滅して負けるのは見ていて悲しかったですし、負けるにしても強いブラジルが強い日本に勝つ高度な試合を見たかったです。

狩野舞子選手2枚替え分析 ロンドンブラジル戦 その1

2012-12-20 12:14:22 | メディア注目選手のその後
ストレート負けを喫したブラジル戦。この試合についても、2枚替えの効果を分析してみましょう。

第一セット
1回目の前衛2枚ローテ 4得点4失点→±0点
2回目の前衛2枚ローテ 5得点4失点→+1点
2枚替えローテ(S1回せず0.5ローテで戻す) 0得点3失点→-3点で、これが3ローテ続けば-18点

この結果より、第一セットの2枚替えは-18.5点の効果だったことが分かります。戻しているので、実質的な失点は3.5点に止まったことが不幸中の幸いです。この2枚替え中に、狩野舞子選手には2本もトスが上がっています。中国戦の分析で明らかになったように、狩野舞子選手はスパイカーではなくブロッカー兼レシーバーですから、その選手に2本もトスを上げたら失点するのは当たり前です。さらに問題なのは、フライングレシーブです。ブラジルのライト攻撃に対して狩野舞子選手と中道瞳選手が飛び込んでレシーブミスをしました。これは中道瞳選手に任せるボールです。なぜなら、仮に狩野舞子選手がレシーブ出来ていたとしても、中道瞳選手は倒れ込んだままで、さらに目の前には狩野舞子選手が横たわっている形になったはずです。そうなれば、中道瞳選手はトスを上げにいけません。それなら、中道瞳選手にレシーブを任せて狩野舞子選手が得意の2段トスを上げるのがセオリーではないでしょうか。

ところで、第一セットでは、大友愛選手が後衛で2失点しています。お決まりのレシーブミスとサーブミスです。ここを塞ぐために狩野舞子選手か中道瞳選手をピンサ起用していれば、少なくとも1点の失点は防げたはず。つまり、2枚替えではなくピンサ起用していれば、日本は少なくとも4.5点取れていたのです。第一セットは25-18で落としました。これが25-22.5であったら、その後の行方は変わっていたのではないでしょうか。

実は、第二セットと第三セットについても分析があります。続きの記事に書きます。

狩野舞子選手2枚替え分析 ロンドン中国戦

2012-12-13 14:22:26 | メディア注目選手のその後
さて、第一、第三、第五セットを取ってメダルを大きく引き寄せたロンドンの中国戦は、狩野舞子選手を正確に評価するにはもってこいの試合です。

第一セット
2枚替えなし

第二セット
1回目の前衛2枚ローテ 7得点4失点→+3点
2回目の前衛2枚ローテ 3得点6失点→-3点
2枚替えローテ(2.5ローテで終了) 4得点3失点→+1点で、これが3ローテ続けば+1.2点

第三セット
1回目の前衛2枚ローテ 4得点6失点→-2点
2枚替えローテ 4得点2失点→+2点

第四セット
1回目の前衛2枚ローテ 6得点4失点→+2点
2回目の前衛2枚ローテ 7得点4失点→+3点
2枚替えローテ(S1回せず0.5ローテで戻す) 1得点2失点→-1点で、これが3ローテ続けば-6点

第五セット
2枚替えなし

さて、これはうれしい驚きではないでしょうか。狩野舞子選手を応援している私は嬉しくて仕方がありません。強豪の中国を相手に、第二セットでは+1.2点、第三セットでは+4点の効果があったのです。この試合は全セットが2点差という僅差の試合でした。その中での+1.2点や+4点は非常に大きく、狩野舞子選手2枚替えが無ければ負けていたかも知れません。

しかし同時に気になるのは、第四セットで狩野舞子選手2枚替えが-4.5点の悪影響を及ぼしていることです。第二セットと第三セットの狩野舞子選手と第四セットの狩野舞子選手では、何かが異なっていたのでしょうか。

実は、異なっていたのは狩野舞子選手本人ではなく、使われ方でした。狩野舞子選手2枚替えがあった第二セットと第三セットでは、狩野舞子選手にトスが上がっていません。S1でレフトに狩野舞子選手、ライトに江畑幸子選手がいた場面で、約束事ではレフトの狩野舞子選手に上がるトスをライトの江畑幸子選手に上げていたほどで、狩野舞子選手にはスパイクを打たせない、という約束事があったかのようです。第四セットでは、S1で狩野舞子選手にトスが上がりました。これが唯一の違いです。狩野舞子選手はスパイク効果率がマイナスの選手ですから、トスが上がれば失点するのです。しかし、レシーブは巧いしブロックも竹下佳江選手よりは格段に巧いです。つまり、狩野舞子選手は第二セットと第三セットではレシーバー兼ブロッカーという希なポジションで才能を発揮し、第四セットではスパイカーとして効果率マイナスぶりを発揮したわけです。

メディア注目の栗原恵選手、岡山シーガルズで驚異のパフォーマンス

2012-12-10 14:13:44 | メディア注目選手のその後
栗原恵選手と言えば、いくらメディアが喧しく言おうと、私の中では

・ジャンプしない
・なのにジャンプサーブをしてミスする
・ブロックには真っ正面にぶつけるか大きく避けるかのどちらか
・体制の推移が遅い
・雰囲気を壊す

などと、あまり良くないイメージがありました。もちろん柳本JPAPNのエースでしたから功労者ではありましたが、エースらしく活躍していたのはWGP2008しか記憶にありません。

その栗原恵選手、ロンドンを逃して岡山シーガルズに入団。そして全く生まれ変わった姿で大活躍です。岡山シーガルズは、福田舞選手がエースのチームです。栗原恵選手はエースではありません。エースという重圧から解放され、エース以上の活躍を見せる栗原恵選手、素晴らしいです。

・ジャンプしているか?
これに関しては、フィジカルの問題もあるので、目に見えた変化は感じられません。しかし、低いながらに最高到達点でボールに触る意識がはっきりしているため、またもとから長身のため、いくらかはカバー出来ています。

・ジャンプサーブは?
栗原恵選手のジャンプサーブがミスになって何度溜め息をついたことでしょうか。それがびっくり、今季からはフローターも取り入れて安全に攻めるサーブを練習しつつ、ジャンプサーブの入る率が非常に向上しています。また、安全ジャンプサーブはレシーブしやすいのですが、栗原恵選手のジャンプサーブはロシアのガモワ選手のスパイクに似た球質で、なかなかレシーブし難いです。

・ブロックへの対応は?
たまに昔の癖が出ていますが、岡山シーガルズで学んだ助走と打ち方が出来ているときにはかなり決まっています。今はブロックを攻めながら避ける段階。今後ブロックを利用する打ち方も学べば、昔のようなドシャット&フェイントは減るでしょう。

・体制の移動は?
岡山シーガルズでは、おおざっぱですが前衛ではレシーブから外れ、後衛ではスパイクから外れるため、この苦手が表面化していません。全日本を見据えると微妙ですが、グラチャン2009韓国戦のように0.5枚で入る分には問題ないでしょう。

・雰囲気は?
これが一番目立つ変化かも知れません。こんなに笑顔の栗原恵選手を見たことがありません。充実した選手生活を送れているのでしょう。

この調子で成長すれば、もしかすると来年度には全日本で2枚替えとそれに続くピンサでの出場があるかも知れません。温かく見守りましょう。