JMのバレーボール観戦記

テレビのバレーボール解説では触れられない戦術面や選手個人の特徴について、「全員応援」の立場から語ります。

背番号2番セッター中道瞳選手のコンビ

2012-09-18 23:10:57 | 全日本女子 コンビ
・表レフト
表レフトの木村沙織選手は、中道瞳選手の2枚替えでの出場時には主に後衛にいるため、使いたくてもなかなか使えないことが多いです。木村沙織選手が前衛時には、東レコンビで息の合ったトスを上げます。木村沙織選手が悪い癖でサーブレシーブが短くなると、裏レフトに乱れたトスしか上げられなくなり、苦しくなります。後衛では2人で隣でレシーブに入り、驚異的なレシーブ力を発揮しています。

・裏レフト
Aパスからならトスの球質が良いので、自由に打てるようなトスを上げます。Bパスからだと、170cm台の裏レフトには厳しいトスしか上がりません。2枚替え専用ライトの狩野舞子選手は攻撃が出来ないので、裏レフトにトスが偏ります。

・ライト
2枚替え専用ライトの狩野舞子選手とは一番コンビを合わせるべきですが、狩野舞子選手の攻撃力が無いため、ほとんどトスを上げません。そのため2枚替えを戻す屈辱的な場面もありました。ライトの山口舞選手は球質より一定なトスを打ちたがります。従って、山口舞選手は中道瞳選手のトスが苦手です。新鍋理沙選手は持ち味を発揮するのは竹下佳江選手のトスですが、持ち前の器用さで中道瞳選手のトスも打てます。新鍋理沙選手はAパスを量産するので、Aパスにおいて持ち味を出す中道瞳選手も安心なようです。また中道瞳選手はブロックがチームで最も低いため、ライトの選手はレシーブが大変になりますが、ロンドンでは中道瞳選手は後衛専門だったので問題になりませんでした。

・センター
荒木絵里香選手とは、東レコンビで息が合っています。ただ、荒木絵里香選手の不調もあり、あまりこのコンビは発揮されませんでした。大友愛選手や井上香織選手とは、ブロードのトスが球質優先タイミング二の次なため、合いません。フェイントが増えます。またブロック時には、中道瞳選手はもともとツーを警戒してネットから離れているため、相手レフトを2枚で止めるときには中道瞳選手は斜めに走って飛びます。このイレギュラーな動きのため、2枚ブロックの形やタイミングが揃いません。しかしロンドンでは中道瞳選手は後衛専門だったので、問題になりませんでした。

・リベロ
佐野優子選手は、中道瞳選手の要求に応えられるサーブレシーブを心掛けましたが、もともと佐野優子選手を狙うサーブ自体が少ないので主に守備範囲を広げて貢献していました。

素子スペシャルだけがコンビではない

2012-09-18 22:50:52 | 全日本女子 コンビ
全日本女子と言えば、コンビバレーを思い浮かべる方が多いと思います。そして、コンビバレーと言えば素子スペシャルのようなものを思い浮かべる方が多いと思います。

ちなみに、素子スペシャルとは、テレビ中継で有名な、左利きライトの大林素子選手が超目立つコンビプレー。レフトがBクイック、センターがAクイックかCクイックのダブルクイックに入ります。そして大林素子選手は、ライトから、セッターとダブルクイックの後ろを颯爽と駆け抜け、BワイドかLの左方向のブロードを打ちます。たいてい大林素子選手がノーマークになり、強烈なスパイクが突き刺さります。

もちろん、これは立派過ぎるコンビプレーです。しかし、素子スペシャルは試合中数回しか使いません。そんな派手なコンビより、地味でも試合を通してかなり重要なコンビがたくさんあります。攻撃に限らず、ブロックで隣に並ぶ選手にはコンビが存在しますし、ブロッカーとレシーバーにもコンビが存在します。コートに立つ6人の中には、2項係数を計算すれば当たり前ですが、2選手間のコンビに限っても15個のコンビが存在しているわけです。

現在の全日本女子でも、テレビ中継では山口舞選手のコンビ攻撃ばかり誉めたてます。しかし、ロンドンの銅メダルの背後には、15個のコンビの緻密プレーがあるのです。

このカテゴリーでは、全日本女子のロンドン出場メンバーをもう一度背番号順に取り上げ、その選手と他の選手とのコンビを解説していきます。是非選手紹介の記事とあわせてお読みください。

S1対策 全日本女子ロンドンのロシア戦等の場合

2012-09-18 16:28:33 | 用語解説
全日本女子のS1は、山口舞選手というセンター系ライトの存在でかなりの危機になる、ということを以前解説しました。詳しくは過去記事をご覧ください。

私も、山口舞選手が出るなら、ロンドンでもS1はかなり厳しくなると思っていました。しかし、ロシア戦では、全く新しいS1対策を全日本女子が展開し、本当にびっくりしました。

S1では、
-----
R C L
L C S
と並んでいる中で、前衛ライトがレフト側、後衛センターに替わったリベロが中央、前衛レフトがライト側でサーブレシーブをします。そのため、レフトとライトが前衛で逆転するのです。

それをなんと、山口舞選手をサーブレシーブから外して、前衛レフトをレフト側、後衛センターに替わったリベロがライト側、という2人だけでサーブレシーブをしたのです!これにはびっくりです。そして、レフトの端に固まっていたセンターの井上香織選手はL、山口舞選手はCワイドのダブルブロード、そしてサーブレシーブした木村沙織選手はそのままレフト打ちに入ったのです。女子では珍しい2枚レシーブ隊形にし、ブロードで山口舞選手をライト側に戻す、これは予想すらしていませんでした。

この形、実はアルジェリア戦で1回、ドミニカ戦でも1回試していました。秘密兵器として、ずっと開発してきたのでしょうね。

このS1対策は、言わば他を犠牲にしてまで山口舞選手を最大限に活かすためのもの。それを予選リーグで強豪相手に見せたわけです。その次の格下のイギリス戦では新鍋理沙選手を起用して、山口舞選手は出番なし。この状況から、対戦国は、山口舞選手が決勝リーグのスタメンに入ると予想したはずです。しかしそれもカモフラージュに過ぎなかった!決勝リーグでは新鍋理沙選手を主力として戦い、データの裏をかきました。そして韓国戦では、その新鍋理沙選手を全く異なる使い方で起用してストレート勝ち。決勝リーグの勝利の背景には、こんなに緻密なデータ攪乱計画があったのですね。これについても、今後詳細な解説記事を予定しています。

S1対策 韓国男子の場合

2012-09-18 13:19:03 | 用語解説
韓国男子は、韓国女子と同じく、フロントオーダーです。ライトには守備免除で左利きのパクチョルウ選手を入れているので、韓国女子でファンヨンジュ選手をライトで起用したのと同じ形になっています。

つまり、

S1
-----
R L C
C L S

S6
-----
C R L
L S C

の2回のローテで、レフトとライトが反転してしまいます。

・S1の問題点
レフトとライトが入れ替わり、さらにライトは左利きでレフト打ちが無いため、ライトに戻らざるを得ません。また、レフトはサーブレシーブに入るため、動きを封じられることがあります。

・解決策1 ライトのパクチョルウ選手のダッシュと助走
ライトのパクチョルウ選手は、サーブレシーブ免除なので、サーブが打たれた瞬間にライトにダッシュします。S1でも前衛レフトはセンターでサーブレシーブするため、パクチョルウ選手もセンター付近にいます。そのため、走る距離は4.5mです。無理な距離ではありません。また、パクチョルウ選手は、長い助走で体重を乗せるタイプではないため、十分に開かなくてもブロックを利用した打ち方をできます。

・解決策2 前衛レフトのセンターセミや時間差
本来なら前衛レフトはサーブレシーブ後にレフトの端までダッシュして戻るものですが、S1とS6では前衛レフトはセンターセミに入ります。打つ場所は、ロングBセミ、Bセミ、Aセミ、Cセミの4箇所もあり、ブロッカーからすると絞りにくくなります。それが、センターのクイックとうまく時間差になっています。

・解決策3 S6ではバックレフトも使う
前衛レフトがセンターセミに入ってレフトが空になるので、その時には後衛レフトがバックレフトを打ちます。これは全日本女子のS1で裏レフトがバックレフトを打つのと同じです。ただ、このバックレフトの効果率には疑問もあります。

韓国男子の試合はあまり見ていないので、もしかすると他にも対策をしているかも知れません。その場合はお知らせください。

まとめると、フロントオーダーはごちゃごちゃした動きの原因になる悪いオーダーだが、それを逆手に取った時間差などで相手を攪乱できる、ということです。韓国女子の場合、キムヨンギョン選手という大砲がいるので、その他の選手はごちゃごちゃ動いても有効な攻撃になります。ただ、韓国男子は大砲が不在なので、ごちゃごちゃ動きすぎると全員が苦しくなることもあるようです。