JMのバレーボール観戦記

テレビのバレーボール解説では触れられない戦術面や選手個人の特徴について、「全員応援」の立場から語ります。

S1対策 全日本女子2008の場合

2012-09-16 14:22:58 | 用語解説
全日本女子2008は、フロントオーダーでした。すると、レフトとライトが入れ替わるローテが2回も出現します。これを逆手に取り、ライトにはレフト平行が得意な高橋みゆき選手、裏レフトにはライト平行が得意な木村沙織選手、表レフトにはレフト打ち専門の栗原恵選手を入れたのです。そして、ライトの高橋みゆき選手を実質的にレフト、裏レフトの木村沙織選手を実質的にライトとして運用しました。

つまり、S1は危機でも何でもなく、理想的フォーメーションのなったのです。このフロントオーダーの背後には、高橋みゆき選手の低身長もあるでしょう。高橋みゆき選手をレフトに入れると、どこかで竹下佳江選手と高橋みゆき選手が同時に前衛に上がってしまい、低い2人が前衛なのでブロックが破綻します。そのため、低い2人を対角に配置し、低いブロッカーは高々1人しか前衛に上がらないようにしたのです。

また、これによってS1を回避しなくてすむため、試合をS1スタートにできます。すると、低い竹下佳江選手が前衛に上がる回数を1回減らせるため、ここにもメリットがあります。

逆にイレギュラーとなるローテは、S5です。前衛レフトに栗原恵選手、前衛ライトに高橋みゆき選手が来ます。しかし、栗原恵選手はもともとレフト専門ですし、高橋みゆき選手のライト打ちも問題ありません。高橋みゆき選手はライトの経験もありましたから。そのため、イレギュラーローテも危機にはならないのです。

このシステムは、かなりよく考えられたものです。同じフロントオーダーでも、選手の特性や配置によって、全日本女子2008や韓国女子など、本当に様々な形が作れるのですね。

S1対策 セルビア男子の場合

2012-09-16 10:54:58 | 用語解説
JMのお気に入りチームのセルビア男子ですが、S1はかなり分かりやすい戦略で対応しています。

・S1の問題点
ライトには、左利きで207cmもあるパワーヒッターのスタロビッチ選手と、右利きで巧さもあるアタナシエビッチ選手が入ります。S1が問題となるのは、もちろんスタロビッチ選手の方。スタロビッチ選手は、207cmもあるのに、あたかもスケートボードで地面を滑るかのような水平ジャンプで、本当に低いのです。さらに、一旦ジャンプしてしまうと、そこからは物理学の法則に従って必然的なヒットポイントに突っ込んでいくだけ。ライトとしては通用しますが、レフトからはこれだとダメです。S1では、Aパスが返ってもレフトから遅い助走にしか入りません。また、ライトに回るレフトのニキッチ選手は、ライト打ちも合格とは言え、悪いときの東レのボヨビッチ選手のようなスパイクフォームになってしまい、高さが活かせません。

・解決策1 センターのスタンコビッチ選手に頑張ってもらう
スタンコビッチ選手は裏センターで、表センターのポドラスチャニン選手と比べて、普段はクイックがやや少な目です。そのスタンコビッチ選手に、S1ではかなりトスが上がります。普段はあまり打たない選手なので、相手センターもどうコミットすればいいか分からず、なかなか止められません。

・解決策2 裏レフトのニコラ・コバチェビッチ選手がパイプを打つ
スタンコビッチ選手のクイックが読まれ始めたら、後ろからコバチェビッチ選手がパイプを打ちます。コバチェビッチ選手はパイプの打つコースが広いため、読まれてもかなり有効に決まります。

つまり、セルビア男子は、裏センターと裏レフト、言わば2番手のアタッカー2人が、S1を救います。2番手のポジションでも、彼らは一流のスパイカーです。セルビア男子は、やはり底力が凄いですね。

ちなみに、ロンドンOQTの日本戦、第3セット途中までスタロビッチ選手がスタメンでしたが、そのS1ローテでは福澤達哉選手(第1セット)と宇佐見大輔選手(第2~3セット)が殆ど毎回サーブミスしました。セルビア男子のS1は、サーブは入れていって、クイックに1人コミットし、残り2人でパイプとライトセミをリード的に警戒すれば止められます。なのにサーブミス。フィジカルで劣るだけではなく、戦略面でも劣っています。こういうところが、私が全日本男子が好きになれない理由です。