JMのバレーボール観戦記

テレビのバレーボール解説では触れられない戦術面や選手個人の特徴について、「全員応援」の立場から語ります。

S1対策 ロシア男子(ミハイロフ選手ライト)の場合

2012-09-15 23:09:57 | 用語解説
ロシア男子は、とにかく高さだけで勝負しているような印象がありました。実際そういう選手も個人としては存在します。しかし、その先入観を払ってロシア男子をよく見てみると、技巧的な選手もいるしシステムもよく考えられています。

・問題点
本来ライトのミハイロフ選手が、レフトから打つ形になってしまいます。問題点は他のスーパーエース型のチームと同じです。

・解決策1 ミハイロフ選手が完璧にレフトから打ちこなす
実はミハイロフ選手はレフト打ちが得意で、ロシアリーグではレフトポジションにも入りました。そのため、ミハイロフ選手がレフトから打つことに何の不自然さも無く、自然に全てが動いています。

・解決策2 ベレジュコ選手がライト平行に入る
レフトのベレジュコ選手がライトに入ってしまいます。しかし、ブラジル同様にベレジュコ選手のライト平行はかなり速いです。ややスプレッド気味に構えないと追い付けないレベルで、さらにセンターのムセルスキー選手の遅いクイックとシンクロしています。

・解決策3 ムセルスキー選手が孤軍奮闘する
AパスからBパスに限りますが、超大型でパワーもあるセンターのムセルスキー選手はコミットが付かない限り必ず決めてくれます。そのため、サイドが厳しくても、ムセルスキー選手が1本で決めてくれます。

このように考えると、ロシア男子は個の能力の高さがあるだけではなく、ミハイロフ選手にレフトを経験させるなど、ジェネラリスト的な一面もあります。実は、この柔軟性がロンドン金メダルの原動力になっています。それについては、今後記事にしたいと思います。

S1対策 ブラジル男子の場合

2012-09-15 11:18:15 | 用語解説
天下のブラジル男子と言えど、S1には苦労するようです。

・問題点
ブラジル男子は、右利きのスーパーエースをライトに配置し、レフト2人とリベロでサーブレシーブをします。S1でRCLとなる時、レフトに回るスーパーエースがレフト打ちを決められず、苦戦するようです。スーパーエースのビソット選手の高さは十分なのに、トスとのタイミングが合わず、逃げたいコースをブロックで塞がれてしまいます。同じくスーパーエースのウォレス選手は、助走やジャンプや体重のかけ方がライト打ちに特化しているので、レフトからだとイマイチなスパイクになります。また、ライトに回るレフトの選手は、高さ不足でなかなか決まりません。

・解決策1 ライト方向の攻撃の高速化
レフトの選手がライトから打つ際、パイプを横方向に上げるようなタイミングで打たせます。そのため、AクイックやBクイックにつられたブロッカーが間に合わなかったり、Cクイックにつられたブロッカーの落ち際を狙って打てます。また、ライトから不完全なブロッカーの左手に当ててタッチアウトを狙うという戦略も取っています。

・解決策2 センターとバックセンターの有効活用
ブラジル男子といえば、センターのAクイックやBクイックの背後からの高速時間差バックアタックであるパイプ攻撃を開発しました。また、近年ではセンターを遅いCクイックに飛ばして、クイックと高速バックアタックでダブルクイックのような使い方をする時もあります。このようなコンビをS1でも積極的に使って、レフトやライトに頼らない攻撃をします。ちなみに、後衛レフトはバックレフトでサーブレシーブするので、これはかなり高度な技術です。これが決まるのは、ライト平行を警戒させてブロックをスプレッド気味に割っているからです。

このように、ブラジルは個人技とシステムの両面からS1対策をしてきます。この場合、ジャンプサーブで後衛レフトを崩すと、パイプがなくなりBパスで高速ライトもなくなるので、後衛レフトのサーブレシーブが鍵になりますね。ロンドンの決勝ではかなりS1で苦戦していましたが、普段からの常勝軍団ですから、是非世界中のチームがこの形を参考にして欲しいと思います。また、ブラジル男子が活用しているモッサリ系のクイックについては、S1対策という文脈内・文脈外に関わらず、打ち方使い方共に世界中のチームが研究すべきだと思います。