JMのバレーボール観戦記

テレビのバレーボール解説では触れられない戦術面や選手個人の特徴について、「全員応援」の立場から語ります。

男子の世界標準バレーの名選手 リベロ

2013-03-20 18:44:00 | 選手紹介
ここは迷わず彼でしょう。

・ブラジル男子 サントス選手
サントス選手は、サーブレシーブもスパイクレシーブももちろんピカイチですが、世界標準バレーという文脈では、やはりトスの上手さが決め手です。男子の世界標準バレーのリベロは、セッターがトスを上げられない時のためのセカンドセッターの役割を担います。これは、アタッカーがトスを上げて攻撃枚数が減るのを防止するためです。サントス選手は、レフト、ライトにピタリと上げるのは朝飯前、バックライトにも余裕で上げ、さらに凄いのは縦Bやパイプにも上げられることです。セッターからの返球がアタックラインの少し内側にせり出した時には、アタックラインの外側で踏み切ったジャンプトスを上げます。他のリベロも真似していますが、サントス選手の上手さと安定感はずば抜けています。また、最悪の場合、アタックラインの内側からアンダーで上げるときも、手首に当てるときに手前に引いて衝撃を吸収して上げるため、球質はオーバー並みです。詳しくは知りませんが、サントス選手はセッター経験があるとしか思えません。

そのセッター並のトスアップ能力を、トスアップ以外のプレーにも応用しているのが、サントス選手の凄いところです。相手のチャンスボールをセッターに返球するときには、なんとジャンプトスでセッターに返します。これにより、まずは球質が安定して、定位置でセッターの両手に吸い込まれるような返球になります。さらに、ボールが沈む前に返すため、切り返しが格段に早くなります。サントス選手のジャンプトスでの返球→ブルーノ選手のトスアップ→ルーカス選手のBクイックが、1秒台で完結する、異次元の速さです。これにより、相手の守備が整う前に攻撃ができるようになるのです。

また、これは世界標準云々とは関係ありませんが、サントス選手は監督とコート上の選手の橋渡し役としても大活躍。レゼンデ監督は常に不機嫌です。サントス選手がサーブで交代するごとにベンチとコートを行き来し、話をすることにより、チームが一つにまとまっている感じがします。

他にも私の中ではお気に入りのリベロはいますが、トスアップ能力の重要性を強調するために、今回はサントス選手に絞ってご紹介しました。他の名リベロ達も、これからご紹介できればと思います。

次回からは、男子の世界標準バレーからさらに進化した、次世代のバレーの形を取り上げて連載したいと思います。

男子の世界標準バレーの名選手 セッター

2013-03-15 19:30:43 | 選手紹介
またまた間が空いてしまいました。今回は、男子の世界標準バレーの名セッターをご紹介します。引き続きブラジル男子からのエントリーが無いことの種明かしは、次の連載までお待ちくださいね。

・アルゼンチンのデセッコ選手
デセッコ選手は、世界標準バレーには欠かせないレフト平行の速度と球質の両方において、他のセッターを大きく引き離しています。ロングBを伸ばしたような速さと羽毛のような軽さを両立できるのは、もしかするとふっくら体型のおかげかもしれません。また、セッターは相手レフトの平行をブロックで止めに行く役割を担いますが、その身のこなしも非常に良いです。レフト平行が無いと判断したときにレシーブに下がる動きは、忍者の瞬間移動のようです。世界標準とは関係ありませんが、ワンハンドトスやワンハンドでのバックトスやツーアタック等の技術、それにサーブや強打スパイクもとても上手です。欠点といえば、身長くらいでしょうか。

・アメリカのボール選手
ボール選手は2m級のセッターで、その規格外の大きさは世界標準を遥かに超えています。しかしトスワークは世界標準バレーの教科書のようで、リリースポイントが高いため、無理な速さではないトスで左右に振り分けられます。北京ではアメリカが優勝しましたが、この立役者はボール選手だったように思います。

・ポーランドのザクムニ選手
正直、ここでザクムニ選手を掲載すべきかどうか、迷いました。なぜ掲載したかと言いますと、男子の世界標準バレーで非常に重要なレフト平行とBクイックの使い分けが非常に上手いからです。ザクムニ選手も2m級の長身で、その高さからの超高速ロングBはザクムニ選手ならではだと思います。センターの使い方が旧世代セッターに似ている部分については、世界標準とは言えないです。世界標準にしろ旧世代にしろ、ザクムニ選手は素晴らしい選手です。

他にも、エジプトのアブダラ選手も素晴らしいセッターですが、世界標準というカテゴリーには入れにくかったので、アブダラ選手についてはまた別の機会に取り上げたいと思います。

男子の世界標準バレーの名選手 ライト

2013-01-21 13:59:45 | 選手紹介
またまた間が空いてしまいましたが、今回は男子の世界標準バレーの優秀なライトの選手を紹介します。

・ロシアのミハイロフ選手
ミハイロフ選手は、大型のスーパーエースですが、動きは何となく小型レフトを思わせます。パワー、高さ、巧さ全てを兼ね備えていて、また打点のバリエーションがとても多様です。空中での重心移動がトスの移動と平行なため、どこで打つか分からないわけです。また、S1でのレフト打ちは、右利きなので問題ありません。ブロック技術は標準的(しかし長身なのでそびえ立ちます)、レシーブは守備免除とは思えないほど得意です。

・セルビアのミリュコビッチ選手
ミハイロフ選手と対照的に、しなやかさよりパワーを前面に押し出しているのがミリュコビッチ選手です。そのため、身長の割にはボール通過点が低く、ドシャットされるときは豪華にドシャットされます(笑)しかし、試合全体で見れば、レフトとセンターがマークされてミリュコビッチ選手には2枚ブロックが完成しないことが多いため、ブロックされない巧さよりレシーブされないパワーの方を優先しているのでしょう。S1レフト打ちも問題なしです。ミリュコビッチ選手は去年代表を引退しました。素晴らしいプレーを見られて、とても幸せでした。

・ロシアのムセルスキー選手
ロンドンの金メダリストは飛ばせませんね。ムセルスキー選手は、規格外の大きさを活かし、本来はセンターでBクイックを主体に攻めてきます。しかし、ロンドンの決勝で、2セットダウン後の第3セットから、なんとライトにコンバート。そこから、ライト平行、ライトオープン、バックライトと、高さとパワーを活かしたスパイクを怒号のように決めました。本来、Bクイックとライト打ちは、全く異なる技術です。もしかすると、ムセルスキー選手ほどの体格があれば、相対的なトス距離が短く感じられ、どこから打っても同じように感じるのかも知れませんね。

男子の世界標準バレーの名選手 センター

2013-01-12 22:41:14 | 選手紹介
男子の世界標準バレーでは、センターは、コミットしないと止められないクイックを打てること、縦Bを打てること、そしてブロックの横移動と完成が速いことが求められます。

・ロシアのムセルスキー選手
認めたくはありませんが、ここまで長身でパワーがあれば、自動的に世界ナンバーワンになるのではないでしょうか。クイックはBクイックが中心で、速さはそこまでありません。しかし、高いところで打つため、ブロッカーは速く跳ばないと止められません。これこそ、まさに高くて速いクイックの典型例です。ロシア男子の場合は、前衛の攻撃で間に合ってしまうためなかなかパイプは使いませんが、ムセルスキー選手はパイプの囮としても優秀な動きをします。また、ボールの芯をきっちりと強打できるため、レシーブで対応するのも難しいでしょう。

・セルビアのポドラスチャニン選手
ポドラスチャニン選手は、高さ・スピード・パワーを全て平均的に持っています。空中の体勢が後ろ側に倒れているのですが、これは被シャットを防ぐためと思われます。打数は少なくても、絶対に決めないといけないときに絶対に決めてくれるのが素晴らしい。さらに、後衛のパイプの場所によって、そのパイプの選手を隠すようなクイックに入ります。試合の流れの中で自分のクイックがどういった位置を占めるのかが分かっているからこそ、上記の2点が可能になります。また、レシーブが下手そうな体型ですが、センターにしてはかなり拾ってくれるのが安心です。

男子の世界標準バレーの名選手 レフト

2013-01-12 22:35:34 | 選手紹介
男子の世界標準バレーのレフトは、サーブレシーブに入り、レフトとバックセンターからの速い攻撃が仕事になります。JMの独断と偏見で、このポジションの世界最高峰の選手を紹介します。表裏は気にせず列記しますね。なぜブラジル男子からのエントリーを避けたかは、今後の記事で説明しますね。

・セルビアのニキッチ選手
小型ながら、全てのプレーで素晴らしい動き。空中で、体中の筋肉を捻って全力で打ち込むフォームから、バカバカ打ってくれます。また、崩れたトスを、レフトからチョロでブロックアウトにするのが芸術的で、あの動きを出来る男子選手は少ないでしょう。特に美しいのは、バックセンターの左寄りでサーブレシーブしてから、自分で大ジャンプのパイプを打ちにいく攻撃です。これが好きなようで、セッターのペトコビッチ選手は、ニキッチ選手がここでサーブレシーブしたら必ずパイプに上げます。良いチームですね。打ってくるコースも分かっているのに、なぜか止められない印象です。

・ポーランドのクレク選手
メンタルがちょっと…。しかし、球質が良いトスが上がれば、狙い澄ましたスパイクを打ちます。その狙いは、「ブロックのここの隙間を通して、相手の誰々の右側に強打する、そのためには空中でこの位置からトスを待ってこのタイミングで打つ」というレベルのものです。それを手首のしなやかさで実現しています。バックセンターについては、もっと本数を増やしても良いのではないでしょうか。

・アルゼンチンのコンテ選手
男子バレーで、破綻していないレフト平行では、アルゼンチンのデセッコ選手からコンテ選手へのトスが最速ではないでしょうか。高さを犠牲にしないレフト平行としては、コンテ選手が世界一な気がします。バックセンターからは、スピードもそうですが、何といっても空中移動距離が凄いです。かなりネットの近くから打ち込むため、ドシャットさえ無ければ鋭角に打てます。さらに、ライト打ちも素晴らしく、デセッコ選手のワンハンドバックトスをクイック並のテンポで強打します。このコンビは、世界でもアルゼンチン男子にしか出来ないものです。