
高雄の左営駅で台湾高鉄の駅撮りを終えたあとはいよいよ、私が到着した3時間前 (3月9日午後1時) に開業したばかりの高雄捷運へ! (捷運はMRT=Mass Rapid Transitの漢語訳で、北京音で「じえゆん」と発音) 高鉄左営駅と捷運左営駅、そして台鉄の新左営駅のあいだは雨に濡れずに移動できるよう一体となっており、地元の皆様がさっそく大勢、捷運の駅エスカレーターを上り下りしておりました。駅のつくりは、完成を急いだかな?という感じで、多少の粗さが目立ちますが、そこはまあ置いておいて、基本的な動線を考慮しているあたりは、さすが某大陸の北京地下鉄とは大違いです。各種の掲示は、日本や台北捷運のそれを意識した洗練されたもので、自ずと高雄の街が歩み出す新時代の香りが漂ってくるようです。
そして待つこと1~2分、いよいよ電車が入線! ホームは6両編成に対応しているようですが、やって来る電車は当面3両編成ということで、開業記念乗車(しかも1ヶ月間無料乗車キャンペーン開始!)で押しかけた乗客をさばき切れるのだろうか……と思ったのですが、高雄の街自体が人口百数十万人ですので、3~4分間隔で頻繁運転すれば何とかしのげるという計算なのでしょう。まだ宿に落ち着いていない私は大荷物を手に持っていますので、満員御礼な車内に入るのには一瞬難儀したのですが、そこは小田急や田都で鍛えたワザを活かして乗り込みました (爆)。
ただ、大混雑に付き合って終点まで乗るつもりはなく、地上区間に出たらどこか良さそうな駅を選んで撮り鉄を……というわけで、左営から北に一つ隣の「世運」駅が良い感じでしたので、早速ここで降りて撮影! 「世運」とは「世界の運命」ではなく (爆)、来年高雄で開催される世界陸上大会の会場を意味しており、台北捷運の向こうを張って非常に凝った巨大建築の駅となっていますが、この駅に進入してくる列車も椰子の木をバックに、南台湾っぽい雰囲気で撮れます (↑の画像)。

その後はもう一つ先の「油廠国小」駅(国小=小学校の意)に移動して撮影 (2枚目)。個人的には「世運」よりもここの方が撮りやすくてお好みですが、間もなく日没となって撮影はタイムアウト (^^;)。この先、当面の終点「橋頭車站」にかけて高架駅が続きますので、もっと多様なアングルでの撮影も可能でしょう。
それはさておき高雄といえば、国民党独裁時代の長年にわたる北台湾重視・南台湾軽視政策のもと、インフラの整備や環境対策が大幅に遅れ、主要交通手段が洪水のようなバイクだったこともその悪循環に拍車をかけており、96年に初めて訪れたときも「恐ろしく空気が悪く殺風景な街だ……」という印象は否めませんでした。しかしその後は、今般の総統選挙で民進党から立候補した謝長廷氏の市政のもと、捷運の建設や環境対策など、みるみるうちに変貌をとげ、「海洋首都」の看板に偽りなし、と言えるほどまでになったと思います。そして今や、台北の捷運が国民党の地盤らしく藍色の帯を巻いて走っているのに対抗するかのように (?!)、高雄捷運は民進党の地盤らしく (?!) 緑色の帯も鮮やかに走り始め、高雄の街をさらに居心地の良い方向に大きく変えようとしています。
電車が地下から地上へと出た瞬間、如何にも南台湾っぽい雰囲気の欧芝桑 (おじさん) や欧巴桑 (おばさん) までもが「うわぁぁっ」と嬉しそうな声を上げ、子供たちは大はしゃぎ。そして、駅という駅がデジカメを持った台湾の「鉄」、そして「にわか鉄」であふれ、のんびりまったりとしたお祭り状態 (笑)。現在、高雄捷運・高雄市は、1ヶ月間無料キャンペーンに合わせて台湾各地から多くの観光客を高雄に呼び込み、全く新しい高雄の姿をアピールしようと「高雄捷運、OK!」というテレビCMを流しておりますが、「高雄捷運、OK!」とは他でもない高雄市民の皆様の率直な印象なのでしょう。実際、「台湾鉄路網」などによりますと、高雄捷運は開業以来1週間で早くも完全に日常生活に融け込み、連絡バスも充実していることから、バイクの数が劇的に減っているとか……。
というわけで、今回高雄捷運の開業に偶然めぐり合わせた私は、「鉄道とはこれほどまで人々を幸せにしうるものなのだなぁ……」ということを改めて痛感して、遠来の飛び入り客ながらも思わず嬉しくなってしまったのでした (*^^*)。
※鉄道が地域社会を滅茶苦茶にした代表例である、某赤い国の青蔵線=青海チベット鉄道とは大違いですな……(-_-;)。当ブログの2006年10月11日付け記事で記した懸念が、余りにも早く当たってしまいました。