一 千五百番歌合に 右衞門得通具
一 石上ふるの桜誰うへて春はわすれぬ形見成らん
増抄云。石上ふるの山べのさくら花うへけん時を
しる人ぞなき。といふ哥によりてよめる成べし。
哥のこゝろ明也。ふるのといふに年をふると
云心をもたせて、かたみといひたり。かたみをば
過しことにある故也。さくらが春をわすれ
ぬかたみ成となり。さくらがなくば布留野の事の
むかしはおもひいだす人もあらじをとなり。
頭注
誰うへてとは古哥
のうへけん時をしる
人ぞなきといふ
をふまへたる成べし。
かたみはむかしの
かたみなど云て
當分さしあた
りてはなき也。
※石上ふるの山べのさくら花うへけん時をしる人ぞなき
拾遺和歌集 春上
やまとのふるの山をまかるとて
僧正遍昭
いその神ふるの山への桜花うゑけむ時をしる人そなき
