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新古今和歌集の部屋

2つの大江山 漢詩の好きな鬼 江談抄 都良香

こんな話がある。

 

今から900年ほど前、長治の頃に、帥中納言大江匡房の詩歌や音楽、公事などの話を、弟子の進士蔵人藤原実兼が書き留めた物の中に、不思議な話が、載っている。

 

匡房「蔵人よ。お前は、文章博士兼大内記の都良香の

気霽れては風新柳の髪を梳る。氷消えては波旧苔の鬚を洗ふ。

と言う詩を知っておるか?」

実兼「帥殿、読んだ事があります。四条大納言公任殿の和漢朗詠集にも撰ばれており、早春の素晴らしい詩ですね」

匡房「その詩の不思議な話を知っておるか?」

実兼「存じておりません」

匡房「古老から聞いた話だが、元慶の頃、大内記が、内裏での漢詩会に詩を出そうと、月夜に都の南、羅城門まで馬で行ったそうだ」

匡房「朱雀大路の柳を見つつ、そこまで出来た『気霽れては風新柳の髪を梳る』の句を朗詠していると、門の上から、太い声で、「おお!良い哉」と声がして、『氷消えては波旧苔の鬚を洗ふ』と対句を返したそうだ

実兼「真夜中?楼上にいるなんて、人では無く、鬼じゃあ無いですか?。。。」

匡房「内裏での漢詩の会で、その詩を見た菅丞相は、鬼が作ったのであろうと見破ったそうだ」

実兼「鬼神の為せる業ですね」

 

 
江談抄
気霽れては風新柳の髪を梳る。氷消えては波旧苔の鬚を洗ふ。内宴。春暖 都良香
古老傳へて云はく、「かれこれ騎馬の人、月夜に羅城門を過ぎつてこの句を誦ず。楼上に聲ありて曰はく、『あはれ』と云々。文の神妙、自ら鬼神を感ぜしむるなり」と。
 
 
 
 
 
この話は、十訓抄にもあり、それには下句は鬼が詠じたとある。また、菅原道真が、この下の句は鬼が作ったと判じている。平安時代の秀句が、鎌倉時代に尾ひれが付いたと言う事。
十訓抄 十ノ六
同人(都良香)、羅城門を過ぐとて
「気霽風梳新柳髪」
と詠じたりければ、楼上に声ありて、
「氷消波洗旧苔鬚」
とつけたり。良香、菅丞相の御前にて、この詩を自嘆し申しければ、
「下の句は鬼の詞なり」
と仰せられける。
 
鬼神が、詩歌を賞賛するのは、古今集真名序にも「動天地、感鬼神、化人倫」とある。
上東門院が京極殿にお住まいの頃、桜の時期に、御殿のどこからともなく、和歌を詠む声がして気味悪がったと言う話も有る。(今昔物語集 巻第二十七 京極殿に於いて古歌を詠むる声ありし語第二十八
 
鬼神は、特別な力が有り、人間の創造を超えた詩歌を人間が詠じると。喜ぶと言う事。神々も、例えば、和泉式部の詠歌に、貴船の神がかへしたと伝えられている。(ひかる君へ 光る君へ紀行 和泉式部歌 貴船神社
 
 
 
和漢朗詠集 早春
         都良香
気霽風梳新柳髪氷消波洗舊苔鬚
 
 
私訳:天気が麗らかに晴れ、暖かい風が新芽を出した柳の枝をそよがすのは、美人の髪を櫛で梳るようなものだ。氷が消えて波が揺れ動いて、水辺の去年から生えている苔を浸しているのは、老人の鬚を洗うようなものだ。
 
 
 
あなたは、この話を信じますか?
 
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