『高気密高断熱で自然素材の家が好きな一級建築士のブログ』

茨城県取手市 シンク設計事務所 辰野峻也のブログです
これから家づくりをされる方の役に立つ情報をお届けします

オンラインセミナー!講師は「ホントは安いエコハウス」著者

2020年05月29日 12時20分20秒 | 高気密高断熱の家
月曜日は、YKK主催のオンラインセミナーに出席しました。
 
コロナによってセミナーは、オンラインでの開催が多くなっています。
移動時間が無くなり時間が効率化できるのでその点は有難いことです。


今回の講師は「ホントは安いエコハウス」著者、松尾設計室 松尾和也さんです。

もちろん僕も読んだことのある本です。
事務所は兵庫県にあり、好きな建築家のひとりです^^
↑トップ画像の左「ホントは安いエコハウス」と、右「エコハウスのウソ」は、高気密高断熱の〝良い家〟を建てたい方にとって、勉強になると思いますのでお勧めです。

両方とも主に家の性能について書かれている本で、両著者の「性能のよい家を建てましょう」という考えについては、私たちシンク設計事務所の考えもほとんど同じです。
僕のブログでも、Ua値の基準や、C値の基準樹脂窓を選ぶ理由について詳しく書いていますが、更に勉強したい方、お時間ある方はぜひ読んでみるのも良いと思います。
大事なところはこのブログでも、実例と合わせて色々紹介できればと思っています。

セミナーの方はというと、1時間半のセミナーでしたがあっという間でした。
内容については、
耐震のこと、窓のこと、断熱のこと、気密のこと、結露のこと、そもそもなぜ床が冷たいのか?など…、
〝良い家〟を造るための内容で溢れていました。
ひとつ紹介しましょう。

そもそもなぜ床が冷たいのか?

その答えは、高気密高断熱の住まいを建てれば解決します。
理由としては、すき間の少ない高気密にすることによって、暖房により暖められる空気が床までしっかり届くんですね。
これは暖房がエアコンであっても、ガス系の暖房機であっても、薪ストーブであっても同じことです。(※高気密高断熱では空気の汚れない暖房器具を使いましょう。)
暖かい空気は上に行くのが常識で、なかなか信じられない方もいるかもしれませんが、これはサーモグラフィのように温度を色で表したデータからもわかることです。


↑エアコンによる暖房時のデータです

今までの経験から、エアコンで暖房しても部屋の上部ばかりが熱くなってしまって床までなかなか暖かくならない、というのを実体験により感じている方もいるかもしれません。
僕も実家や一人暮らしのアパート、今住んでいる家を建て替える前の中古住宅で体験してきたそのひとりです。

↑上画像右をみてください
低気密の家(すき間のある家)は、暖められた空気が家の上部のすき間から抜けてしまっていることのデータです。
これをみると、部屋の下部、床のほうからは冷たい空気が入り込み、暖かい空気は部屋の上部へ引っ張られてしまっているのがよくわかります。
ですので、寒いからと言って暖房の温度をいくら上げようと、残念ながら暖かい空気は上部へ流れ、下部の床のほうからは更に冷たい空気が入ってくる、という現象が起きてしまっています。

↑上画像左をみてください
一方、高気密というのはすき間が小さいため、すき間風は入ってきません。
エアコンの暖かい空気が上部へ逃げるのではなく、部屋全体を暖めていくのがわかります。

新しく家を建てられて、吹抜を作ったんだけど吹抜の家は寒いや、リビング階段にしたんだけど冬は寒いから止めた方がいい、などと言っている方がいたら、それは吹抜やリビング階段が悪いのではなく、家の性能が悪いんです。

他にも、床が冷たく感じないようにするためには、床の仕様が無垢の無塗装品であれば尚よい条件になります。
合板の床でも無垢の床でも、ウレタン塗装仕上のものがありますが、暖かく感じることに焦点を当てると、無塗装品のほうが暖かく感じます。
さすがに無塗装のままでは心配なので自然塗料などで仕上げをしましょう。
ウレタン塗装してある床と無塗装の床、同時に触り、比べてみると明らかなのですが、無塗装の床のほうがわずかですが暖かく感じます。
どういうことなのでしょう?

極端に考えてみると、以前に書いた、樹脂窓を選ぶ理由についての記事からも、樹脂を触るのとアルミを触るのとでは、どちらが冷たく感じるのかは簡単に想像できると思います。

では問題です。
25度の部屋の中にある「アルミの椅子」と「木の椅子」、アルミの椅子の表面温度は何度だと思いますか?また木の椅子の表面温度は何度だと思いますか?
素材により表面温度はどのくらい違うのでしょうか?






























正解はというと、どちらも25度なんですね。へんな問題を出してすみません。
ですが中にはアルミのほうが表面温度は低いんじゃないかな?と思われた方もいたと思います。
これは、両方の椅子を触ってみるとわかることなんですが、アルミの椅子のほうが実際に冷たく感じるのでそういう勘違いをしてもおかしくありません。

なぜそのように感じるのかというと、物に触れるということは、触った瞬間に自分の手の熱がそのモノに奪われていくからで、そのモノの熱伝導率の違いから起こることなんですね。
熱は、高いほうから低い方へ早く流れます。この熱が、手から奪われるスピードの差で冷たく感じたり暖かく感じる、というわけです。
せっかくなのでモノの熱伝導率を比較してみましょう。

熱伝導率W/mK
――――――――――――――――――――――
アルミニウム         210.00
鉄鋼              45.00
大理石             2.79
タイル             1.30
樹脂                0.17
合板フローリング        0.17
木(樹種による)     0.12~0.14
タタミ             0.11
吹込セルロースファイバー    0.040
吹付硬質ウレタンA種3       0.040
吹付硬質ウレタンA種1H    0.026
フェノールフォーム       0.020
――――――――――――――――――――――

↑数字が大きいほど、熱伝導率が高く、熱が奪われやすいということです。
熱伝導率の高いアルミや大理石などは、冷やしているわけでもないのに冷たく感じ、熱伝導率の低い断熱材や発泡スチロールなどは発熱しているわけでもないのに熱の移動が緩やかなので暖かく感じます。

ということで、床についても同じです。
床は、なるべく暖かく感じるものを採用すると、冬の間、裸足でも暮らせます。
もちろんウレタン塗装の床のメリットもたくさんあるので、どちらが良いというつもりはありません。
床は塗装品、無塗装品、メリットを考えて自分で決めましょう。

↑実際に暮らしている我が家の冬の例です
床は無塗装のナラ材に自然塗料で仕上げしたものを採用し、暖房は薪ストーブのみ、カーペットなども敷かずに無垢の床のまま裸足で暮らしています。
LDKは勾配天井の吹抜空間になっていますが、真冬でも裸足で大丈夫です。
僕の場合は、靴下を履くときは外へ出かけるときと仕事をするときのスイッチになっています。

セミナーでは知っている内容も多くありましたが、やはり参加することでモチベーションが上がります。
松尾さんは、このコロナ自粛で何かできないかと考え、前々から考えていたYouTubeチャンネルを立ち上げたそうです。僕も見ています^^
建築の専門家が発信してくれる内容は勉強になると思いますよ。

僕もこのコロナ自粛で何かできることはないかと考え、一級建築士、一級建築施工管理技士を取得して10年、木造住宅に携わり丸15年、今までの知識のアウトプットとしてブログを書いていこうと決めました。

私たちシンク設計事務所も、これからも〝良い家〟を造ります。
夏涼しく冬暖かい高気密高断熱の〝良い家〟を、分離発注にて原価で建てましょう。

シンク設計事務所 辰野峻也