秋田県の寺田典城知事が政策の柱に掲げる情報公開のフレームが、ぼやけてきた。県職員の相次ぐ不祥事をめぐり、一時は職員に関する情報を積極的に公開しようとする姿勢を見せたが、7月末には「個人情報」であることを理由に今後、職員の性別や年代さえも公表しない方針に転換した。何が公開すべき情報なのか、寺田知事が“迷走”している。
<職員不祥事で表面化>
4月の知事選で、3選を目指した寺田知事は「フタをしない県政」と銘打ち、県庁交際費の全容を支出相手の同意の有無に関係なく、県のホームページで公開することを公約に掲げた。
交際費は香典や病気見舞いにも充てられ、文書は県政情報資料室で閲覧できる。県個人情報保護審査会は6月、「公にされているか否かを問わず、遺族ら相手方の心情に配慮し、慎重に取り扱うべきだ」とし、本人の同意を条件とする“軌道修正”を促した。
迷走ぶりは、職員の不祥事をめぐる寺田知事の対応で一気に表面化した。
定例の記者会見が開かれた5月16日。農地整備事業の入札前に、職員が金額入りの設計書を閲覧させたミスについて質問された知事は、後ろの席にいた幹部職員に「(ミスをしたのは誰なのか)今、はっきり公開しなさいよ」と声を荒らげた。
翌週の23日の会見で(1)農業試験場の不適正な会計処理(2)入札参加資格のない業者の指名と委託契約の締結―の2件の不祥事を公表した知事は、担当職員の性別などを職員に確認して明らかにし、誤って契約した業者名までも公表した。
<審査会に判断委ねる>
それから2カ月余の7月29日。男鹿市内のコンビニエンスストアでDVDを盗んで逮捕された幹部職員と、酒飲み運転の任意調べを報告しなかった職員の処分を発表した県は、処分内容と所属・役職名だけを出しただけだった。
公開から非公開へ、対応が一転した寺田知事の見解は「個人情報保護法の考え方を尊重する」「年齢、性別はその人が決めた運命ではない。そういう基礎的な情報を出すこと自体、いかがかと思う」。公開の是非については県情報公開審査会の判断に委ねている。
寺田県政誕生のきっかけになった県庁の食糧費問題で、県は処分した職員の職名と名前を公表している。
「その時はその時。今は県個人情報保護条例もあるから、より配慮すべきだろう」と寺田知事。さまざまな課題を「情報公開」の言葉で乗り切ってきた知事が、「個人情報保護」との線引きをめぐり、戸惑っているようにも見える。
河北新報 2005年8月5日
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