--Katabatic Wind-- ずっと南の、白い大地をわたる風

応援していた第47次南極地域観測隊は、すべての活動を終了しました。
本当にお疲れさまでした。

橇の引き出し

2006-06-04 | 南極だより・作業
今日は一日屋外で過ごしたので、気分が晴れ晴れしました。
19時半頃(昭和基地の13時半頃)に昭和基地WEBカメラ リアルタイム画像を見たら、岩島方面がきれいな夕焼け?朝焼け?でした。
太陽が出ていない季節ですが、水平線(海氷平線??)のすぐそばに太陽があることを感じさせてくれます。
現地で見たらもっときれいだったでしょうね。
しばらくして、画面を更新すると月が映し出されていました。
今日は上弦の半月。
日本でも左半分が欠けている月が見えるはずですが、南極(南半球)では右半分が欠けています。
私の家からは曇っていて月が見えないのが残念。
その代わり昭和基地の月を見ることができてラッキーでした。
それでは渡井さんからの南極だよりです。
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2006年6月3日(土) 曇り 橇の引き出し

観測に必要な物資を運ぶ際には雪上車で橇を牽引することがほとんどだ。
雪上車の中にも多少余裕はあるのだがスペースは限られており、燃料ドラムなどはその大きさと安全性から橇に積むことしかできない。

冬明けから使用する橇3台の回収を行った。
夏に氷上輸送で使用しそのまま見晴らしにデポしてあった橇だ。

見晴らしについて驚いた。
橇はランナーのオーバーハングを残してほぼ埋まっている。
物資を載せる面は雪に埋もれていて見えない。
これを雪上車で引っ張って出すのだ。

橇を全部掘り起こすのは大変だな、と思っていたらそうではなかった。
橇の前面の雪はランナーが見える程度までは堀り出すのだが、側面は橇と周りの雪との間にスコップを刺し雪面を切る。
これを雪上車で少々勢いをつけて引っ張るのだ。
傍目には到底引き出すのは無理なように思えるのだが、ちゃんと橇は雪の中からでてくるので驚きである。
雪上車で引っ張る時、ワイヤーや橇のオーバーハング下に取り付けられたフックにかかる力は相当なものであろう。
雪上車のディファレンシャルにかかる負荷も大きいはずだ。
理想を言えばやっぱり橇の周りを掘り出してからが良いようだが、時間的なことを考慮した結果これが観測隊としての適切な方法らしい。

引き出しの際の雪上車を運転した。
引き出しに用いたSM40型はマニュアル車なので、クラッチを完全につないでスタートする。
そうしないとディファレンシャルに無理な力がかかって痛めることになる。
勢いをつけるといってもギアは1速で十分だ。
橇に力が加わった時雪上車は後ろに引っ張られるので、慣性の法則で運転者は前のめりになるほどだ。
フロントガラスに頭をぶつけないよう、これにも注意していなければならない。
また橇の抵抗が大きすぎてキャタピラが空回りするときはすぐに前進を止めること。
無駄に雪面を掻いてしまい、亀の子状態になること必至だ。

今回橇のワイヤー取り付け部を一箇所破損してしまった。
すでに壊れていて溶接した箇所ではあったが、過大な力が瞬間的にかかるとこうなってしまう。
引き出しを2回に分けることがあっても、必要最小限の力で引き出す必要があるのではないだろうか。
回数を増やすと雪面を荒らすことにもなるわけで、時間等も考慮し、実際の加減を体得するしかないだろう。


#雪に埋もれた橇を掘り出している

#雪の中から橇を引き出す

#雪上車から撮った橇

-----本日の作業など-----
・橇回収オペレーション
・月例報告作成&送付
・CO2, CH4, CO, O3濃度分析システムチェック

<日の出日の入>
日の出  なし
日の入  なし
<気象情報6月3日>
平均気温-14.7℃
最高気温-13.2℃(1146) 最低気温-18.7℃(2319)
平均風速5.2m/s
最大平均風速11.9m/s風向ENE(0710) 最大瞬間風速15.8m/s風向ENE(0707)
日照時間 0.0時間

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昨日のとっつき岬オペレーションにも出てきた橇。
以前、掘り出した幌橇ではなく、台の部分だけの平たい橇のことです。
観測隊では2トン積み木製そりが使われているようです。
橇の写真はないかと、もらった画像を探してみたところ、全貌を写したものはなかったのですが、平たい橇の姿とオーバーハング部分が写っているものを見つけました(2月にS17で撮ったもの)。

#橇先の金具の部分がオーバーハング(たぶん)
こんなに大きなもの(長さ4.6m、幅1.6m)が雪に埋もれていて、それを雪上車で引っ張ると出てくる?
幌橇の時も雪上車で引っ張り出していましたが、その前に凍った部分をツルハシとバールで叩き割る作業があり、大変そうでした。
今回の橇は平たいからあまり周りをはつらなくても、引き出せるということだったのでしょうか?
それとも他の理由がある?
2トン積みの橇ですから、それに耐えられるワイヤー取り付け部になっているはず。
それが壊れるほどの力がかかるのだから、やはり雪の重さというのは侮れないものだと思いました。
雪上車も移動や荷物の運搬だけでなく、力仕事もこなしているのですね。
今回使用したSM40は2トン橇2台の牽引が可能ということなので、橇を引き出すのにとりあえず4トンよりは軽かったということになるのでしょうか?
この冬から春にかけて日本では大雪に見舞われて、とくに湿った重たい雪の日本海側では家屋が倒壊する被害も出たほどでした。
雪に含まれる水分によって重さが違うと言うことですよね?
南極は乾燥しているから雪は軽いのかな?と思ったのですが、降り積もって密度が高くなれば重くなると思うので、やはり重いのでしょうか?
同じ体積でどれだけ重さが違うものなのか、なんだかとても気になってきました。
何をどうやって比べればいいのか分からないですけれど。

気になる一文「フロントガラスに頭をぶつけないよう、これにも注意していなければならない」。
このように書いてあるということは、頭をぶつけそうになったか、もしくはぶつけたからではないかな?
私もフロントにおでこをぶつけたことがあるのですが、痛いので注意してください。

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