石の繭 警視庁捜査一課十一係
麻見 和史 著 講談社文庫 / 2013.5
モルタルで石像のごとく固められた変死体が発見された。
翌朝、愛宕署特捜本部に入った犯人からの電話。
なぜか交渉相手に選ばれたのは、新人刑事の如月塔子だった。
自らヒントを提示しながら頭脳戦を仕掛ける知能犯。
そして警察を愚弄するかのように第二の事件が。
緻密な推理と捜査の迫力が光る傑作警察小説!
WOWOWのドラマが面白かったので、読んでみることにしました。
原作では、主人公の如月塔子は背の小さい女性ですが、ドラマでは木村文乃が演じているので、ちょっとイメージが違いました。
ドラマはまだ始まったばかりなので、塔子も捜一のメンバー、犯人も、どういうイメージになるかは判りませんが、塔子だけは頑張らないとズレてきちゃうかもしれませんね(小さいことがポイントでもあるので)。
お話ですが、結構、練られているので飽きることがありませんでした。
犯人の頭がいいのも面白く、その犯人が“取って付け”じゃないのもいいと思いました。
ネタバレになるのであまり書けませんが、犯人の設定や他の登場人物などに無駄がないのが私としては好印象ではありました。
ですが、物凄く練られているのは解るのですが、いろいろと気になるところが多く、その度に現実に戻されました。
以下、気付けばネタバレ?
塔子がトレミーに本名を言った時点で、塔子の自宅に警官を配備しないのかなー?と思いました。
いくら警察官とは言え塔子は女性ですし、殺人事件の犯人で若い男だし、本名から自宅を割り出すことはできるだろうし、何もしなくて大丈夫?と心配になりました(で、やっぱりね…)。
そして、最後、塔子の救出に来たきっかけが、“ピンセット”ということでしたが、これはかなり強引に感じられ、長々と説明していることを見ても、無理があるかな…と思ったのではないでしょうかね?
父親が実行犯だったこと、母親が義兄と不倫していて、自分はその間にできた子供であったことも、あまりにも奇をてらい過ぎていて、ちょっと笑ってしまうレベルに感じました。
全体的にどこか軽さがあって、事件の内容や犯人の執念深さとが釣り合わず、若干、バランスが悪いように感じられ、もったいないなーと思いました。
もしかしたら、犯人の『恨』が異常過ぎるかもしれません(DNAや国家レベルで子供たちに『恨』を刷り込まれている民族には普通のことでしょうが、日本人には異質に感じます)。
他に、塔子があまり苦労していないように感じられ、所轄の根元刑事の態度こそがリアル(イメージですが)に感じられ、捜一の先輩たちが優し過ぎると思いました。