知人から、『ボルヘス怪奇譚集』に『怒りを恐れて』というショートストーリーがあるということを教えてもらった。
ボルヘス怪奇譚集 (河出文庫) | |
ホルヘ・ルイス・ボルヘス アドルフォ・ビオイ=カサーレス 柳瀬尚紀訳 |
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河出書房新社 |
以下、ごくごく短い文章なので全文を紹介する。
とある戦で、アリは敵を倒し、その胸に膝をついて乗りかかり首を刎ねようとした。相手は顔に唾を吐きかけた。アリは立ちあがると、男を放してやった。どうしてそんなことをしたのかときかれて、彼は答えた。
「あの男が顔に唾を吐きかけたので、怒りのあまり殺してしまうことを恐れたのだ。神の御目のもと汚れなきときにのみ、わたしは敵を殺す」
(アハマッド・エル・カリュビ『ナナディール』)
なんという冷静さ。
いや、感情に左右されることなく冷静に物事を見通すという本来の意味からいけば、この小編の主人公アリには冷徹という言葉こそふさわしい。
殺人という、人間として究極的に感情が高ぶるであろう行為の実行中に、その対象者から、これまた最上級の侮蔑としての「顔に唾をはきかける」という行為を受けたとしたら(わたしのような平々凡々人にはちょっと想像がつきがたいんですケド)、ふつう(こんなシチュエーションが「ふつう」だとは思ってないですケド)、「怒りのあまり」ムチャクチャにしてしまいそうなものなのだが、そうはならずに、状況を客観的に把握し自己を制御した行動をとる。
今日も今日とて、感情に流され感情を押し殺し高ぶる感情との葛藤に右往左往するわたしには、とてもとてもそのような芸当ができるとも思えないが、せめて爪の垢なりとも。。。そう心に決め、ふと鏡を見てみると、スキンヘッドのオチャラケた60歳がそこにいた。
うん、やっぱりムリ。
この先も、「わたしとわたしの環境」とに「折り合い」をつけながらオロオロと生きていくしかないのだわ。
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