ネンゴロ
2009 奮励応急、三党連立。(鳩山由紀夫内閣)
(終)
漫画の思い出
花輪和一(9)
『月ノ光』
珍しくSFかと思いきや、いや、SFかな。わざとおかしな話にしてある。こんな作品が出版できるなんて、驚きだ。
「女がおとうをどっかにやっちゃったと、ガキだから思ったんでせうが、まあとにかくなんですよ 青林堂だけですヨ 正しくて良いのは……」
作中に「ずいぶんむだな描き方」と言い訳されているが、作者にとってはどうしてもやらねばならない表現だったのだろう。
「女」は美人で悪人だ。悪くなければ生きられなかった。彼女には二人の娘がいる。一人は悪食で、もう一人は乳の出そうにない乳房に縋る。この娘たちは『髑髏乳』の反復だが、この作品では「女」に対する赦しが暗示されている。そのことに作者は照れているらしい。
人食いの「キレポレコ」は飢饉の象徴のようで、父権の象徴のようでもある。〈切れチンポコ〉か。
食用になるというコナギが月光に照らされている。儀死再生や母胎回帰などの隠喩。月光は青林堂の威光の比喩か。
上つ毛野伊香保の沼に植ゑ古奈宜 かく恋ひむとや種求めけむ
(『万葉集』14・3415)
『5名の愚者』
これは漫画ではない。あとがき。花輪は『月ノ光』によって再生を決意した。そのせいでモデルガンに対する偏愛が消えたらしい。ただし、後に本物を入手し、『刑務所の中』となる。かりそめの子供っぽい男らしさから本物の危ない男らしさへの転落。
(9の終)
笑うしかない友
~悪筆
汚い字だなあ。
綺麗、汚い、関係ない。読めればいいのさ。
読めないよ。
読みたくないんだろ。
同じだよ。
違うね。やれないことと、やりたくないことは、違う。
また屁理屈を。
読めるよね。
無理すりゃね。
綺麗でも読めなきゃ、何にもならないぜ。
綺麗なのはいいよ、読めなくたって。
あはは。そりゃ、読めたら汚くてもいいってのと同じだよ。
何でそうなるの。
読めなきゃ、字かどうかさえ、分らないよ。
綺麗なら、字じゃなくてもいいよ。
字じゃないと思えば、このこれ、どうだ。汚いか?
そうだね。ううん。汚くはないな、字じゃなきゃだよ。
どっちかって言うと、綺麗じゃないか。
模様として?
何でもいいから。
ううん。
どうした。
綺麗、汚いって、何なんだ?
こっちが聞きたいよ。
アタシキレエ?
汚ねえよ。マスクしろ、マスク。
(終)