青春って秘密
青春時代は蜜なんて
後からいじいじ思うもの
青春時代の真ん中は
秘密を知らずにいるばかり
(終)
聞き違い
~定点観測
蚊に喰われた 果肉割れた
定点観測 輾転反側
老いては子に従え おいで箱の下側へ
取っ組み合い 遠くを見ない
(終)
笑うしかない友
~もう、しょびしょび。
暑い。
言わないで。
何?
「暑い」って言わないで。
言わないでって言いながら、君は言ってるよね。
私は仕方ないの。
じゃあ、僕も仕方ない。
そうじゃなくて。
何?
あなたが「何」って聞いたから答えただけ。
じゃあ、僕にも聞いて。
何を。
「暑いか」って。
もう。言わないでって言ってるっしょ!
あ、つい!
もう!
「あ、つい」と「暑い」は違うよ。
でも、聞こえるもん。
「猛暑」だと、いいかな。
いいかも。
どうして。
ああ、もう、暑苦しい。
はあ。「暑苦しい」なら、いいのか。
話が違うでしょ。
あのお、このお茶、熱いんだけど。
別れましょ。
壁は厚いっと。
(終)
腐った林檎の匂いのする異星人と一緒
34 ゲーム(STAGE7 パンドラ)
小瓶に入った液体を飲み干して、あなたは気力を回復する。
階段まで戻り、バッグを噛み、スカートの裾を捻ってベルトに挟んでから片膝を突く。両手を下ろす。指先が床に軽く触れる。
あなたはピストルの音を空想する。いつか、どこかで聞いたことのある音。
バキュ……
ダッシュ。
タッタッタッ。
ジャンプ!
パンドラ・ジャンプ。
頭のないやつらの肩の上を、ひらりと越える。胸のポケットから鍵が滑り落ちる。いつか、どこかで、誰かにもらうはずの鍵。別のゲームか。
鍵はやつらの虚無に吸い込まれる。やつらは輝く。
着地。
スカートが劇場の幕のように垂れる。