漫画の思い出
花輪和一(2)
『肉屋敷』
なぜ、怒り、なぜ、狂うのか。何を恐れているのか、知らないからだろう。
「もうぺいじの余裕がないので その夜、私はスグ二人の寝首をかいてやった」
『かんのむし』
「ハリは 足、手の指とツメのあいだにうちます。はじからはじまで(ブチ チッチッチッ チッチッチッ チッチッチッチッ チッチッチッチッチ チッ チッ)ちっともいたくありません。これをやればカンノムシというものがなおると思っているのです。(ふっ)でも(ズズズーッ)最後の首筋に打つ時はとてもいやな心持ちですね おかあさん(グチュー)」
なぜか、母親が涙を流し、涎を垂らして仰け反る。
少年は祖母に苛められているのだが、母親に対して殺意を抱く。
『見世物小屋』
「見たわ見たわあの人あの人本当に蛇なのよう恐いわ恐いわああああ私どうしましょううう うそじゃないわよ本当よ本当よう私この眼で見たわ下半身が下半身が蛇なのよおおおう うそじゃないってばほんとうようう」と叫びながら尼が自分の太腿を包丁で刺す。
蛇女と尼と母親は一体であり、尼の自傷は少年の殺意の隠喩だ。
作者は母親に対する恐れと怒りを表出している。
(2の終)