腐った林檎の匂いのする異星人と一緒
10 推理
つまらない小説だけど、わかるまで読むつもり。犯人がわかるまで。犯人が異星人だとわかるまで。異星人はまだ出てこない。異星人らしい男は出てきたけど、すぐにいなくなった。深夜の街角、火を点けたばかりの煙草を半分に折って弾いて、薄笑い。だったかな。後ずさりで物陰に身を隠した。でも、犯人じゃない。その手には乗らないよ。殺されることになるらしい女は小走りにやってきて白い店に入った。だけど、すぐに出てきて、ざらざらの煉瓦を撫でながら、瞳だけを左右に動かした。と思う。白い息を吐き、白いコートの襟を立て、また白い息を吐き、白いブーツを見ながら階段を下りた。そして、白い片割れ月の下で呟く。
「こんな夜、異星人は、どこでどんなふうにして眠るのかしら」
ね。だから、犯人は異星人なんだ。問題は誰が異星人かってこと。それから、ええっと、風もないのに街路樹が揺れた。読んだのはここまで。地面が揺れていた。戦車がやって来るんだな。
(終)