漫画の思い出
花輪和一(24)
『護法童子・巻之(二)』(双葉社)
「旅之四 もぐら男」
男女の合体について、私は初めから変だと思っていた。
護法童子が男女に分離した後、女子を見ながら、男子が独り言。
*
いったい いつまであんなやつの 面倒みてやんなくちゃ なんねえんだ
じいさんばあさんに なっても一緒じゃ たまんねえなあ
好きな女の人が できたらどうすりゃ いいんだ
ああ…いやだいやだ 連れ歩くのは 自分の影だけで たくさんだ
…なんなんだ 一体おれたちは…
くっついたり はなれたり 空をとんだり………?
誰なんだろう…… おれたちを つくったやつは
いっそ あいつが…… 死んでくれたら……
糸も切れて 自由になれる……
(「もぐら男」)
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こっちが聞きたいよ。
*
ユングによるとアニマは精神の深奥の基底にある女性像で、女性の原型であるといわれる。またアニムスは男性像で、男性の原型と考えられる。男女ともにアニマとアニムスをもっているが、男性はアニマを排除し、男性らしくなる。男性が女性を理解することができるのは、男性がアニマをもっているからである。しかし、現実の相手の姿を理解せずアニマだけで相手の女性を理解しようとするのは正常ではない。
(『心理学事典』「アニマ」)
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去勢された男性が女性になるのではない。女性に何かが加わって男性になる。その何かが、分らない。
もぐら男が誘拐した女たちに語る。
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おめえらはそのうち そういう虫を けんかづらで うばいあって むさぼり食うようになるぜ
(「もぐら男」)
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女性に足りないのは闘争心か?
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この広い 京の都の 泥の中に 女をいっぱい 集めて おれだけの 都をつくるんだ
(「もぐら男」)
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女性に足りないのは、支配欲か。
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おれの うらみは そうかんたんには 消えねえ
(「もぐら男」)
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女性に足りないのは復讐心か。
これら全部か?
(24終)