団地小説短編集を歩く

団地小説短編集の舞台を歩きながら団地や地域の魅力をお伝えします。

番外編 25 さよなら磯上公園団地 旧公団市街地住宅の十年後譲渡

2022-02-19 20:50:50 | 日記
 100万戸の世界一の大家さん言われた住宅公団(現在のUR賃貸 実は賃貸住宅は最大時で77万戸弱)も国土交通省の資料

(都市再生機構の役割について H25.10.18)によればおおむね令和30年を目途にストックの3割削減を目標に集約・用

途変換・土地所有者への譲渡、返還等が進んでいます。このうち全面借地方式市街地住宅の土地所有者への譲渡等、特別借受賃貸

住宅(後述)の返還は約3万戸です。

 番外編の高尾団地・布引団地に続いて3団地目の磯上公園団地になります。令和4年1月末で都市機構の手を離れますので、さ

よなら磯上公園団地ですがもし土地所有者等によって全棟リニューアルで再生されるのであれば「お元気で磯上公園団地」となる

わけですが確かな話は知りません。

       番外編 1 高尾団地取り壊し始まる(2016.10.1)

       番外編 22 さよなら布引団地(2021.7.30)をご覧ください。

     磯上公園団地

   

 店舗等の雰囲気を知っていただくため写真は令和3年春から秋になります。布引団地に比べて地味な存在でしたが、意匠的にも

美しいと思います。昭和38年4月の完成時には立てば芍薬のイメージでしょうか。

   

 日本住宅公団磯上公園アパートの銘板があります。この写真は2月のものです。玄関ホールの扉の把手部分がチェーン錠で留

められています。玄関扉に鍵をかける事態は想定外だったのでしょう。布引団地の玄関扉に鍵が有った事が意外でした。

 店舗は観葉植物・多肉植物、馬具・乗馬用具、ピザ屋さん、お寿司屋さん、空家です。広いワンフロアではなく1・2階がセッ

トになった店舗が6戸並んでいます。耐震壁が造れますますので布引団地と同じように地震にも強かったのでしょう。突き当りが

磯上公園になります。公園の一部に今年の夏完成に向けて体育館が建設中です。阪神淡路大震災の後は大きな公園が、臨時のガレ

キ置場になりました。

   所在地  神戸市中央区磯上通五丁目1番13      管理開始  昭和38年4月

   敷地面積  非公表(全面借地のため)                   

   建物概要  10階建て1棟  3~10階部分住宅   区分所有者 民間法人1  1~2階 店舗・事務所

   住宅形式  1DK 86戸  2DK 17戸 計103戸

       各階平面図

  

 時代を感じさせる平面図です。外見はL字建物ですが、実は中廊下型+片廊下型住宅になります。間取り図から拾って柱を書き

込みました。片廊下よりは耐震力が期待できます。一方東北向き住宅の日照時間が気になります。公団では市街地住宅においても

9時から15時間で入射角15度以上の有効日照時間2時間以上が原則ですが、建設当時は隣りの建物が無いとしても例外中の例

外で30分でしょうか。

           住宅間取図(一部)

   

 住宅の狭さと共に初期の市街地住宅の時代を感じさせる間取りです。

   

 中廊下と片廊下の複合構造んになります。

   

写真 左 北東側住宅の外見です。

写真 右 屋上に共用の物干しがあります(フェンス内)。屋上にベンチがあります。昔の写真ではブランコとジャングルジム

    がありました。

   

 平成7年の阪神淡路大震災直後の写真です。列状に集中して外壁の剥離が見られます。柱が座屈(コンクリートが粉砕して鉄

筋や鉄骨が変形)すれば解体、それ以外は修理が震災当時の基準でした。磯上公園団地左側の3階建の建物は折れ曲がっていま

す。


       三宮駅南、フラワーロード東側ブロック

 昭和32年、神戸市役所の三宮移転に伴って、付近が活気づきます。神戸市役所はフラワーロードを挟んで向かいになります。

(黒枠部分)まだ神戸市の中心地ではなく比較的広い低利用地土地があった事、商店・事務所・住宅の需要が見込まれることから

から市街地住宅の建設の申し込みが集中したのでしょう。市街地住宅は土地所有者や借地権者の申し込みから始まります。

  

          地図は阪神淡路大震災(平成7年)前のものです。

 上から  緑斜線 三の宮団地  緑色 三の宮第二団地  橙色 磯上公園団地  赤色 磯辺通団地  黒枠 神戸市役所


        磯辺通団地

   

    昭和40年8月入居開始  1DK 60戸  2DK 47戸  3DK 2戸  計 109戸

 存在感を主張する威容を誇る団地でしたが、多くの被災ビルと同じようにピロティ階(駐車場・店舗・事務所等の耐震壁の無い

階)部分が倒壊しました。住宅階はほぼ無傷ですが解体せざるを得ません。当初は自動車販売会社が有ったと思います。

 現在は隣接敷地を含めて高級賃貸マンション、三宮ミュージアムタワー(40階建 125戸 平成20年2月完成)が建って

います。震災前の住宅地図では南側が三井ホーム住宅展示場になっていなすので、KK・KM夫妻の渋谷邸・NY邸と同じ系列か

と思いましたが建築主はシスコ・アセットマネジメントで平成22年12月に倒産しています。マンションは営業していますが、

神戸には超高級賃貸マンションの需要が無かったのでしょうか。原因が神戸市の衰退であればショックなことです。

 すぐ西にある神戸市役所2号館(旧本館)も、震災で6階部分が潰れて6~8階を撤去、トタン屋根を付けて使用していました

が(昔のビルは工事費節約のため途中階まで鉄骨鉄筋、上階は鉄筋のみの構造が一般的でした。鉄筋に切り替わった階が押し潰さ

れたケースが多数発生しました。)昨年やっと建替えのために解体されました。神戸市の震災のダメージは深いのです。


       三の宮第二団地

   

     昭和37年8月入居開始   住宅部分  3~6階  1DK 22戸  2DK 15戸  計 37戸  
  
 ラーメン構造の6階建でしたが震災で特に大きな被害はありませんでした。写真左。ビック劇場の看板が見えますが地下に映画

館がありました。公団住宅は6階建以上はエレベーターが有るの通念に反してエレベーターがありません。5階の住宅が5・6階

のメゾネットタイプのため入口は5階の解釈でした。1戸だけ6階入り口がありましたが例外扱いでしょう。写真右は現在。

   ここへ

 日本住宅公団 三宮(2)アパートの上にALT KOBEのアクリル板があります。平成24年2月に住宅部分も施設所有者

に譲渡され一体経営されています。昭和モダンをコンセプトにあえて古さを生かしたおしゃれなビルに生まれ変わりました。住

宅も3分の1程度の入居者の方が継続居住されたようです。共用スペースが作られたため現在は住宅戸数が1戸減っています。

   ALT KOBE 富士ビル でホームページがありますので是非ご覧ください。

       三の宮団地

     昭和34年3月入居開始  1DK 4戸  2DK 59戸  3DK 12戸  計 75戸

 現在はラウンドワン三宮駅前店があります。資料がありませんがイメージとしては1~3階部分は関西電気ビルで4~7階が

ロ字型で公団住宅になっていました。(この部分R4.3.8訂正)屋上のリプトンティパックの大きな手が上下に動く看板が有名で

した。時期は不明ですが早い段階で施設譲受人に譲渡され、震災後、ラウンドワンが出来たと思います。

    市街地住宅の十年後譲渡

 初期の市街地住宅(全面借地市街地住宅)には施設譲請人(下層階の店舗・事務所等の所有者 多くの場合土地所有者)に十年

後に住宅部分を譲渡しますの約束がなされてました。なぜ十年後かと言えば私見ですが、終戦時には空襲による焼失、引き揚げ者

の受け入れ等々で420万戸の住宅が不足しており、住宅公団設立の昭和30年で271万戸の不足、これを住宅建設10ヵ年計

画で0とするものですから、10年後には住宅不足は解消、住宅公団は解散のストーリーであったと思います。当初の職員も公団

は時限立法、公共団体からの出向者はいずれは帰ると思われていたようです。その後高度経済成長による大都市への人口集中、住

宅の質の改善等住宅需要は続くことになります。

 では、十年後譲渡の約束はどうなったでしょうか。一部は実行されましたが、多くは借地料の値上げ等でお茶を濁され譲渡され

ることはありませんでした。そしてUR都市再生機構になってやっと、国土交通省から小規模市街地住宅は経営改善の見込みがな

いから土地所有者への譲渡の指示が出されました。

 追記 旧公団市街地住宅の10年後譲渡の事後評価(研究者代表 鹿児島大学小山雄資助教)によれば昭和46年から57年の

    間に45団地1468戸が譲渡されています。全面借地の市街地住宅は10年後譲渡の約束の無いものを含めて総戸数

    24094戸になります(同前)。約束の無い団地は、時期によって多少異なりますが、おおむね「公団住宅を譲渡する

    予定はありませんが、譲渡する場合は優先的に譲渡します」の約束なっています。

     特別借受賃貸住宅

 三行目に市街地住宅の譲渡と共に出てきた特別借受賃貸住宅の返還です。特別借受賃貸住宅とは住宅都市整備公団の時代、昭和

63年12月から平成11年10月行われた地価高騰に伴う家賃抑制対策として、土地所有者の土地に公団が住宅を建て長期割賦

で譲渡、それを公団が20年契約で借上(延長の選択可)るもので土地購入費が不要な分家賃が安くなります。十年後譲渡の教訓

を生かしたものかも知れません。

 その後の家賃相場の下落によりほとんどの団地で赤字になります。地主への返還はほぼ終わったようです。


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