団地小説短編集を歩く

団地小説短編集の舞台を歩きながら団地や地域の魅力をお伝えします。

小説タウンハウス 17 山田池と山田池引水路 淡河川・山田川疏水(淡山疏水)8

2019-06-14 06:01:27 | 日記

       補水工事

  山田川疏水が完成し、供給地域内では開墾、畑作からの転換が行なわれ用水が不足するようになってきました。特に大正13

 年は空梅雨で未曾有の旱魃で対策として山田池の構想が出来たが予算21万円で多額の債務を抱えた組合では不可能であった。

 後に政府の補助金の制度が出来、予算額30万円、国庫補助5割、県負担1割5分、残額を組合負担として起債が許可された。

  組合の手には負えない大事業のため県営事業として施行されました。昭和4年3月26日地鎮祭執行。昭和8年3月28日竣

 工式を挙行した。竣工した昭和8年はまた空梅雨で8月1日放水、潅漑に供られました。

  前回小説タウンハウス 17 山田川頭首工から第四隧道 淡河川・山田川疏水(淡山疏水)7(2019.3.22)で混凝土コンク

 リートの時代として国産化により安く大量に供給されるようになったセメントとコンクリートの技術が山田川疏水を可能にした

 と書きましたが時代はコンクリートの塊とも言える巨大な農業用のダムを造り上げました。

  補水工事としては淡河川幹線水路に造られた僧尾川引水路(昭和9年3月着工、同10年10月竣工)があります。

  小説タウンハウス12 淡河川頭首工 淡河川・山田川疏水(淡山疏水)4(2018.8.19)をご覧下さい。


       山田池

   

  写真 左 兵庫県淡河川・山田川普通水利組合疏水事業平面図。

  写真 右 東播用水土地改良区の淡河川・山田川疏水地図。⑦山田池引水路 ⑧山田池 

   

  県道85号線沿いにハイキングコースの標識があります。しばらく登って少し下ると木立の間から山田池が見えます。

  ハイキングコースの標識はあるのですが、今は山田池周遊路は立入禁止で従ってダムにも近づくことが出来ません。池の波の

 浸食で周遊道路の下がえぐられ非常に危険な状態になっているそうです。写真は少々古くなりますが変わってないと思います。

  

  山の中の絵に描いたような美しい池です。ハイキングでは第一の見所であったと思います。

  堤高 27.3m  堤頂長 78m  満水面積 4ヘクタール  集水面積  57ヘクタール

   

  装飾の施された三連の余水吐と半円形の取水塔です。堤体を見るにも下流側は道が無くこの程度しか見えませんでした。

   

  取水塔と内部です。3つのハンドルはおそらく上段・中段・下段の樋を開けるためのハンドルだと思います。近代的なダムの

 形ですが純粋の農業用のダムですので、水を使用するための樋と満水になった水が流れ出る余水吐しかない溜池と同じ構造で

 す。樋が3段になっているのは堰堤が高いので流れ出る水の水圧対策だと思います。

       淡山疏水を構成していますのでおなじみの看板です。

  

   

  山田池は、淡山疏水の補助水源として昭和8年に完成した粗石モルタル造の重力式ダムです。戦前に造られた重力式ダムの農

 業用ダムは全国で数例しかなく珍しいものです。ダムの表面は花崗岩の間知石が布積みされ、取水塔や三連アーチの余水吐には

 随所に美しい装飾がなされています。東播用水により用水が受益地に安定して供給されていることから貯水利用はされていませ

 ん。しかし、その歴史・文化的価値から山田池の堰堤など関連施設は後世に残すべき近代化産業遺産に認定されています。

   粗石モルタル‥‥セメントと粗石を水でねりあわせたもの。

   間知石‥‥石積みに用いられる日本独特の四角錐の石材

   布積み‥‥各段の高さを水平に揃え、横目地が一直線になる積み方

  石堰堤取水塔断面図の取水塔の中に3ヵ所の水の取り出し口があります。

       工事中の写真  淡山疏水・東播用水博物館蔵   

   

  写真 左 間知石で外形を作りその中に粗石モルタルを打設している様子がよく判ります。かなり大きな粗石を置きその間にコ

       ンクリートを流し込みます。現在では巨大な砕石機によりバラスを作って全てコンクリートを使用しますが、セメン

       トの節約を兼ねて大きな石をそのまま使用しました。漏水の危険があるので貯水池側は粗石を少なくコンクリートを

       多くしています。

  写真 右 ダム建設現場に近くの石取場でしょうか。花崗岩の間知石は運びますが、全体が岩山ですので粗石モルタル部分の材

       料は現地の石を利用したと思います。(根堀工事‥基礎の岩盤部まで掘った時の記録写真かも知れません)


       立ヶ畑堰堤 烏原貯水池 

  山田池は今は近づくことが出来ませんが同じようなダムで散歩でいけるダムがあります。           

  

  明治34年6月着工、明治38年5月完成。神戸市では明治33年に完成した布引貯水池に続く二番目のダムとなります。水

 道用のダムですので農業用のダムよりは早く造られています。

   粗石モルタル造り アーチ型重力式ダム

   堤高33.3m  堤頂長 122.4m   満水面積 11.5ヘクタール  集水面積 19.76平方キロメートル

  水需要の増大に対応するため、大正2年8月から大正4年3月に2.72mのかさ上げ工事がなされています。写真でよく判り

 ます。

   

  写真 左 取水塔と余水吐です。余水吐にゲートのようなものが見えますが開閉する装置が見当たりません。神戸市の説明には

       満水になれば自動的に開くとあります。それなら必要ないわけで、貯水量のかさ上げのための止水板にも思えるので

       すがよく判りません。

  写真 右 山田池と同じ半円形の取水塔です。中は見えませんが山田池と同じ三つのハンドルがあります。

       第十三代兵庫県知事服部十三揮毫の「養而無窮」の扁額があります。森や施設を養えば水は尽きることがないとの

       意味でしょうか。

   

  山田池の堰堤も近くから見ればこのようになっていつと思います。最近はコンクリートブロックが多くなっていますが街中で

 もよく見かけます。小規模なものは斜めに積んだものが多いです。断面図は山田池と瓜二つです。


       山田川集水引水路

  山田池の集水面積は57ヘクタールと狭かったためさらに水を集めるために約2.4㎞の集水引水路が造られ、山田池のある

 谷の東側の山の斜面の58ヘクタールの雨水も山田池に導かれた。昭和10年8月着工、昭和12年5月竣工した。工事費は約

 二万五千円で山田池と同じ集水面積を確保しました。水に対する執念を感じます。

   

  集水引水路には6ヵ所の隧道が造られ写真は第三隧道です。コンクリート製の実用的なものです。

   

  400分の1(トンネル内は200分の1)の傾斜で等高線に沿って伸びています。いまは全く放置されているため、崩壊が

 加速しています。


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