いのりむし日記

いのりむしの備忘録です。

Nakajima Hisae

志賀健二郎 『百貨店の展覧会 昭和のみせもの 1945-1988』2018

2019-01-03 | 本と雑誌
百貨店の展覧会というと、博物館的には「ああ、あれね」と軽く見られる感じだろうか。それが副題の「みせもの」という言葉にも表れていて、そりゃ何たって「店(みせ)」なんだからなのだが、私には百貨店の展覧会に悪口は言いたくないと思う体験がある。
いつどこでのことだったか記憶が曖昧なのだが、多分小学校卒業の春休みに名古屋の百貨店で見た「アウシュビッツ展」が衝撃だった。会場で初めて見た、収容者の髪の毛で編んだ毛布の実物、毒ガスチクロンの缶などが衝撃で、人間はこんなにも残酷になれるのだと実感した。この時の衝撃は、その後、歴史と向き合う時の私の価値観形成に大きな影響を与えたと思う。大人になって、この時のアウシュビッツ展について調べてみたが、なぜか思っていた時期にそのような展覧会は見当たらず、小学生の体験にしては少々無理を感じるし、記憶に若干のズレがあるのかもしれないと思っていた。
そんな疑問を解く情報が、この本にあった。百貨店の展覧会としては不似合いだが、戦後、国内の平和と繁栄を謳歌していた一方で、ベトナムなど反戦への思いが高まっていた時代に、戦争に関わる展覧会もいくつも開催されていて、その一つがアウシュビッツ展だった。それによると、1972年4月14日から19日、ポーランド国立アウシュビッツ博物館(当時)、朝日新聞社などの企画で、日本橋東急において開催されたという。
おそらく、この前後に各地を巡回したのだろうと思い調べてみると、四日市の近鉄百貨店の開催が8月だった。中学3年の夏休みである。都会の百貨店で長期休暇中という点では記憶に間違いはなかった。当時、親が朝日新聞を購読していたので、おそらく新聞広告で、この展覧会を知り、ちょうど夏休みだったので一人で電車で出かけて行ったのだ。
まだ博物館での展覧会が限られていた時代、この百貨店での体験は強く記憶された。そして、同じような体験を持つ人が結構いるのではないかとも思う。
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