いのりむし日記

いのりむしの備忘録です。

Nakajima Hisae

素木しづ 『三十三の死』1914年

2019-04-30 | 本と雑誌
「不具」などという表現は、今や死語だろうが、「十八の年、不具になった」というお葉の淋しく揺れる心が静かに綴られていく。哀れみと気遣いがない交ぜになった周囲の反応のいちいちが、お葉の繊細な心持ちに吸着していく。
作者自身、膝の強打で発症した結核性関節炎が悪化し、右足を切断しており、まだ十代の頃の作品であることに驚く。三十三歳で死のうと思ったとは、それまでは生きよう、生きたいということだろうか。実際、しづは『三十三の死』が発表された年に結婚し、子どもも生まれているという。しかし、肺結核が悪化し、1918年に亡くなった。
(ポプラ社百年文庫85紅に所収)
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