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「勘竹庵」evnc_chckの音楽やそれ以外

音楽の話題が中心になるかもしれませんが日々の雑感など書いていけたらと思っています。

ジャズの和声と旋法(5)

2008-08-11 00:04:05 | 音楽(ジャズ)

・そしてJazzは幕を閉じる・・・

モードまで行き着いたマイルスが、より自由に自己のフレーズを表現したい(結構、ぼっちゃん育ちだったらしいですし、ステージでも自分が終わりたいときがエンディングだ!といった態度ですし、一歩間違えればジャイアンのリサイタルですよね)、と考えたものの、コールマンのフリー・ジャズを批判してしまった手前、そこには踏み込めない。で、マイルスの選択はジャズ・ファンの心胆寒からしめるもの でした。トーナリティーを明確にするものは取っちゃえ!リズムもトニー・ウィリアムス以外が叩く4beatではノロくさい!もっとスピード感が必要だ!で結論がロックのミュージシャンを連れてくる。というものでした。(かなりは私の想像であることを了解ください。)
「bitches brew」というアルバムは私ですらどう評価していいのか?ジョン・マクラフリンのロックのようなリフに、マイルスのペットがかぶさり、ピアノはオルガンとエレピに変わり、ドラムスはレニー・ホワイトやジャック・ディジョネットといった、その後はFusionで活躍する人間が、8beatやまだ確立途中の16beatのようなパターンを叩く。もうJazzなのかロックなのか・・・あぁそうか、Fusionか・・・ (いや、それはダメだろ、それは 笑)。

マイルス・デイビス ビッチェズ・ブリュー+1 - goo 音楽

1980年に入って一時、アコースティック・ジャズのブームがありました。このころは毎年、チック・コリアやハービー・ハンコックが若いジャズ・マンを引き連れて、日本に出稼ぎに来てました。ハービーがサンタナと競演したり、フラメンコのパコ・デ・ルシアがJazzのフェスティバルに出演したり、これはこれで何がしたいのかわからないこともありましたが、夏になるとFMラジオのエアチェックに余念が無かった時代でした。
演奏された曲や雰囲気はハードハード・バップからモードまでのスタイルで、このまま更にJazzは進化していくのか?という期待も私にはありました。しかし再起したマイルスが自身の70年代のスタイルを踏襲し、宝焼酎のCMでなんか吹いてるのを見た段階で、「やっぱり幕引きだな 。今までありがとうございました。」としみじみ思いました。

長々と素人考えを綴ってきましたがこの話題も次回で最終回とさせてください。
「ジャズは歴史を終えた」と言う人がおられます。確かに現在進行形のジャズはHipHopとの融合をし一つのジャンルを成し遂げつつあるように感じます。そのあたりも含めて感じる私見を述べさせていただきます。


ジャズの和声と旋法(4)

2008-08-09 02:00:43 | 音楽(ジャズ)

前回はハードバップ時代の和声の特徴を述べました。
今回はジャズのある意味で最終形とも言えるモードについて説明いたします。

・モード・ジャズ時代(だいたい1950年代後半から現代(も多分、現役の理論・・・?))
時代を代表するピアニスト
チック・コリア、ハービー・ハンコック、マッコイ・タイナー、ビル・エヴァンス


ハード・バップの特徴は「ラフマニノフかい!」と突っ込みたくなるほどに、経過音やらテンションを混ぜた複雑なコード・アレンジの上に、コンディミ、オルタネ総動員の一大インプロ合戦にありました。
そうなるとクラシックもはだしで逃げ出す、徹底したスケール、フレーズの練習が威力を発揮するのですが、逆に誰がやっても同じじゃないか?という考えを、一部の先進的なジャズ・マンは(マイルス・デイヴィスとギル・エヴァンス、あとエリック・ドルフィーなんかも)は考えました。
そこでエリック・ドルフィーやオーネット・コールマンのような、現代音楽を研究したジャズ・マンは所謂「フリー・ジャズ」の世界を提示して見せたわけです。しかし私はこちらの世界には入れません。そもそも「アヴァンギャルドな現代音楽」が嫌いです。ハッキリ。1970年代から80年代始めころの山下洋輔や坂田明も、友人達は面白がっていましたが、それはパフォーマンスとしての楽しみ方だったように思います。
すいません。長いですね。
対してマイルス・デイヴィスが「コードの上に最適なスケールをいくつか選択し、その組み合わせでアドリブをする」、というバップの図式に限界を感じ(たんだと思いますが。正直、コルトレーンみたいなテクニシャンでは無いですしね。)、「じゃあそもそも曲の全体、あるいは一部(テーマだけ、とかサビだけとか)を支配するモードを把握して、その範囲でアドリブすればスケールを意識しなくてもいいし 、なんかメロディアスで、バップのハノンみたいなソロよりかっこいいじゃん」と、そこまで考えたかはわかりませんが、とにかくコード&スケール、からトーナリティー&モードに考え方を切り替えました。
彼の「Milestone」という曲はモード・ジャズの先駆的作品という位置付けですが、実験色が強くモードもミクソリディアンだけっぽい、 少なくともバックのメンバーはまだわかってないなぁ・・・。という印象です。キャノンボール・アダレイなんかは完全にバップノリですし。モードの究極はハービー・ハンコック、ウェイン・ショーター、ロン・カーター、トニー・ウィリアムスがバックに在籍していた時代の、「マイルス・バンド」にとどめをさすと思います。コルトレーン?え?フリーじゃないの?(って、ヲイ)。
モードになるとピアノのバッキングは定義しようがありません。マイルスと組んでいたハービー・ハンコックやチック・コリアは、所謂「 フローティング・コード」と言われる4度や5度を強調した音使い。対してコルトレーンと組んでいたマッコイ・タイナーは、普通に3度で積み上げた7thコードを、クラシック・ファンが青ざめるような平行移動でバキバキと弾いています。

モードのピアノを聴くならお薦めは、チック・コリアの1stリーダー・アルバムにして最高傑作の「Now He Sings,Now He Sobs」です。
中学生のときにこのアルバムを聴いた衝撃は忘れません。ヨレヨレのジャンパーを着て、げっそり痩せた(涙)若きチック・コリアのポートレイトには、「モーツァルトやベートーヴェン(のクラヴィア曲や室内楽曲)より、すごいものを聴かせちゃる!」という気概が感じ取れます。

チック・コリア ナウ・ヒー・シングス、ナウ・ヒー・ソブス+8 - goo 音楽

モードに行き着いたジャズが次に進化したものは?和声的なある種の解放を成し遂げたジャズの理論は?そのあたりを次の回でお話したいと思います。


ジャズの和声と旋法(3)

2008-08-06 23:16:31 | 音楽(ジャズ)

前回はビバップ時代の特にピアノによる和声の特徴を述べました。
今回は引き続きその発展形とも言えるハードバップの和声を説明いたします。


・ハードバップ時代(だいたい1950年代から1960年初頭のスタイル)
時代を代表するピアニスト
ソニー・クラーク、ホレス・シルヴァー
ビバップがアドリブ重視で、一部の天才的なプレイヤー(チャーリー・パーカー、ディジー・ガレスピー、バド・パウエルなど)しか正直聴く気がしないのですが、ハードバップはよりコード進行が複雑になり、その上で進行をそがないで旋律も聴かせる。というある意味ご無体な要求をしました。ですからその後に現れるモードジャズにとってかわられるんですが、旋法の理論を導入することまで気が回らず、複雑なコード進行の上で、必死にアヴェイラブル・ノート・スケールの理論だけで乗り切ろうとしている姿は、個人的には一番おもしろいな ぁ。と。

ピアノのバッキングは基本はビバップと同じと考えていいと思います。ただ全体にテンポの速い曲が多く、コードが細かく複雑に進行して いると。
例えばただのⅡ→Ⅴなのに

Dm7/Dm7♭5→G7/Gaug

なんてふうにして。テーマを提示しているときは美しいでしょうが、この上でアドリブをするとなると、きっついですよね。どんだけスケールを並べたらいいのか?
ちなみにこの時代の究極はジョン・コルトレーンの「Giant Steps」という曲だと思います。まともにアドリブを弾いている人を、聴いたことがありません。コルトレーンですら「練習曲のようなソロだ」と言われたぐらいです。

 ジョン・コルトレーン ジャイアント・ステップス(+8) - goo 音楽

この後、Jazzはモードに進化しマイルス・デイヴィス、ウェイン・ショーター、チック・コリア、ハービー・ハンコックなどの天才が現れますが、これ以後のJazzを私はまともに聴いていないため、何ゆえAcid JazzやRare Grooveといったジャンルになっていったのかは、よくわかりません。またあれをJazzの進化と呼ぶべきかもわかりません。Fusion同様のJazzから派生した一分野なのでしょう。ただ今の若い方々が指すJazzはこういったHipHopですね。

次回はジャズの最終形とも言われる「モード手法」に触れます。お楽しみに。


ジャズの和声と旋法(2)

2008-07-31 00:23:54 | 音楽(ジャズ)
前回はスィング時代の特にピアノによる和声の特徴を述べました。
今回は引き続きその後に起こったビバップのムーブメントの中で使われた和声を説明いたします。

・ビバップ時代(だいたい第二次世界大戦後から1950年初頭のスタイル)
時代を代表するピアニスト
バド・パウエル、セロニアス・モンク
スイングがビッグ・バンドが主流だったため、クラシックの機能和声に近いコード展開でアンサンブル的響きを重視し、個人プレイを制限していたのに対して、ビバップは従来から存在するスタンダードナンバー(スイング時代に作られた「A列車で行こう」とか)のコード展開を複雑化し、その上でいかにかっこいいアドリブをとるか。を主流にした。
コード進行が複雑な分、あまりコードでアドリブの自由度を制限するわけにいかず、根音と構成音が明確なストライド・ピアノは使用されず、また奏法上も左手に気を取られるよりアドリブだ!ということで、ベースはウッドベースにまかせて、ピアノは調性がわかる程度の音を転回させながら叩くスタイルに。

例)
一般的なブルース進行(Key=F)

Code進行が:F7→B♭7→F7→F7~
であった場合Bassのラインはおおむね以下のように弾かれます
F/E♭/D/C│B♭/A♭/G/G♭│F/F/G/G│G♯/G♯/A/A~
それにかぶさるPianoのバッキングは
1小節目:下からD,E♭,A
2小節目:下からC,D,A♭
3小節目:下からD,E♭,A
4小節目:下からD,G,C
こんな感じに入ってきます。

左手でベースを弾きながらこのヴォイシングで和音を右手で弾くと、結構、Jazzっぽいと思います。
ベースは基本は1拍目にルートを持ってきますが、上のピアノは少なくともルートは殆ど弾かず、3度と7度を基本にテンションを入れています。原型はあきらかにストライド・ピアノの2拍目と4拍目ですが、これが実際は三連裏で入ったり、和声法ではありえない平行5度で移動したりして、アドリブにからむ対位旋律のようです。
この時代は複雑になったコード進行の上で、どう美しいアドリブをとるか。に主眼が移りアンサンブルも即興能力が重視されたため、このような音使いが見られます。

この時代の演奏を収録したCDでわかりやすく、かつお薦めを一枚。と言われると私は「Jazz at massey hall」を挙げます。いろいろ逸話はある一枚ですがとにかくわかりやすく素直に「やっぱ凄いわ・・・」と思えます。

チャーリー・パーカー ジャズ・アット・マッセイ・ホール - goo 音楽

次回はビバップの発展形、「ハードバップ」に触れます。お楽しみに。

ジャズの和声と旋法(1)

2008-07-29 12:17:47 | 音楽(ジャズ)
以前にある方が運営されているBBSで和声に関する議論をさせていただいたことがあります。
その際にジャズの独特な和声がわかりにくいという雰囲気であったことから時代の流れの中で、どうジャズの和声(と旋法との関係)が変遷してきたのか主観交えてレポートをしました。せっかくですのでここに転載して他の皆様にも少しでも何かの参考になればと思います。

*とても長いので数回に分割させてください。

Jazzのピアニストが叩いてるコードは、演奏される曲のスタイルの年代にもよるので、簡単には説明しきれないのですが、・スイング時代(だいたい第二次世界大戦前のスタイル)
時代を代表するピアニスト
オスカー・ピーターソン、テディ・ウィルソン、アート・テイタム
左手でもの凄いスピードでジャンプ・ベースを弾きながら、右手はソリストのアドリブにオブリガートでからむスタイル。所謂ストライド ・ピアノと言われるもの
→左手のベースのおおまかな説明
 一拍目:低音部分でルートとその10度上
 ニ拍目:その1オクターブ上のポジションで3度と7度または6度
 三拍目:低音部分で5度をオクターブ
 四拍目:ニ拍目と同様かその転回形(下から7度または6度、3度)
ウッドベースがコードとコードを非和声音で強引に繋ぐ中で、バロックの通奏低音のようなプレイを黙々としていました。
戦後も第一線で活躍するピアニストが多かったため、例えばクラリネットのベニー・グッドマンのライブなどで、驚異的なテディ・ウィル ソンのジャンプ・ベースを見たことがあります。オスカー・ピーターソンが来日したときもステージで何曲か独奏をしてましたが、クライマックスに向けてジャンプ・ベースがどんどん早くなっていき、高速でウィジャ盤をやっているようにしか見えなくなった瞬間に、「多分 リストもこんな感じで客を熱狂させたんだろうなぁ・・・。」と思い、ジャズ・ピアニストになるのをあきらめたものです。まぁ弾けなくてもプロやってる人の方が多いでしょうが・・・。即興でフーガが弾けないオルガニストとか・・・クスクス。

以上はスィング時代について簡単に説明いたしました。
次はビ・バップの時代について簡単に触れます。