耳を洗う

世俗の汚れたことを聞いた耳を洗い清める。~『史記索隠』

40年前のコラム“氷焔”~“琉球”は台湾の“属島”

2007-10-16 11:32:36 | Weblog
 時折、引いている40年前の『週刊エコノミスト』の「コラム“氷焔”/筆者:刀鬼」を久しぶりに記しておく。時代は移り変わっても、過去の“残滓”が現代に根強くはびこることを教えられる。作文のお手本としていた“刀鬼”(須田禎一)氏の清冽で鋭い洞察力の批評は、とても真似のできる“芸当”ではないが、「ああ、そんなこともあったな…」と、越し方をふりかえりつつ“刀鬼”文を耽読する。

 
 <米国下院軍事委の第三分科会委員長プライス氏いわく~
 1. 米国は沖縄返還を全く考慮していない。 
 2. 沖縄の基地は極東における最も重要な基地である。
 3. 琉球人は日本人と異なり、かつて米国の敵だったことはなく、米国の責任はユニークなものである。
 
 1と2は米国側の主張と認識である。それを日本側がどんなに不快に思うにしても、米国側としてはそう認識し主張するのには、それなりの根拠があるのだろう。

 しかし、3は完全に誤っている。

 沖縄では“食べる”をカムンという。これは“噛む”からきている。“暖かい”をヌクサン、“寒い”をヒサンというのも、日本語の方言とみてよい。
 方言のみでなく、体質の上からも、日本人と分ち難い。

 “尚”家という琉球王家が明朝や清朝の封冊を受けたのは事実であるが、それは沖縄人民が日本国民の一部なのを否む根拠にはならない。

 米国では、沖縄本島をオキナワ、八重山や宮古などをふくめた沖縄列島をリュウキュウとよぶのを通例とする。
 しかし蒋の国民政府は、隋代の文献に台湾を“流求”と誌してあるのを理由に、リュウキュウなる名称が台湾島からその“属島”に転移しただけのこととして、沖縄列島の支配権をたびたび主張した。いまなおその主張を放棄してはいない。

 日本列島のうち、地上戦で米軍と戦ったのは、沖縄列島のみである。
 “かつて米国の敵だったことはなく”というプライス氏の見解は、ユニークではなく、むしろキテレツである。

 これは“意見”の相違ではなく、単純な“事実”の問題である。
 政府間の経済合同委もあったし、民間会議もあったのに。
 こんな初歩的な“事実”の問題に大きなズレがあるのはなぜか。

 三井三池でまたも事故。
 ここにも初歩的なミステークが、管理者側にあるのではないかな。

 帰国した三木外相、国連の演説をご自慢。
 ベトナム問題について“いずれが是、いずれが非、という論議をやめて”お茶のにごしかたがうまかった、とおっしゃりたいのかな。

 売上額を隠したり、架空の“支出”をふやしたり~
 法人脱税のあの手この手。

 源泉から徴収される“忠良なる人民”には、酒代、タバコ代、銭湯代の値上がりが待っている。

 37年の歴史をもつ前進座に分裂の危機。
 対峙する陣営の、弁慶と富樫とのあいだにも、
 綱豊卿と富森助右衛門との間にも、
 人間の心は通いあったはずなのに。

 非常なのは政治か、
 それとも、思想か。>
           (1967年10月10日/毎日新聞『週刊エコノミスト』)


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