去る1月30日の『民団新聞』Online(在日韓国人)は「旧軍人・軍属遺骨101体返還 日本政府が徴用責任認め謝罪」と次のように報じた。
<■「60余年ぶり“遅すぎた”の声も 韓国から遺族招き追悼」
日本政府は22日、東京・目黒区の祐天寺で「韓国出身戦没者還送遺骨追悼式」を行い、韓半島出身の旧軍人・軍属の遺骨101体を遺族に返還した。…
04年の韓日首脳会談でノムヒョン大統領が当時の小泉純一郎首相に徴用韓国人の遺骨調査を要請して以来、これだけまとまった数の返還が実現したのは初めて。…
日本政府によれば、旧日本軍が韓半島から徴兵・徴用した兵士と軍属の総数は24万4000人。このうち2万2000人が死亡したとされる。残された遺骨は厚生省が保管してきたが、71年6月に祐天寺に預託された。今回、返還された遺骨は韓国に本籍があり、真相糾明委員会の調査で遺族の判明した288体のうちの一部。残る遺骨も順次遺族に返還される。…
■「韓国側意向?“閉ざされた式典”
今回の追悼式典に出席できたのは、当事者遺族と韓日両国政府関係者だけだった。当初はマスコミも排除されていたが、急きょ、冒頭の黙祷場面に限って写真撮影が許可された。…
「閉ざされた式典」との批判について、厚生労働省は…「韓国政府と協議した結果」だとも述べた。…韓国側は政府間協議の席上、「韓日の平和と友好のためオープンな形でやるよう一貫して主張してきた」という。…
■「やり場のない怒り噴出“望郷の丘”」
【ソウル】忠清南道天安市の国立マンヒャンエトンサン(望郷の丘)で23日、遺骨の安置に先立って奉安・追悼の式典がしめやかに執り行われた。日本からも民間徴用者の遺骨探しに奔走してきた強制動員真相究明ネットワークの関係者3人が同席した。…
日本政府を代表して出席した重家俊範駐韓大使は「過去の植民地支配で多大の損害と苦痛を与えたという歴史的事実を謙虚に受け止め、これに対し痛切な反省と心からのおわび」を表明した。大使が弔辞を読み上げている途中、遺族席からは「なぜ、これほどまでに遅くなったのか」と抗議の声が浴びせられた。>
一方、2月8日『朝鮮新報』の記事「≪祐天寺遺骨問題≫遺骨まで差別する日本政府」を見てみよう。
<■「“強引な返還”に非難の声」
…旧日本軍によって軍人、軍属として強制連行され命を落とした朝鮮人の遺骨を返還する「韓国出身戦没者還送遺骨追悼式」は当初、メディアと一般市民を完全に排除した形で行われる予定だった。日本政府はその理由を「遺族の要望」と伝えたが、虚偽だったことが式直後に判明した。…
祐天寺には、旧日本軍の軍人、軍属として強制連行されたアジア各地で命を落とした朝鮮人ら1135人の遺骨が安置されてきた。今回、返還された遺骨はそのうちの101人分。だが、いずれも本籍地は南。430人にのぼる北出身者には一切言及されなかった。遺族が判明している遺骨が存在するにもかかわらず、何ら通知もされなかったのだ。
2004年には、祐天寺に保管されていた北側出身のある犠牲者の遺骨が偽物であることが判明。厚生労働省が隠し持っていた名簿の「遺骨欄」には「無」と記載されており、許可なく靖国神社に合祀されていたことまで明らかになった。にもかかわらず、日本政府は遺族の入国を2度も拒否した。さらに06年には、南側出身者704人のうち7人の遺骨が他人のものであり、うち2人は生存していた事実も明らかになった。…
北海道では市民の手で遺骨が返還されることになった。いずれも遺骨発見、遺族判明から2,3年が経過したが、日本政府が一向に協力しないため、遺族の意思を尊重した。
日本政府は自国が始めた侵略と戦争に起因する問題であるにもかかわらず、軍か民間か、北か南か、日本人か朝鮮人かといったレベルで遺骨までも差別し、外交カードとして利用している。これは過去の犯罪からの責任逃れだけでなく人権蹂躙行為でもある。つまり遺骨問題は人権問題でもある。「強引な返還」の代償は大きい。>
この「遺骨返還」については一部メディアでも取り上げられたようだが、目についた人がどれほどいただろう。ジャーナリストで同志社大学教授の浅野健一氏が『朝鮮新報』に、昨日までの3週にわたって≪元徴用軍人遺骨返還≫㊤㊥㊦を連載した。これを読めば、日本政府の「“北朝鮮”による拉致問題」への異常な対応が理解できるだろう。声高に相手を批判するだけで、誠実な外交交渉を意図的に回避しているとしか思えなくなる。“コインに表裏”とよく言うが、わが国の政府は“表”だけを見せて人心を誘導するのが巧みで、世論は彼らの思いのままというしかない。
『毎日新聞』2月17日の「発言席」欄で富山国際大学藤野豊准教授が『国の加害責任隠した資料館』と題し書いている。東京都東村山市に07年4月1日、リニューアルして開館した“国立ハンセン病資料館”についてである。熊本地裁の国家賠償を命じる厳しい判決にもかかわらず、国の誤った強制隔離政策により生じた患者・回復者への差別を解消させるという目的を逸脱し、「ハンセン病患者・回復者への最大の加害者である国が、自らの責任については語らないまま、国民に向かってその差別意識を戒め説教する場」に作り変えているというのだ。加えて、「厚生省の元官僚が理事長に天下った社会福祉法人に運営を任せれば、このようなものになるのは当然」と嘆いている。
数知れぬ薬剤被害をたれ流す厚労省、いまだに「余罪」が続出している“社会保険庁”の例でわかるとおり、官僚とそれにつながる政治家どもは自己保存本能によって組織を壟断しているのだ。悪質きわまる派遣法違反で事業停止処分を受けたグッドウィル創業者折口雅博は、確信犯であるのに刑事訴追を免れ会長に居座ったままだが、一事が万事、官僚に支配されたこの国の政治に未来はないと思えてくる。「遺骨返還」行事を国民の目の届かないところでこっそり執り行おうとした厚労省の“エゲツナイ”態度も同根である。これ以上余計なことを言う必要もあるまい。次のリンクに是非目を通していただきたいと思う。
≪元徴用軍人遺骨返還≫㊤:http://www1.korea-np.co.jp/sinboj/j-2008/01/0801j0204-00001.htm
≪元徴用軍人遺骨返還≫㊥http://www1.korea-np.co.jp/sinboj/j-2008/01/0801j0212-00002.htm
≪元徴用軍人遺骨返還≫㊦http://www1.korea-np.co.jp/sinboj/j-2008/01/0801j0218-00002.htm
<■「60余年ぶり“遅すぎた”の声も 韓国から遺族招き追悼」
日本政府は22日、東京・目黒区の祐天寺で「韓国出身戦没者還送遺骨追悼式」を行い、韓半島出身の旧軍人・軍属の遺骨101体を遺族に返還した。…
04年の韓日首脳会談でノムヒョン大統領が当時の小泉純一郎首相に徴用韓国人の遺骨調査を要請して以来、これだけまとまった数の返還が実現したのは初めて。…
日本政府によれば、旧日本軍が韓半島から徴兵・徴用した兵士と軍属の総数は24万4000人。このうち2万2000人が死亡したとされる。残された遺骨は厚生省が保管してきたが、71年6月に祐天寺に預託された。今回、返還された遺骨は韓国に本籍があり、真相糾明委員会の調査で遺族の判明した288体のうちの一部。残る遺骨も順次遺族に返還される。…
■「韓国側意向?“閉ざされた式典”
今回の追悼式典に出席できたのは、当事者遺族と韓日両国政府関係者だけだった。当初はマスコミも排除されていたが、急きょ、冒頭の黙祷場面に限って写真撮影が許可された。…
「閉ざされた式典」との批判について、厚生労働省は…「韓国政府と協議した結果」だとも述べた。…韓国側は政府間協議の席上、「韓日の平和と友好のためオープンな形でやるよう一貫して主張してきた」という。…
■「やり場のない怒り噴出“望郷の丘”」
【ソウル】忠清南道天安市の国立マンヒャンエトンサン(望郷の丘)で23日、遺骨の安置に先立って奉安・追悼の式典がしめやかに執り行われた。日本からも民間徴用者の遺骨探しに奔走してきた強制動員真相究明ネットワークの関係者3人が同席した。…
日本政府を代表して出席した重家俊範駐韓大使は「過去の植民地支配で多大の損害と苦痛を与えたという歴史的事実を謙虚に受け止め、これに対し痛切な反省と心からのおわび」を表明した。大使が弔辞を読み上げている途中、遺族席からは「なぜ、これほどまでに遅くなったのか」と抗議の声が浴びせられた。>
一方、2月8日『朝鮮新報』の記事「≪祐天寺遺骨問題≫遺骨まで差別する日本政府」を見てみよう。
<■「“強引な返還”に非難の声」
…旧日本軍によって軍人、軍属として強制連行され命を落とした朝鮮人の遺骨を返還する「韓国出身戦没者還送遺骨追悼式」は当初、メディアと一般市民を完全に排除した形で行われる予定だった。日本政府はその理由を「遺族の要望」と伝えたが、虚偽だったことが式直後に判明した。…
祐天寺には、旧日本軍の軍人、軍属として強制連行されたアジア各地で命を落とした朝鮮人ら1135人の遺骨が安置されてきた。今回、返還された遺骨はそのうちの101人分。だが、いずれも本籍地は南。430人にのぼる北出身者には一切言及されなかった。遺族が判明している遺骨が存在するにもかかわらず、何ら通知もされなかったのだ。
2004年には、祐天寺に保管されていた北側出身のある犠牲者の遺骨が偽物であることが判明。厚生労働省が隠し持っていた名簿の「遺骨欄」には「無」と記載されており、許可なく靖国神社に合祀されていたことまで明らかになった。にもかかわらず、日本政府は遺族の入国を2度も拒否した。さらに06年には、南側出身者704人のうち7人の遺骨が他人のものであり、うち2人は生存していた事実も明らかになった。…
北海道では市民の手で遺骨が返還されることになった。いずれも遺骨発見、遺族判明から2,3年が経過したが、日本政府が一向に協力しないため、遺族の意思を尊重した。
日本政府は自国が始めた侵略と戦争に起因する問題であるにもかかわらず、軍か民間か、北か南か、日本人か朝鮮人かといったレベルで遺骨までも差別し、外交カードとして利用している。これは過去の犯罪からの責任逃れだけでなく人権蹂躙行為でもある。つまり遺骨問題は人権問題でもある。「強引な返還」の代償は大きい。>
この「遺骨返還」については一部メディアでも取り上げられたようだが、目についた人がどれほどいただろう。ジャーナリストで同志社大学教授の浅野健一氏が『朝鮮新報』に、昨日までの3週にわたって≪元徴用軍人遺骨返還≫㊤㊥㊦を連載した。これを読めば、日本政府の「“北朝鮮”による拉致問題」への異常な対応が理解できるだろう。声高に相手を批判するだけで、誠実な外交交渉を意図的に回避しているとしか思えなくなる。“コインに表裏”とよく言うが、わが国の政府は“表”だけを見せて人心を誘導するのが巧みで、世論は彼らの思いのままというしかない。
『毎日新聞』2月17日の「発言席」欄で富山国際大学藤野豊准教授が『国の加害責任隠した資料館』と題し書いている。東京都東村山市に07年4月1日、リニューアルして開館した“国立ハンセン病資料館”についてである。熊本地裁の国家賠償を命じる厳しい判決にもかかわらず、国の誤った強制隔離政策により生じた患者・回復者への差別を解消させるという目的を逸脱し、「ハンセン病患者・回復者への最大の加害者である国が、自らの責任については語らないまま、国民に向かってその差別意識を戒め説教する場」に作り変えているというのだ。加えて、「厚生省の元官僚が理事長に天下った社会福祉法人に運営を任せれば、このようなものになるのは当然」と嘆いている。
数知れぬ薬剤被害をたれ流す厚労省、いまだに「余罪」が続出している“社会保険庁”の例でわかるとおり、官僚とそれにつながる政治家どもは自己保存本能によって組織を壟断しているのだ。悪質きわまる派遣法違反で事業停止処分を受けたグッドウィル創業者折口雅博は、確信犯であるのに刑事訴追を免れ会長に居座ったままだが、一事が万事、官僚に支配されたこの国の政治に未来はないと思えてくる。「遺骨返還」行事を国民の目の届かないところでこっそり執り行おうとした厚労省の“エゲツナイ”態度も同根である。これ以上余計なことを言う必要もあるまい。次のリンクに是非目を通していただきたいと思う。
≪元徴用軍人遺骨返還≫㊤:http://www1.korea-np.co.jp/sinboj/j-2008/01/0801j0204-00001.htm
≪元徴用軍人遺骨返還≫㊥http://www1.korea-np.co.jp/sinboj/j-2008/01/0801j0212-00002.htm
≪元徴用軍人遺骨返還≫㊦http://www1.korea-np.co.jp/sinboj/j-2008/01/0801j0218-00002.htm