耳を洗う

世俗の汚れたことを聞いた耳を洗い清める。~『史記索隠』

“野草”に親しむ

2007-05-12 11:40:01 | Weblog
 はや立夏も過ぎて、芽立ちの旬ではなくなったが、それでも庭先のツワブキはいまだに新芽が出ていて、おりおりに戴いている。野草には思わぬ効能があって驚かされるが、ひところほとんど振り向きもされなかった野草が近年、見直されているように見受ける。この月末ころから花を咲かせるドクダミは乾燥したものを薬局でも売っているが、陰干ししたのを軒先につるす家があちこちに見かけるようになった。

 参照:「野草の植物図鑑」:http://www.d7.dion.ne.jp/~trs1997/
 ドクダミは「毒溜め」あるいは「毒痛み」が転化したものといわれるが、古くは「しぶき」といって食用にもしたという。あの臭気では食べる気はしないが、今年は庭先に生えているドクダミを採取してみようと思っている。そのドクダミだが、古人の伝えでは、竹やぶに生えるのは効能がないそうだ。なぜだか理由はわからない。ドクダミは別名を十薬とか重薬という。それほど多様な効能があるという意味だろうが、馬に用いると十種の効能があることからきたとの俗説もある。

 中国古書『本草綱目』(李時珍)には「腫れ物」「できもの」「痔疾患」によいと記され、古くから用いられていたようである。江戸期の『和漢三才図会』に、腫物で痛みがあれば葉をもんでつけ、1,2日すれば癒える、痔が腫れて痛むときは十薬一握りの煎湯を用いて洗い、葉で痔をおさえるとよい、と紹介している。これは『本草綱目』からとったものであろう。

 漢方では、肺膿瘍に魚せい(月偏に星=なまぐさい意)草桔梗湯という処方が有名。魚せい草とは十薬の中国名だが、これはドクダミの独特の臭いに由来するのだろうか。発熱、咳、腐臭のある膿痰の出る症状に良いとされる。民間療法では、疝気や血の道に根茎を陰干しにして茶の代わりに飲む用法や、蕁麻疹などのアレルギー症状、高血圧の治療にも使われ、さらに生の葉をもんで鼻に入れると鼻づまりに良く、鼻汁がどんどん出てくるという。最近では、抗カビ抗菌作用に目をつけ消毒石鹸やシロアリ駆除剤などに応用されているらしい。

 今回はドクダミだけの紹介に終ったが、先にあげた参照の「野草」など楽しいページが多いからご覧になったらいかがだろう。散策の時につい足を止めて、頭の中の「図鑑」と照合したくなるのは私だけではないと思う。

 どくだみの花に来る虫まれなればさみしき花の盛りは長し  ~春一


 参考:『面白読本・漢方』(水村義雄著/柘植書房)
    『薬草歳時記』(鈴木昶著/青蛙房)
    『漢方・鍼灸・家庭療法』(保健同人社)