耳を洗う

世俗の汚れたことを聞いた耳を洗い清める。~『史記索隠』

長崎市長、テロで倒れる

2007-04-19 10:59:25 | Weblog
 選挙戦の最中の17日午後8時前、伊藤一長長崎市長(61)は選挙運動を終えて事務所に帰り着く所を暴漢に襲われ亡くなった。全く許し難いことだ。1990年1月、本島等前市長が右翼に襲われ重傷を負ったが、長崎にとっては誠に理不尽で言語道断の再発事件である。現在の警察報道によれば、犯行の原因は市に対する「私恨」とされており、本島前市長が「天皇の戦争責任」発言で右翼の襲撃を受けたこととは事情が異なるようだが、果してどうだろうか。

 犯人は道路工事現場における自家用車の破損をめぐって30回も市役所に苦情を言っていたといい、さらには関係する会社の公共工事をめぐって不満を漏らしていたとも報じられている。しかし、それは数年前のことで、今回の事件との結びつきは考えにくいと関係者は言っている。伊藤一長市長は、当初はそれほどでもなかった「被爆者問題」や「核問題」を、近年、秋葉広島市長とともに世界に向けて熱心にアピールし続けていた。一方、安部首相や自民党の中川政調会長らは公然とわが国の「核武装」を唱え、さらにはNHKの「戦争犯罪」報道に圧力を加えるという暴挙を行なっていた。政府・与党責任者のこうした言動が平和を求める勢力を脅かす結果になっていたのは否定できない。これらの動向が今回の事件と全く関係がないかどうか、良識ある国民はあらためて危惧の念を深くしているのではあるまいか。というのも大方の市民は、報道される「私恨」ぐらいでこんな重大な犯行が果して実行されるものだろうかと不審に思っているからだ。捜査当局は一刻も早く真相を究明し、国民に包み隠さず真実を明らかにすべきである。

 今回の犯人はれっきとした暴力団幹部である。当然、警察の責任が問われなければならない。警察は右翼や暴力団には「甘い」との風評をよく耳にするが、私の身近で起こった次の事件をみても、どうもウソとは思えない。

 昨年7月10日、かつて勤務していた造船所の門前で「ビラ配布」をしていた共産党の活動家M君(定年退職したばかり)が逮捕された。造船所構内での死亡事故を告発するビラで、会社が警察に通報したためという。罪状は「公道での無許可のビラ配布は、道路交通法違反」という誠に人を食った話である。パトカーが4台、警官7~8人が出動するという物々しい逮捕劇で、彼は3日間こう留された。私もかつてこの造船所に勤務していて、M君とは党派に関係なく「反執行部」の立場でともに闘った仲間だ。M君から詳しい話を聞いて、世の中いよいよおかしくなったと痛感した。

 確たる法的根拠もなく、何の実害もない民主主義社会では当然の行動を大挙した警察権力で不当にも威圧し、しかも逮捕こう留までしながら、今回長崎で起きた事件の背景と言われる暴力団員の不当な要求、いやがらせに、なぜ市当局ないし警察は事前に適切な対応をしなかったのか。近年、「ビラ配布」逮捕事件があちこちで起きていてM君の事件は珍しいことではなく、警察、とくに公安の動きが戦前に戻りつつあると感じるのは私だけではあるまい。心身ともに衰えていくばかりのわが身を憂いながら、この国の行く末が案じられてならない。


 参考:「きっこのブログ」の“長崎宣言http://kikko.cocolog-nifty.com/kikko/2007/04/post_082e.html