高野山教報で、以前紹介されていた、高野山の「天狗伝説」です。
(うる覚えなので・・・全体だけ、かいつまんで紹介します)
ある時代のこと、
ある修行僧が朝顔を洗って、鏡を見ると・・・
「自分の姿が映りません」。
「とうとう俺も、天狗になったか・・・」
天狗には、死後、天狗に成る場合と、
生きたまま天狗になる場合とがあると聞きます。
その僧侶は生きたまま天狗になったパターンです。
(生きたまま天狗になる場合、自分の姿が鏡に映らない・・・と言うものがあるとか)
鏡に映らないとは、他人様から自分の姿が見えなくなることを意味します。
がっかりする修行僧・・・すると、傍に複数の天狗たちが見えてきました。
「お前も天狗界の住人になったな。そうがっかりするな。最初は戸惑うことも多いが、これで良いことの方が多い。空は自在に飛べるし、なにしろ不死身だから死ぬことがない」と、先達の天狗が言いました。
「だが、いくつか気をつけなければならない。不死身の天狗でも消滅することがある。天狗の吐く息は猛烈に強い。が、最後の一息を吐ききったら、不死身の天狗でも消滅してしまう。そこを注意したら、不死身の天狗界の住民だ」
天狗になった修行僧は、先達の天狗たちと天狗界の中で生きていました。
ある時、火事が起き、高野山の山々を焼き尽くしていきます。
僧俗合わせて、高野山の伽藍が火災に見舞われないよう頑張りますが、
運悪く火勢は、高野山の主要な伽藍の方に向かってきます。
天狗になった修行僧は、天狗の団扇で風を起こし、火勢が伽藍に来ないよう頑張りますが、火勢は徐々に高野山の建物に迫ってきます。
天狗は、「天狗の猛気の吐息」で火勢を消そうと猛烈な息を吐きだします。
火勢はそがれますが、それでもまだ伽藍に迫ってきます。
(天狗の最後の一息だけは、吐き出してはならんぞ。不死身の天狗と言えど、最後の一息を吐きだしたら、消滅してしまう。くれぐれも注意しろよ)
修行僧の天狗に迷いはありませんでした。
迫ってくる火勢から高野山を守るために・・・
「最後の猛気」を吐き出します。
さしものも猛火も、天狗の猛気に負け、
風向きが変わり、
高野山の伽藍は守られたのでした。
修行僧の天狗は消滅し、
大きな一枚の金色 (こんじき) の羽が落ちていたのでした。
・・・・・