■口頭試験真っ只中,来年度受験予定の皆さん,如何お過ごしでしょうか ^^;
刻々と試験日が迫っています!
な~んて冗談ですよ!(^^ゞ.
■さて,公共事業のあり方が問われている【諫早湾問題】の判決があった.
総監の視点から少し考えてみたい.
まず,最初に考えたことは,経済性管理と社会環境管理,そして安全管理のトレードオフ問題ということだ.
この問題は,国民生活や公益に与える影響が計り知れない.
簡単に論じることは避けたいが,冷静になって技術者の一人として考えてみたい.
しかし,一技術者が考えてみたところで解決できるような問題ではない.
ただ,問題解決の方向性について考えるみることは,総監受験予定者としては有益ではないだろうか.
★以下,朝日新聞の社説から引用します.
――――――――――――――――以下,引用開始―――――――――――――――
諫早湾干拓―開門を決断するときだ
福岡、佐賀、長崎、熊本の4県に囲まれた有明海。その一角にある諫早湾の干潟をつぶしてできた農林水産省の干拓事業が大きな岐路を迎えた。
干拓地をつくるために諫早湾を堤防で閉ざしたことと、魚やエビの水揚げが減ったことには因果関係が認められる。閉め切ったままにするのは違法だから、準備の後にとりあえず5年間、排水門を開くようにと、福岡高裁が命じた。
国営諫早湾干拓事業は菅直人首相にとって、無駄な公共事業批判の原点である。「ギロチン」と呼ばれた1997年の潮受け堤防の閉め切り以降、菅氏は再三、現地入りして、この事業を「走り出したら止まらない公共事業の典型」と訴えてきた。
しかも、開門は民主党の2009年の政策集にも載った。今年4月には与党と農水省の検討委員会が、開門調査が適当との報告書を、当時の赤松広隆農水相に提出した。赤松農水相もその意向を示していた。
いまこそ、開門に向けて動き出すため、菅首相自らが積極的に政治決断するときだ。一昨年、開門を命じた佐賀地裁判決に続く2連敗である。大局を考えれば、政府が上告するという選択はもはやないだろう。
農水省は地裁判決に対し「開門は困難」として控訴していた。いま、開門するかどうかを判断する環境影響評価(アセスメント)を進めている。
一方、干拓地や周辺で農業を営む人たちは、開門すれば堤防の内側にある淡水の調整池に海水が入って農業用水に使えなくなる、塩害などの被害も生じかねない、と反対してきた。
たしかに、干拓農地672ヘクタールに41の個人・法人が入植。08年4月から営農活動が本格化し、ジャガイモやタマネギなど約30種類が生産されている。
だが、今回の判決は農業用水の代替水源を確保できるのではないかと述べた。塩害の主張についても、農水省による客観的な資料に基づく立証がないと指摘した。
鳥取・島根両県の中海干拓地は、淡水化事業が中止になった後、「簡易ため池」を設けて営農が支障なく行われた。原告はこの事実をあげ、同じく畑作をしている諫早湾干拓地も「農業用水はまったく問題ない」という。
判決は常時開門に向けた改修などの期間として3年間の猶予を与えた。だが、農水省は02年にアセスせずに1カ月間の短期開門調査をした。その際にとった水門の底部だけを開ける方法ならば、いまの水門の構造のままでできると農水省も認めている。
高潮の恐れがあるような天候など、防災に必要なときは、判決がいうように状況に応じて閉めればいい。対立してきた漁業者と農業者が共存できる道を、政府は目指すときである。
(朝日新聞社 平成22年12月7日付け)
――――――――――――――――以上,引用終了―――――――――――――――
■漁業者と営農者,どちらの利益を優先すべきなのか!
もちろん,どちらの利益も確保されなければならない.
難しいトレードオフ問題だ.
漁業者の利益を優先すれば,営農者は不利益を被る.
その逆もまた然りである.
これは【国営事業】がもたらした悲しい結末でもある.
漁業者と営農者,両者の共存共栄が最適解だということは明確だ.
■問題解決の最も簡単な方法は,閉門前の状態に戻すことだ.
しかし,現実はそう甘くはない.
なぜなら,いまの土地利用状況がそれを許さないからだ.
当時と現在とでは,環境が変化している.
莫大なコストを投資しても解決できる問題ではない.
しかしながら,コストと時間を掛けなければ,解決の糸口が見つからないことも事実である.
開門した際のあらゆるリスクを想定しなければならない.
そして,リスクの保有,低減,回避,移転,監視,これらのリスク対策を講じることは当然のことである.
開門に関する環境影響評価の結果を待つことが妥当であろう.
それから,すべてのステークホルダーが妥協できる方策を真剣に議論することが肝要だと考える.
■何れにせよ,国は【閉門は違法】と二度にわたり指摘されたわけだ.
国は,裁判の結果を真摯に受け止め,【開門実施】に向けた決断を迫られていることは確かだ.
その決断が問題解決に向けた新たなスタートになる.
★皆さんはどう考えますか?
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■さて,公共事業のあり方が問われている【諫早湾問題】の判決があった.
総監の視点から少し考えてみたい.
まず,最初に考えたことは,経済性管理と社会環境管理,そして安全管理のトレードオフ問題ということだ.
この問題は,国民生活や公益に与える影響が計り知れない.
簡単に論じることは避けたいが,冷静になって技術者の一人として考えてみたい.
しかし,一技術者が考えてみたところで解決できるような問題ではない.
ただ,問題解決の方向性について考えるみることは,総監受験予定者としては有益ではないだろうか.
★以下,朝日新聞の社説から引用します.
――――――――――――――――以下,引用開始―――――――――――――――
諫早湾干拓―開門を決断するときだ
福岡、佐賀、長崎、熊本の4県に囲まれた有明海。その一角にある諫早湾の干潟をつぶしてできた農林水産省の干拓事業が大きな岐路を迎えた。
干拓地をつくるために諫早湾を堤防で閉ざしたことと、魚やエビの水揚げが減ったことには因果関係が認められる。閉め切ったままにするのは違法だから、準備の後にとりあえず5年間、排水門を開くようにと、福岡高裁が命じた。
国営諫早湾干拓事業は菅直人首相にとって、無駄な公共事業批判の原点である。「ギロチン」と呼ばれた1997年の潮受け堤防の閉め切り以降、菅氏は再三、現地入りして、この事業を「走り出したら止まらない公共事業の典型」と訴えてきた。
しかも、開門は民主党の2009年の政策集にも載った。今年4月には与党と農水省の検討委員会が、開門調査が適当との報告書を、当時の赤松広隆農水相に提出した。赤松農水相もその意向を示していた。
いまこそ、開門に向けて動き出すため、菅首相自らが積極的に政治決断するときだ。一昨年、開門を命じた佐賀地裁判決に続く2連敗である。大局を考えれば、政府が上告するという選択はもはやないだろう。
農水省は地裁判決に対し「開門は困難」として控訴していた。いま、開門するかどうかを判断する環境影響評価(アセスメント)を進めている。
一方、干拓地や周辺で農業を営む人たちは、開門すれば堤防の内側にある淡水の調整池に海水が入って農業用水に使えなくなる、塩害などの被害も生じかねない、と反対してきた。
たしかに、干拓農地672ヘクタールに41の個人・法人が入植。08年4月から営農活動が本格化し、ジャガイモやタマネギなど約30種類が生産されている。
だが、今回の判決は農業用水の代替水源を確保できるのではないかと述べた。塩害の主張についても、農水省による客観的な資料に基づく立証がないと指摘した。
鳥取・島根両県の中海干拓地は、淡水化事業が中止になった後、「簡易ため池」を設けて営農が支障なく行われた。原告はこの事実をあげ、同じく畑作をしている諫早湾干拓地も「農業用水はまったく問題ない」という。
判決は常時開門に向けた改修などの期間として3年間の猶予を与えた。だが、農水省は02年にアセスせずに1カ月間の短期開門調査をした。その際にとった水門の底部だけを開ける方法ならば、いまの水門の構造のままでできると農水省も認めている。
高潮の恐れがあるような天候など、防災に必要なときは、判決がいうように状況に応じて閉めればいい。対立してきた漁業者と農業者が共存できる道を、政府は目指すときである。
(朝日新聞社 平成22年12月7日付け)
――――――――――――――――以上,引用終了―――――――――――――――
■漁業者と営農者,どちらの利益を優先すべきなのか!
もちろん,どちらの利益も確保されなければならない.
難しいトレードオフ問題だ.
漁業者の利益を優先すれば,営農者は不利益を被る.
その逆もまた然りである.
これは【国営事業】がもたらした悲しい結末でもある.
漁業者と営農者,両者の共存共栄が最適解だということは明確だ.
■問題解決の最も簡単な方法は,閉門前の状態に戻すことだ.
しかし,現実はそう甘くはない.
なぜなら,いまの土地利用状況がそれを許さないからだ.
当時と現在とでは,環境が変化している.
莫大なコストを投資しても解決できる問題ではない.
しかしながら,コストと時間を掛けなければ,解決の糸口が見つからないことも事実である.
開門した際のあらゆるリスクを想定しなければならない.
そして,リスクの保有,低減,回避,移転,監視,これらのリスク対策を講じることは当然のことである.
開門に関する環境影響評価の結果を待つことが妥当であろう.
それから,すべてのステークホルダーが妥協できる方策を真剣に議論することが肝要だと考える.
■何れにせよ,国は【閉門は違法】と二度にわたり指摘されたわけだ.
国は,裁判の結果を真摯に受け止め,【開門実施】に向けた決断を迫られていることは確かだ.
その決断が問題解決に向けた新たなスタートになる.
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