稲城の図書館サポーターみんなのとしょかん Neo

東京都稲城市で「市民の力になる図書館」の発展をめざして活動している市民グループです。

学校図書館システム 導入にあたってのABCーその4

2020-10-25 15:27:17 | ご存知ですか?
4 システムを支えるのは専門性を備えた「人」です!

これまで何度か「システムは道具」というお話をしてきました。
その道具を導入し、維持管理して児童生徒や先生方がいつでも使えるようにするには、専門性を備えた人材が欠かせません。

〈書誌〉
システム導入には、学校図書館にあるすべての図書をシステムに登録しなければなりません。
その際には図書とそれに対応する書誌をきちんと確認する必要があります。
現在販売されている図書にはISBNといって図書の識別番号がついていますので、比較的簡単に確認ができますが、古い本や教育委員会や政府の刊行物など、ISBNのないものもあります。
それらについては国会図書館や都立図書館などで書誌がないか確認し、見つからなければ新たに書誌を作る必要があります。

〈所蔵情報〉
本がどこに置かれているかを示すのが所蔵情報です。
学校図書館の中だけに配置されている学校もあれば、学校のあちこちに書架が分散している学校、本の種類によっては職員室に置かれていることもありますね。
そうした情報を整理して決まりを作り、本一冊一冊に所蔵情報をリンクさせていきます。

〈貸出管理〉
システムを導入することで、非常に管理がしやすくなるのが、貸出管理です。
ただこれには思わぬ落とし穴が潜んでいます。
それが“ヒューマンエラー”
本を貸し出す際に、本に貼付されているバーコードシールをハンディターミナルで読み込んで処理をしますが、「読み込んだのに読み込めていなかった」とか、複数の本を処理して「読み込むのを忘れた」とか「時間がないので後で処理するつもりだった」など、人間は必ず間違いを起こします。
こうしたときに経験のある人材がいれば、原因を推定し、誤りを正すことができるのです。

〈整架〉
「システムではAという書架にあると表示されているのに見つからない!」
最も多い利用者の苦情はこれかも知れません。
この原因は上記のヒューマンエラーのほかに、本が本来あるべき場所に戻っていないことがあります。
特に学校図書館では短い休み時間に本を眺めていた子どもが、「あ、もう授業時間だ!」と慌てて適当な場所に置いたり、放り出していってしまったりということがよくあります。
システムを入れても、本そのものを所定の位置に戻す機能はありませんから、人の手で戻さなくてはなりません。
また、返却された本は、本来の書架の情報が表示されますが、返却本を所定の位置に戻すのはやはり人の手です。
こうした作業を〈整架〉と呼びます。
みんなが利用できるように、見えないところで学校図書館では司書資格をもった活性化推進員がこまめに本を整えているのです

〈学校図書館活性化推進員(学校司書)の役割〉
稲城では市内公立小中学校すべてに学校図書館活性化推進員を配置しています。
読み聞かせをしたり、本の相談に乗ったり、本の貸出返却・予約をしたり、図書館の利用方法についてガイダンスをしたり、といった利用者の目に見える仕事だけでなく、図書館を支える様々な役割を果たすのが活性化推進員(学校司書)なのです。

みんとはシステム導入にあたって、その検討段階から活性化推進員を加えるのがベターだと考えます。なぜならシステム導入から日常管理・保守まで、すべての過程に関与するのが活性化推進員だからです。彼らが仕事を進めやすいシステムは、無駄な作業(=コスト)が少なく、利用しやすいシステムにつながるのです。

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学校図書館システム 導入にあたってのABCーその3

2020-10-17 15:27:27 | ご存知ですか?
3 書誌「MARC」の統一

前回は、学校図書館システムの選択では、将来的なネットワーク展開を見据え、クラウド型をお勧めしました。

さて今日は「書誌」のお話しです。
「書誌」(英: bibliography)とは、本を探すための書誌事項(書誌情報)を記載したものです。
著者名や、書名、発行元、発行年、ISBN、DOI、全国書誌番号、図書分類などが記述されます。

本を探すための情報ですから、学校図書館の調べ学習には、とても重要な要素です。
なぜなら、書誌に記述されていない情報は、検索してもヒットしないからです。

昔はこの書誌を記述できることが司書の重要な仕事であり能力とされていました。
もちろん、現代の司書もその能力は備えていますが、仕事としての重要性は低くなってしまいました。
原因はMARCの登場とも言えます。
はぁ?マークってなんのマーク???
図書館関係者でなければほとんど知らない用語ですが、現代の図書館ではとっても重要!
マークとは、機械可読目録(MARC、MAchine-Readable Cataloging)のこと。
現代の図書館は、ほとんどがコンピュータによる図書館システムを採用していますから、先ほどの書誌もMARCとしてコンピュータに登録されるわけです。

現在販売を前提とした出版物は、出版と同時にMARCが流通します。
みなさんもインターネットで本を検索すると、いろいろなサイトでヒットしますよね。
そのデータもMARCの一種で、サイトごとに微妙に違うのです。
MARCは販売もされていますし、無料提供されるものもあります。
日本最大の図書館である国立国会図書館では、JAPAN/MARCという書誌を作成しており、書誌情報提供サービスも展開しています。
つまり、現代においては、書誌はもはや作成するものではなく、購入または導入するものなのです。

ここで重要になってくるのが本日タイトルに掲げた”書誌「MARC」の統一”

例えば市内の各学校でバラバラにMARCを導入すると、様々なタイプの書誌がシステムに登録されます。
将来「さぁネットワーク化しましょう!」という時にはこれが大変な障害になります。
それは、同じ本について微妙に違う複数の書誌ができてしまうためです。
ネットワーク化する際には、書誌データと、どこの学校が所蔵しているかという所蔵データをリンクさせるのですが、複数のタイプの書誌が混在していると、じゃあどれがほんとなの?どれを残すの?ホントに同じ本なの?といった特定作業をすべての本についてやり直さなければならないのです。
つまり、MARCの統一を先にやっておけば、将来無駄な作業をしなくて済むわけです。

みんとでは、調べ学習が様々な情報を検索する必要があることから、国会図書館の提供するJAPAN/MARCを推奨します。
例えば、筑摩書房が出版している日本文学全集を例にしてみましょう。
第3巻は宮沢賢治です。

稲城市立図書館が提供している書誌はこちらです。
タイトル ちくま日本文学全集 003
タイトルカナ チクマ ニホン ブンガク ゼンシユウ
著者 宮沢 賢治 /著
著者カナ ミヤザワ ケンジ
出版者 筑摩書房
出版年 1991
ページ数 477P
大きさ 16
ISBN 4-480-10203-5


国会図書館が提供している書誌はこちらです。
国会図書館サーチ

違いがわかりますか?
そう、国会図書館の書誌は、宮澤賢治のどの作品が収録されているか、その内容まで記述されているのです。

調べ学習の際、教科書に載っている作品が全集に入っているかどうか知りたい場合、稲城市立図書館のデータでは確かめることができません。
これはとても大きな違いです。
図書館システム導入にあたっては、将来的な展開を見据えた、「賢い」選択が必要なのです
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学校図書館システム 導入にあたってのABCーその2

2020-10-11 14:54:25 | ご存知ですか?
1 学校図書館システム導入で実現する将来像

まず初めに学校図書館システムの導入によって。どんな将来像を実現しようとしているかを検討しましょう。
システムは道具ですから、どんなことを実現したいかによってどのようなシステムを入れるかが変わってきます。

みんとでは、こんな姿を思い描いています。
1)各学校で所蔵している図書・雑誌を、子どもたちや先生方が学校内の端末や自宅から検索し、利用や貸し出し予約をすることができる。
2)学校にない本は、他校または市立図書館の所蔵図書を、子どもたちや先生方が学校内の端末や自宅から検索し、利用や貸し出し予約をすることができる。
(図書等の管理については各社ほぼ同一機能を実現しているので、利用に限定した条件を考えています。)
これを実現するためには、どんなシステムが必要なのでしょう?

2 インターネット検索が可能なシステムを選ぶ

上記のうち「自宅から検索」を可能にするためには、インターネットによる検索が可能なシステムを選定しなければなりません。
従来は、インターネット環境を構築することがかなりのハードルでした。
しかし、新型コロナ感染症対策による休校措置の経験から、教育におけるICT環境は劇的に改善されつつあります。

また、システム供給の状況も変化してきています。
図書館システムには大きく分けて、スタンドアローン型、クライアント・サーバ型、クラウド型の3つがあります。
スタンドアローン型は、パソコン一台にシステムを入れ、外部とは一切接続しない方式。
クライアント・サーバ型は、管理システムをサーバーPCに搭載し、クライアントPCから利用する方式。クライアントとサーバは、ローカルエリアネットワークで接続されます。
クラウド型とは、サーバをインターネット上に業者が用意するデータセンターに置き、インターネットで学校図書館に設置するPCと結んで利用します。
(ASP方式という呼び方もあります。ASPとはアプリケーション・サービス・プロバイダの頭文字。ソフトウェアを実行するためのプログラムデータをインターネット上のクラウドに置き、インターネット回線を通じてプログラムデータにアクセスして、ソフトウェアを利用できるようにした仕組みのことです。)

従来は経費の点でスタンドアローン型が圧倒的に安かったのですが、スタンドアローン型ではインターネット経由の外部からの検索はできません。
クライアント・サーバ型では複数のPCを用意する必要がありますが、管理PCと利用PCを分けることができるので、例えば児童・生徒の名簿など管理すべき個人情報の保護など有利な点があります。しかしインターネットでの検索となると話は別です。
利用PCには通常台数制限がありますから、児童生徒数分のPCというのは無理ですね。
そこへ行くとクラウド型はサーバもシステムアプリケーションもすべて業者が管理するので、サーバの管理も必要なく、かつ最初からインターネット上に展開しているため、外部からの検索も実現しやすいのが特徴です。
近年製品提供価格もリーズナブルになっており、みんとの将来像を実現するにはベターアンサーではないかと考えます。

そこでみんとは、もし経費的にスタンドアローン型を選ぶとしても、クラウドへの展開が可能な製品を選択することを提案します。

千葉県市原市では、図書館システムを初めて導入するにあたってクラウド型を選択し、市内全65校の学校図書館と市立図書館のネットワーク化し、学校図書館に子どもたちがあふれるという成果を生み出しています。
未導入であればこそ、ベストな展開を採用することができるのです。
千葉県市原市教育委員会導入事例(富士通サイト)


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学校図書館システム 導入にあたってのABCーその1

2020-10-04 14:02:24 | ご存知ですか?
学校図書館のシステム化と一口にいっても、導入にはどんなことを検討すればいいのでしょうか?
経費もかかることですから、トライアル&エラーではなくて、効率の良い方法があるなら採用したいですね。

例えば8月30日の記事で、稲城市の学校図書館では、システム導入の準備として図書へのバーコードシール貼付が行われていることをご紹介しました。
ただ、シール貼付は手間はかかるのですが、それほど検討すべき要素はありません。
それではどんなことに気を付けるべきなのでしょう?

実は何らかの形で所蔵図書をデータベース化している学校は、すでに2016年の段階で全国の小中高校で7割に達しています。
平成28年文部科学省児童生徒課調査「学校図書館の現状に関する調査」
そのうち電子データベース(≒システム)を使って図書の貸出や返却までを行っている学校は85%(全体の約66%)に上っています。
これら多くのシステム導入事例を見ていくと、導入にあたってはいくつかの重要なポイントがあることがわかるのです。

ちょうど昨年2019年8月に雑誌『学校図書館』に「特集 学校図書館管理システムを選ぶために」というまさにどんぴしゃりな記事が掲載されています。
その内容を何回かにわたってご紹介していきたいと思います。
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