「影の爪」

「ニッポン・ノワールⅡ」

「影の爪」1972年　松竹　監督：貞永方久

事故をきっかけにセレブ夫婦の家に入り込んだ女と老母が、平和な家庭を恐怖のどん底に突き落とす。妻・香山美子と、その座を乗っ取ろうとする悪女・岩下志麻のバトルが凄いホラー・サスペンス。原作は神代辰巳によってドラマ化もされている。



和製ローズマリーの赤ちゃん的な。
加害者と被害者が同居するという異常な状況下、探っていく真相は事実なのか妄想なのか。美人若妻が徐々に疲弊し精神に破綻を来すストーリーは面白くないわけがなく、香山美子ベストアクト。風呂場で死にかける辺りから凄い。



岩下志麻と鈴木光枝の品のあるノアールぶりも特異で良い。特に岩下志麻の喫煙と濡れ場はゾクゾクする。もう少し誘惑の匂いがあると良かったが。あれでは井上孝雄が助平なだけだ。
二人の結末もそれまでのドキドキがあるだけに安易で呆気なく少し不満が残るが、それは贅沢というものか。



褪色したフィルム。血しぶきや白ペンキの描写が光るであろうニュープリント上映あれば再見しても良い。否、意外と褪色効果というものもあるかもしれない。



香山美子のPaint it White

シネマヴェーラ渋谷