訃報 ドカベン香川伸行さん

ドカベン香川伸行さん急死　52歳心筋梗塞

浪商（大阪、現大体大浪商）、南海、ダイエーで活躍し「ドカベン」の愛称で親しまれた香川伸行（かがわ・のぶゆき）氏が26日午後、心筋梗塞のため福岡県朝倉市の甘木中央病院で急死した。52歳。徳島県出身。葬儀等の日程は未定。同県朝倉郡の自宅で倒れているところを家族が発見。救急搬送されたが帰らぬ人となった。
（日刊スポーツ）

人懐こい野球少年＝付きまとった「体重」―故・香川伸行さん

ドカベンこと香川伸行さんが亡くなった。体調を崩していたとはいえ、52歳は早過ぎる。

牛島和彦投手とのバッテリーで甲子園を沸かせた野球センスと人気を評価し、南海がドラフト2位で指名。プロでも打撃には天才的なところを見せた。バットコントロールがうまく、4年目の1983年には規定打席未満ながら打率3割1分3厘、15本塁打でベストナインに。足は遅いが走塁の勘が良く、この年には5盗塁も記録した。

捕手としては肩が弱く、リードには個性があって投手によって評価が違ったが、ボールをストライクに見せる「ずるさ」などにセンスがのぞいた。

しかし何と言っても、話題になったのは太り過ぎを指摘された体重。本人も多少は気にして、キャンプで宿舎から球場までチームのバスに乗らずに歩いたこともあるが、体重の話になると「痩せて成績が落ちたら、誰が責任取ってくれるんや」が口癖だった。

87年オフには、高校時代90キロ台だった体重が130キロを超え、杉浦忠監督（当時）が「選手生命以前に人間としての命にかかわる」と心配するほどに。原因の一つが買い食いだといわれ、誘惑に負けないよう、入院して食事制限とトレーニングで減量を始めた。

球団が減った体重に応じてボーナスを出すというので、記者が100グラム当たりの金額を計算し、翌日のスポーツ各紙に大見出しがずらり。プールに現れた香川さんは「グラムいくらって…、俺はブタかあ」とブツブツ言いながら、水に飛び込んでいった。

体重は20キロほど減ったが、88年は成績も落ちている。結局、体重と野球の関係は分からずじまいだった。誰より本人が自分に合った体と技術をもっと突き詰めていれば、違う野球人生になったかもしれない。

人懐こさとプライドが同居し、野球少年のままのような現役時代。ユーモラスな動きとあどけない笑顔は、80年代南海の一つの「顔」だった。閑古鳥の鳴く観客席でオールドファンが見守る大阪球場のグラウンドが、よく似合っていた。　
（時事通信）



ご冥福をお祈りいたします。