JOEは来ず・・・ (旧Mr.Bation)

なんの役にも立たない事を只管シコシコと

映画 「競輪上人行状記」

2007-11-08 | 映画(DVD)
この映画は一度テレビ放映された時に観た。当時少しばかり競輪に入れあげていただけに衝撃は強く、以来、自分の中では邦画の10本に必ず入れる傑作という事になっている。
その「競輪上人行状記」、そうそう、この映画は後ににっかつで団地妻や団鬼六作品を多数撮った西村昭五郎監督の監督劇場デビュー作でもあるんです。

今回のシネマアートン下北沢は「はじまりの時」と題し「12監督厳選、劇場デビュー作集」です。

「競輪上人行状記」1963年日活 監督:西村昭五郎
原作は寺内大吉で脚本に大西信行、今村昌平・・・

本来の仏教の道からはずれ葬式営業で生計を立てる実家の寺を継ぐのが嫌で中学教師になった春道(小沢昭一)は正義感に熱く教師としての理想も高い男。寺を継ぐ長兄の死により夏休みの間実家に戻り経を読み手伝ううちに父(加藤嘉)が勝手に中学に辞表を出してしまう。寺再建費用集金もままならないある日、松戸競輪に寄ってみると大穴を的中し、元来真面目な男の人生が狂ってくる・・・

自分の高い理想にどうにもカラ回りし続ける。堅物だけに転落ぶりは見事。
ただ、単にギャンブルで身を持ち崩す男の物語では終わらない。
まだまだ昭和30年代、貧困は多く、問題を抱える教え子は義父の子を身ごもってしまう。家庭訪問帰りに同僚から「お前は本当の貧しさを解っちゃいない」と言われる。
競輪で寺再建資金を使い込む春道に父は「競輪はそんなに面白いか、昔は悩んだり迷ったりする人が寺に駆け込んだが、今は競輪場に駆け込んでいるのだな」と説教したり、この寺も貧しくって犬の葬式を受けて犬肉を飲み屋に卸し、犬寺と馬鹿にされていたり・・・

エロもあります。兄嫁役(南田洋子)が良い。
亭主の通夜の晩の妄想、仏となった亭主から喪服の上を鞭で打たれる「許して・・・、もっとぶって!」実はこのS亭主は子種が無く、兄嫁は寺の後継をと乞われて義父(加藤嘉)と関係を持ち子を産んでいる。
加藤嘉と南田の濡れ場も、ジジイの責めに耐える嫁。

もちろんギャンブルの描写がスリリングで血が踊る。
当時の松戸競輪場、花月園競輪場、(周囲の様子が全く違う)場の立看板。
オケラになって落ちていた100円札をギャンブル婆と奪い合い強奪、窓口へ走る。
トリスあたりのポケット壜で酔って、予想屋に「当たらねぇじゃねぇか」とアヤつけて逆に袋叩きに合う「おめぇなんかの来る所じゃ無ぇ!」
葬儀屋の色川(やっぱり競輪好きは色川さん?)がまた良いのです。
競輪場で会った春道に「こんな所に来ちゃ行けませんね」と寄る。
ノミ屋を紹介する「この人も好きなんで」
遺族と初七日、四十九日の打ち合わせ中、公衆電話でレース結果を聞き春道に
「○○から○○に入って1200円付けました」と耳打ち。

しかし、ギャンブラーの描写の頂点は渡辺美佐子。
春道、最後の男の勝負に隣に居合わせた女。
他のレースに手を出さないよう自分の体をロープで座席に結び付けている。
春道と女の目当てのレースは7レース。
春道は2-4に30万1本勝負、女も有り金4-2に1本勝負の様子。
レースは2=4の写真判定。
座席に頭を凭れ「負けたくないわ」と渡辺美佐子。化粧っ気の無い壮絶な表情が美しい。
しかし、2-4で春道は大儲け、女はオケラ。
自分の運を持って行った男として騙し心中に巻き込もうとするが毒入りシュースを春道が落とし「この人、どこまでもツイてる・・・」自分だけ毒を呷り死ぬ。

このあたりはもう阿佐田哲也の世界。ワクワクします。

やがて、教え子の娘を連れて競輪上人となり各地の競輪場で予想屋。
「お前達、迷うな!車券が外れる事を恐れるな!勝負の時は1本で!」喚く競輪上人のダミ声がお遊びで競輪をかじりチンタラ取られていた身に突き刺さる。それでも何だかとても爽快。
久し振りに見たがやっぱり凄い映画でした。DVDにならんのか!

さて、競輪から足を洗って10年以上、「いづれ老後には100円玉を握り締め競輪場へ」なんて真面目に思ったもんだか、そんな素敵な老後は来そうにありません。第一それまで競輪が様代わりせず(もう随分様変わりしているが)あるのか心配。
老後の競輪とストリップ通い、夢だったんだけどなぁ。

にほんブログ村 映画ブログへ

競輪ネタ能島廉「競輪必勝法」


コメント (8)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« DVD 「ナイト ミュージアム」 | トップ | 奇獣 ガンQ(コードNo.01)たん »
最新の画像もっと見る

8 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (なべら)
2007-11-13 11:37:31
私のブログにお越しくださり、どうもありがとうございました。
詳しいレビュー、楽しく読ませていただきました。競輪のシーンのスリリングさはたまりませんね。ラストシーンの口上も最高に面白かったです。エキサイティングな映画でした。
ところで、もしよろしければブログにリンクを張らせていただけませんでしょうか?よろしくお願いします。
返信する
なべら様 (imapon)
2007-11-14 00:16:52
早速のTB&コメント返しありがとうございます。
映画は関心はあったものの劇場に足を運ぶ事は少なかったのですが、ここ2年ほどトチ狂っています。知識もないのにマイナー指向で・・・
こんな場所でもよろしいですか?
ブログリンクしていただければ光栄です。
返信する
リンクしました! (なべら)
2007-11-14 11:49:25
こんにちは。
ブログ、リンクさせていただきました。こちらこそ、よろしくお願いします
返信する
リンク (imapon)
2007-11-17 17:39:32
なべらさん、ありがとうございます。
私の方もリンクします。もう暫くお待ち下さい。
返信する
Unknown (やまもと)
2013-02-26 16:39:41
はじめまして
ついにDVD化ですね。大昔夜中にやったのを録画したテープしかなかったので即注文しました。
返信する
Unknown (imapon)
2013-02-27 23:02:12
やまもと様、はじめまして。コメント感謝。
ついにDVD化されましたか。
最近はDVDソフトをあまり買わなくなりまそたが、こいつは持っていて損はない。持っていたい作品ですね。
返信する
Unknown (マクリヤ)
2015-05-07 22:33:41
まだまだ1本勝負で出来るレースはありますよ。競輪は
返信する
Unknown (imapon)
2015-05-08 00:03:11
マクリヤさんコメントありがとうございました。

たまにスポーツ紙で出走表を見ていますが、知っている選手がどんどん居なくなって・・・
通っていたのは滝沢正光全盛時ですから。
返信する

コメントを投稿

映画(DVD)」カテゴリの最新記事