JOEは来ず・・・ (旧Mr.Bation)

なんの役にも立たない事を只管シコシコと

映画 「今夜、列車は走る」

2008-04-29 | 映画(DVD)
「今夜、列車は走る」2004年 アルゼンチン 監督:ニコラス・トゥオッツォ

鉄道を中心に栄えたアルゼンチンの小さな町。民営化の波が押し寄せ、ある日突然、路線の廃止が通達される。交渉に臨んでいた組合長は、悲観して自ら命を絶ってしまう。組合員に促されたのは、自主退職。鉄道員のカルロスとブラウリオらはそれに反対、退職届にサインできずにいた。一方、退職を選んだゴメスが得られた仕事はサンドイッチマンだった…。

アルゼンチンの広大な景色の中を走る鉄道映画なら観ておかないとと思い、レイトショーになるまで待っていました。
鉄道のシーンを期待していると肩透かし。ちょっとしかありません。
これは、長年誇りを持って国鉄の仕事に従事していた人とその家族たちがグローバル経済の流れの中犠牲になり職を失い、転職もままならず、会社からコケにされ出口を失って迷走して行くお話。あきらめずに行動を起こしたのは失業した親を持つ若者3人。

失業者5人のそれぞれの人生を描く視点は面白いのだけれど、ちょっとまとまりが無くなってしまっている感じがしてしまうのが残念。エピソードの一つ一つは魅力的だけれど、何かぶっきらぼうで不親切。これも狙いなのかもしれません。

失業して収入を失う事により夫婦や家族の間がギクシャクしてくるのだけれど、ギクシャクしてきてもしっかり絆や温かさを残した表現が嬉しく救われる。
特に、重病の5歳の男の子を持つ若い夫婦のエピソードが気になって追っかけていました。
保険も自主退職の形を取らされたため降りず、いよいよ出口を失い悪の道へと入っていくのか・・・ここはちょっとしたトリックで、実際、悪の道へは別の人が入って行くのですが・・・
どう見たって坊やの名付け親カルイエロって怪しいんですもの。

奥さんが父親に無心に行く間の留守番中、4時に坊やに抗生物質を飲ませるのを忘れてしまいます。その時にキッと睨む奥さんの怖い事。
どこでも、子供を思う母親は怠惰な父親には厳しいのです。
その後、熱を冷ますため子供が嫌がる水風呂にお父さんが勇気付けながら着衣のまま一緒に入ってあげる。それをしゃがんで見守る母親の後姿。そんなお父さんだから道を外さないで欲しい所です。
あちらの方々はギスギスしていてもちゃんとキスするので(挨拶同様)いいですね。キスシーン、とても切ないです。

ラストの青年たちの行動によって失業者は出口を見つける事はありません。また同様の厳しい現実を生きていくしかありません。
しかし、真面目に仕事に従事していた誇りを思い出させ、彼等に勇気を与える事にはなりました。
登場人物それぞれが律儀(悪事に走った男も含め)であることと、列車の通過を唖然と見つめる人々の表情が印象的。

渋谷 ユーロスペース レイトショー

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2 コメント

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線路は続く (かえる)
2008-05-05 22:43:46
こんばんは。
TB返しをしたのですが、できませんでした。
禁止ワードがありそうなタクシデルミアの方はできたのに、こちらはなぜかできず・・・。
本作は地味な作品でしたが、よい映画だったと思います。
私も病気の子をもつ夫婦に一番心寄り添って見つめていました。
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コメント&TB感謝 (imapon)
2008-05-06 17:56:43
かえるさん、こんにちわ。
その後TBも無事受け取れたようです。ありがとうございます。
あの若い夫婦をはじめ、皆、善良で誇り高き鉄道マンとその家族であった事が見て取れましたね。
返信する

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