【タイ山岳民族の村に暮らす】

チェンマイ南西200キロ。オムコイの地でカレン族の嫁と綴る“泣き笑い異文化体験記”

【やっぱりワーグナー】

2006年04月21日 | アジア回帰
 日付が、変わった。

 FMラジオからは、ワーグナーの曲が流れ続けている。

 先ほどは、楽劇『ローエングリン』の中の美しいソプラノアリア。

 そして今は、楽劇『ニーベルングの指輪』第一話『ラインの黄金』から荘厳な“ワルハラ”のテーマ。

 もう、10年ほど前になるだろうか。

 初めて触れたオペラが、カヌー仲間から借りた『ニーベルングの指輪』だった。

 そして、初めて新宿のオペラハウスで観たのが『ローエングリン』だった。

 退屈するかと思いきや、その魔力的な音楽に虜になり、以来熱狂的なワーグナーファンとして膨大な時間をオペラ鑑賞に費やすことになった。

 数日前のブログにも書いたように、昨年4月半ばにニューヨークにやってきたのもオペラを楽しむためだったのだが、『トスカ』『ドン・ジョバンニ』に続いて『仮面舞踏会』を観た18日にニューヨーカーのJudyとまるでオペラのような非現実的な出会いを果たした。

 そして、その翌日には偶然にも私の一番好きなワーグナーの『ワルキューレ』(『ニーベルングの指輪』第三話)が上演されたので、Judyを招待し二人肩を並べてワーグナーの神話世界に見入ったのだった。

 遅れてやってきたJudyが、「I'm happy to find you!」と言いながら飛びついてきた様子。

 老いを感じさせないドミンゴが張りのある声で若く力強いワルキューレ歌い(ソプラノ)の登場を彩った様子。

 そして、オペラがはねたあとホテルのロビーでJudyと明け方まで語り合った様子などなど。

 一年前の劇的な出会いとその舞台が、今でもありありと甦る。
           *
 実は夕べ、モーツアルトの『フィガロの結婚』を観た。

 スザンナ役(アンドレア・ロスト)の伸びのある高音、フィガロ役(ジョン・レリヤ)の若々しい演技と凄みのあるバリトンが会場を圧し、熱気に満ちた舞台となったが、ときどき意識が他に飛び、空白ができてしまう。

 だが、ワーグナーのオペラを観るときは、一秒たりとも空白はできない。

 ワーグナー楽劇は悠々たるテンポで、音楽教師のカヌー仲間に言わせれば「哲学的なおしゃべり」が延々と続く。

 これに反して、モーツアルトオペラは軽快なテンポで笑いも多く、美しいアリアがちりばめられて、一般的には飽きにくいとされる。

 だが、私の場合はワーグナーがぴったりと合い、これまで一度も「飽きた」経験がない。

 幸いなことに、この4月には『ローエングリン』、5月には『パルジファル』とワーグナーものが続き、今日は街に出たついでに来週月曜日の『ローエングリン』のチケットを購入した。

 私が買うのは基本的に“ファミリーサークル”と呼ばれる4階席の中央寄り、しかも最後尾である。

 オペラハウスのスタッフはこっそり「チープシート(安い席)」と呼ぶが、なに、このシート、劇場の造りがいいので、オーケストラと指揮者、舞台の全体がくまなく見渡せ、しかも“音はまず真上に上がって、その後反響する”ので、演奏も歌唱もまず最初にこのシートに届く。

 まあ、視力が弱いのがたまに傷だが、そこはメト特製の真っ白なオペラグラスでカバーすることとしよう。

 なにしろ、この席、平日なら26ドル(3000円強)で買える。

 こちらのオペラシーズンが終わった7月には、メトがドミンゴの『ワルキューレ』などを持って日本への引っ越し公演を行うが、同じレベルの席でも1万円は下らないだろう。

 100ドル(約1万2000円)の席なら5~6万円が相場だから、いやはや、なんとも言い様がない。
 




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