【タイ山岳民族の村に暮らす】

チェンマイ南西200キロ。オムコイの地でカレン族の嫁と綴る“泣き笑い異文化体験記”

【蛇を喰らう】

2008年06月06日 | アジア回帰
 
 同郷の友人に、大の蛇嫌いがいる。

 このブログを丹念に読んでくれている彼からは、「くれぐれも蛇については書かないように」と釘を刺されていたのであるけれども、昨日、友人のニコダン(いつもニコニコしている旦那さんの略称)がものすごい蛇を射止めてきたので、これはどうしても書かずにはいられない。

 友人のKくんよ。

 誠に申し訳ない次第だけれど、どうか、今日の記事には目をつぶってくれまいか。

          *

 さて、いつものように豚の世話を終えて家に戻る途中、ニコダンが「クンター!」と大声で叫びながら手招きをする。

 何事かと思って急ブレーキをかけ前庭に入ると、彼がいつものようにニコニコしながら何かを焚き火であぶっていた。

「さて、今日は何を食べさせてくれるのだろう」と思いながら近づいてみると、なんと2メートルを越えようかという長大な蛇ではないか。

 あまりにもでかいので、気持ち悪さを通り越してアハハ、アハハと笑いが込み上げてくる。

「わあ~、でかいなあ。これ、どうしたの?」

「うん、田んぼからの帰り道に草むらで見つけたんだ。すぐに猟銃に弾を込めて、頭を吹き飛ばしたんだよ」

 見ると、確かに頭部はすでに切り取られている。

「一発で仕留めたの?」

「うん」

「それは凄い!蛇はくねくね動くから、仕留めにくいだろうに。やるなあ。見直したよ」

 身振り手振りを交えながらいきさつを聞いていると、丸顔の嫁さんが現れて「クンター、この葉っぱ(とレモンハーブを指差して)と一緒に料理するととってもおいしいんだよお。一緒に食べようね!」とこれまた満面の笑顔だ。

「クンター、日本にも蛇はいるのかい?」とニコダン。

「ああ、いるよ」

「そうか。じゃあ、蛇も食べられるよね。問題ないよね」

「・・・う、うん」

 と曖昧な返事をしたのは、中国の上海で一度、この村で一度、すでに蛇を食していたからではあるけれども、問題は調理法で、嫁のラーに「村人が調理したものをホイホイと気軽に食べてはいけない」と釘を刺されていたからでもある。

 しかし、焚き火にあぶられてこんがりと焦げていくぶりぶり太った蛇の胴体を眺めているうちに、猛然たる食欲が湧いてきたのであるから、自分でも驚いた。

         *

 ウロコ取りも兼ねて蛇の全身をこんがりと焼いたあと、水を張ったたらいに放り込んで腹を割く。

 肝臓などの食べられる部分をきれいに洗い、そうでない部分は鶏の餌だ。

 内臓を取り去ると、きれいな白身が現れた。

 これをぶつ切りにして、もっとも大きい腹まわりの部分を串刺しにする。



 串刺しは煙でいぶし、薫製にするそうだ。



 そして、腹からしっぽにかけての細い部分をトンカチで叩き、骨を大まかに砕く。

 そのあと、今度は包丁で丹念に叩いてミンチ状にする。

 これをレモンハーブと一緒に炒めるらしい。

          *

 かつては、リゾートホテルで調理をしていたというニコダンの鮮やかな手際に見惚れながらビアシン(獅子印ビール)を呑んでいると、嫁さんが「クンター、これどうぞ」と焼いた肝臓を差し出してくれた。

 この村では、豚でも鶏でも、まずは焼いた肝臓を年かさの者にすすめてくれるのである。

 蛇の肝臓は直径1センチにも満たない棒状で、長さは20センチ程度。



 豚や鶏ほどには濃厚ではないが、確かにレバーの味である。

 ビールを呑み終えると、本日のメインディッシュの登場だ。

 二コダンや嫁さん、ラーの3人は辛い辛いトムヤムスープ味。

 レモンハーブ添え中華風炒めは、私のための特別料理であるらしい。

 見た目は、豚や鶏のミンチとまったく同じだ(当たり前か}。

 慎重に口に運んでみると、前2回と同様に鶏肉にちかい味がする。

 とりたててうまいというわけでもないが、あの不気味な顔貌や姿態からすれば「あっぱれ、あっぱれ!」と扇をかざし讚えてやってもよろしいのではあるまいか。

 ただし、骨がすこぶる硬い。

 あれだけ丹念に叩いたというのに、このしぶとさはどうだ。

 しかし、骨を捨てているのは私だけで、他の3人は平気な顔で噛み砕いている。

 なにせ、ビールの栓を歯で開けてしまう人々である。

 私は彼らの幸せそうな顔を眺めながら、いつもの2倍ほどの飯を平らげてしまった。

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