【タイ山岳民族の村に暮らす】

チェンマイ南西200キロ。オムコイの地でカレン族の嫁と綴る“泣き笑い異文化体験記”

【ダニに咬まれる】

2008年06月07日 | アジア回帰
 数日前の話だが、田んぼの“畔固め”を手伝いに行った。

 手押し耕運機による“田返し”で、畔が削られて歩きにくくなっている。

 そこで、雑草と共に畔を斜めに削り取り、そこへ粘土状の田んぼの泥をかけて足で踏み固めるのである。

 幸いなことに、次姉と友人ニコダン(昨日の『蛇を喰らう』を参照)の田んぼは隣接しており、一日に両方を手伝うことができる。

 作業自体は単純だが、しばしば泥に足をとられて身動きがとれなくなる。

 特に、私は嫁のラーの忠告で長靴履きだ。

 その忠告とは、「村の蛭に噛まれると病原菌が入って死ぬこともある」という恐ろしいもので、こればかりは黙って従うしかない。

 その嫁であるが、泥をすくう時にやたらと鍬を振り回すので、泥水が飛び散って仕方がない。

 あわてて距離をとって観察していると、案の定、すぐに自分の顔を泥だらけにして気づかないままだ。

 畔に泥をのせ、足で壁塗りのように伸ばしならしていく作業は、単純ながらなかなか面白い。

 私が作業に熱中していると、遠巻きに眺めていた次姉とニコダン夫婦が「ディーディー(とてもよろしい)」と右手の親指を突き出して誉めてくれた。

           *

 昼食は、田んぼ脇の川沿いにある作業小屋で豚肉のバーベキューと筍スープである。

 満腹になって竹組みの床に横になっていると、なんだか耳や頬がもぞもぞする。

 手で触っても何もいないようなので、そのままにしていると甥っ子のジョーが「クンター、虫がいる。起きて、起きて!」と自分も耳のうしろあたりを掻き払いながら私を揺り起こした。

 跳ね起きてみるが、やはり虫のようなものは見えない。

 だが、やはり耳のうしろがもぞもぞする。

 その様子を見ていた次姉がシャツの裾をつまんで、「しっかりこすれ!」というような身振りをする。

 一応その指示に従ってはみたものの、いったい何をそんなにあわてているのか、どうもよく分からない。

 そこへ筍掘りから戻ってきたラーが姿を見せ、姉と言葉を交わし大声をあげた。

「クンター、この作業小屋には鶏ダニがいるんだって!咬まれると大変なことになるから、すぐに服を脱いで!」

 そして、私からTシャツを剥ぎ取ると勢いよくはたき、日の当たる場所に干した。

 そのとき、ズボンやトランクスも脱がなかったことがあとで大きな禍根を残すことになる・・・。

        *
 さて、早めに家に戻ってシャワーを浴び、服や下着を洗った。

 「これでひと安心」とビアシンを呑んでいると、またまた耳のうしろがもぞもぞする。

 ラーが手でこすると、指の先に小さな黒い虫の姿があった。

「クンター、わたしも体中がもぞもぞするよお」

「おかしいなあ。水浴びもしたし、服も着替えたぞ」

 不審な思いのまま眠りにつくと、ひどいかゆみで目が覚めた。

 ラーを揺り起こして明かりの下で裸になると、脇の下、下腹の盲腸のあたりが赤く腫れている。

 腫れの中央には咬みあとのようなものが見え、かきむしったせいだろうか、汁も浮かんでいる。

「お前さんは咬まれていないのか?」

 ラーは何ともないらしい。

 とりあえず、タイガーバームを擦り付けてベッドに戻ったが、眠れるものではない。

           *

 翌朝になって、かゆみと腫れは至るところに広がっていった。 

 恥ずかしながら、へその中からおちんちん、睾丸、さらには“蟻の門渡り”に至るまで全滅である。

 あれから1週間近くも経つが、腫れとかゆみはいまだに続いている。

 場所によっては、すでに咬み跡が枯れたようになっているところもあるが、“陽の当たらない場所”ではそうもいかないらしい。

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