【タイ山岳民族の村に暮らす】

チェンマイ南西200キロ。オムコイの地でカレン族の嫁と綴る“泣き笑い異文化体験記”

【胃腸撃沈】

2008年04月20日 | アジア回帰
 やっぱり、やられてしまった。

 あれだけ警戒していたのに、“お祭りムード”とは怖いものである。

 きっかけは、「一年に一度のソンクランだから」という決めぜりふに押されて、どうしても断り切れなかった焼酎の献杯応酬儀式。

 胃が弱ったところに、食べ慣れない他家でのお呼ばれが続いたり、村別のパレードに参加して管理の行き届かない果物やつまみを振る舞われたり。

 パレード後に始まったダンス大会では、見知らぬ人たちが次々にビール、焼酎、ウイスキー、ワインなどを礼儀正しく「押しつけて」くる。

 嫁に教わったとおり、呑む振りをして口に含んだままにっこりと微笑み、あとでこっそりと吐き出したりもしてみたのであるけれど、やはり少しづつアルコールは浸透していく。

       *

 ソンクラン3日目から激しい下痢が始まり、胃も痛み始めて吐き気がし食事が咽喉を通らなくなった。

 腹下しのかたわら、ほとんど丸二日間食べられない状態が続いたので、嫁の懇願もあって町の病院に入院することにした。

 家で横になっていても、日中は暑くて眠ることができず、またソンクラン休みで小学生の甥っ子の友だちが大勢おしかけてくるので、うるさくて仕方がない。

「家にいるよりもましだろう」との判断だったのであるが、いざ入院してみると、なんだか「立派な病人」になったような気分である。

 なによりも、栄養点滴で体の動きが大幅に制限される。

 しかも、点滴をぶらさげて移動する器具が古くて滑りが悪く、トイレなどに行くときはこれを右手で担いでいく始末だ。

 面倒くさくなり、ベッドに横たわってテレビを眺めていても、日本と同じくどこの局も同じような内容ですぐに飽きてしまう。

 本を持参するのを忘れたので、あとは眠るぐらいしかやることがない。

         *

 夕食は、塩辛い豚肉入りのおかゆのみ。

 ほとんど、食べられない。

 夜に入って血圧が180まであがって、やや熱っぽくなる。

 数度の測定で140まで下がったので、ひと安心。

 嫁に頭を冷やしてもらい、ようやく夜の眠りに入った。

       *

 賑やかな喋り声で、目が覚めた。

 朝かと思って時計をみると、午前1時である。

「クンター、甥っ子たちが心配して泊まり込みにきてくれたんだよ」

 眼鏡をかけて室内を見回すと、甥っ子やラーの友人の息子たち3人がワイ(合掌礼)を送ってくる。

 どうやら、私の見舞いがてらに個室のベランダでチビチビやっていたらしい。

「ダブル、ダブル(カレン語でありがとうの意)」

 と感謝の言葉を口にしてみるものの、内心では「病室で宴会なんかやるなよな」と腹立たしい。

 嫁も、ひとりで看病しているときよりも気分が楽になったらしく、妙に饒舌だ。

 怒鳴りつけたくなったが、3人は固い床にじかに寝て「私に万一のことが起きた場合に備える」というのだから、すべてをぐっと呑み込むしかない。

「とにかく、俺は病気だからできるだけ静かにしてくれ」

 そう伝えると、彼らはおとなしく床に転がり始めた。

       *

 予想に反して、翌日も下痢がとまらない。

 食欲は少し回復して、昼と夕のおかゆは平らげることができた。

 念のためにもう一泊することにしたら、夜になって今度は息子のヌンと別の甥っ子、そして前日に続いて友人の息子が泊まり込みにやってきた。

「俺はもう大丈夫だから、家に帰ってゆっくり休んでくれ。固い床の上じゃあ、よく眠れないだろう」

 そう伝えても、嫁は「みんな、クンターのことが心配でならないんだよ。彼らは頑丈だからマイペンライ(問題)」というばかり。

 そうじゃなくて、俺は静かに眠りたいんだ・・・と言ってるはなから、彼らはお菓子や果物を食べ始め、何やらピクニック気分だ。

 嫁も彼らと一緒に床に寝ころび、テレビのドラマを眺め始めた。

         *

 やれやれ。

 これが、カレン族の一般的な見舞いのあり方なのか、それともわが嫁の家系のなせる業なのか、私にはよく分からない。

 ともかく、私はそれ以上病院に長居する気にはなれず、3日目の午前中にそそくさと退院手続きを済ませた。

 昨日いちにち、安静にして過ごし、今朝は久しぶりに豚舎に顔を出すこともできた。

 多少疲れやすく、文章もなかなかまとまらないが、もう数日もすれば体調は完全に元に戻るだろう。

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2 コメント

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初コメントです。 (somsai)
2008-04-21 23:13:31
始めまして、somsai(HN)と申します、何時かコメントをと思って居りましたが今日に成ってしまいました。

「今日は誕生日だから、ソンクラ-ンだから・・・」等々で飲まされ、食わされ(?)具合を悪くした経験が私にもあります、此方に縁を持って18年今は北タイの田舎の村社会に癒され、力付けられ、残された人生を謳歌して居ります。

余り無理をなさらずご自愛下さい。

チエンラ-イの田舎メ-チャンより。
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年期がいりますね (管理人)
2008-04-23 17:36:17
 somsaiさん、初コメントありがとうございます。
おかげさまで、体調は戻ってきましたが、暑さのせいもあってあまり食欲がありません。

 在タイ18年ですか・・・ゆとりをもってすべてを受け入れ、楽しめるようになるには、やはりそれなりの「年期」が必要なのでしょうね。
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