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4月も第2週に入って、村はすっかりソンクラン(伝統正月)ムードに包まれている。
まずは、「開国記念日」2連休の初日に当たる日曜日にガムナン(統括村長)選挙があり、わが村在住の現役ガムナンが勝利を収めた。
彼は弱者救済に熱心なことで知られ、村人の多くが彼の再選を望んでいた。
彼と親しいラーも大喜びで、村人たちが次々に祝福に訪れる。
*
その祝祭ムードは翌日にまで持ち越され、早朝からあちこちの家で宴会が始まっている。
豚の世話を終えて家に戻ると、隣家のプーノイ(修業した人)がソンクラーン用の花柄のシャツをまとって私を誘いにやってきた。
ラーの通訳によれば、「今日は一年に一度の“冗談の日”。とにかく、一日中冗談を言い合って一年の憂さを晴らす」のだという。
なんだかよく分からないが、「まあ、エイプリルフールみたいなものなのだろう」と考えて隣家におもむくと、すでに数人の村の衆が焼酎を酌み交わしている。
話題は、おのずと昨日の選挙における私の“武勇伝”に集中した。
といっても、泥酔して(投票所で酔っ払うなよな、まったく・・・)嫁のラーを侮辱した小学校教師を怒鳴りつけただけなのだが、この教師は生徒に暴力をふるうなどとても評判が悪く、誰もが一度が制裁を加えたいと思っていたらしい。
ところが、タイでは教師の地位がきわめて高く、しかも彼の父親が村の実力者ということで、誰も手どころか口も出せなかった。
そこで、私の「武勇」に多くの村人が喝采をおくっているというのである。
背負い投げで投げ飛ばしたというのならともかく、ただ怒鳴りつけただけで誉められるのは面映ゆいが、そんな性質の悪い教師と知っていたら、裸絞めで締め落とすところだったのに、惜しいことをしたもんだ。
もちろん酔っ払いの常で、宴席の話題はころころと転がっていく。
“冗談の日”のはずなのに、そのうちに怒鳴り合いや夫婦喧嘩まで始まったので、早々に退散した。
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「ラー、いまの宴会もソンクランの一環なのか?」
「そうだよ。みんながハッピーだから、お酒もすすむ。ほら、今度は歌が始まったよ」
さっきまでの怒鳴り声は収まり、隣家では男衆がソンクランの歌を歌い始めた。
「でも、本当の伝統正月は4月中旬の3日間なんだろう?このソンクラーン・ムードはいったいどのくらい続くんだ?」
「だいたい2週間かな」
「2週間?2週間もこの騒ぎが続くのか?」
いやはや。
すでに学校や会社の長期休暇が始まり、生徒や学生があちこちにたむろし、大人たちも昼間から赤い顔をして家々を巡っている。
私も、久しぶりに焼酎を呑まされ、なんとなく“お祭りムード”に浸りつつあるところだ。
*
そこへ、今度は郡をあげての一大イベントである。
昨日の朝、朝食を終えるとラーが「面白いものを観にいこう」と言い出した。
なんでも、村別対抗の料理合戦があり、審査員が試食をしてその優劣を決めるのだという。
会場に着くと、村人たちが私たちを取り囲み「行こう、行こう」と川原の方へ誘う。
見ると、整地した川原に大きな綱が置かれていて「これから闘いが始まる」というアナウンスが聞こえる。
「ラー、これは綱引きじゃないか。何が料理合戦だ?」
「料理はあとあと。クンター、一緒に闘おう。わたしの村が勝つように力を貸してよ」
勢いにおされて、実に何十年ぶりかの綱引きに臨んだのであるが、力及ばず、わが村は連敗に次ぐ連敗。
*
このあと、ラーの話どおり料理コンテストが始まり、昼食のあとで写真のような「水上騎馬戦厶エタイ」「うなぎつかみ競争」「スタンド・バスケットボール」「仔豚早どり競争」・・・と各種の村別対抗合戦が延々と続いた。
この「ソンクラン前哨戦」ともいえるイベントは、夜になっても終わることを知らず、生歌付きディスコパーティーで踊り疲れた私たちは、夜10時半、逃げるように会場をあとにした。
でも、楽しかったなあ。
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