白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
ブログ移転しました→https://note.com/shiraishi_igo

SGW杯予選その1 下島陽平-堀本満成

2022年08月11日 23時59分59秒 | 幽玄の間

皆様こんばんは。
第3回ディスカバリー杯は仲邑菫二段が三浦太郎二段を破って優勝しました。
幽玄の間で中継されましたので、ぜひご覧ください。

さて、本日今週第5回SGW杯が開幕しました。
予選は基本的に毎週月曜日ですが、本日と8/25だけは木曜日に対局が行われます。
予選、本戦の全ての対局は幽玄の間で中継される予定です。
今回は予選1回戦、下島陽平八段(黒)と堀本満成五段の対局をご紹介します。

1図(テーマ図)
黒番です。
次に黒A付近に打てば、白×の逃げ出しはほぼ不可能になります。
その選択をするプロも多いでしょう。
しかし、ただ地を囲うだけの手なので、下島八段はあまり魅力を感じなかったのでしょう。



2図(実戦)
実戦はなんと黒1!
中央を確実に黒地にするよりも、白×への寄り付きを狙っていきましたね。
白×は一見強い石に見えますが、凄い迫力です。

一方、白4も頑張った一手ですね。
白Aなど、白2を逃げ出せば無難ですが、ただ守るだけの一手になります。
実戦は中央に間接的に応援を送りながら、上辺白模様を拡大しています。
これまた意思ある一手です。




3図(実戦)
黒8まで、中央で立派な勢力を作りました。
中央が白地になる可能性もあったところです。
その代わり、白9で中央白がつながってしまったようですが・・・。



4図(実戦)
許さずと黒1!
周囲の厚みを生かして強引に切断しました。
黒7ではAと打てば白×を取れますが、白Bと守られてはものが小さいというのですね。
白もBと反撃されるリスクは大きいですが、左辺白もまだ薄いので戦えると判断しました。


最近は手の良し悪しはAIを使えばすぐに答えが出てしまいますが、私としては気持ちも含めた人間同士の戦いという面に注目していきたいと思います。



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幽玄の間シリーズその4 仲邑菫-牛栄子

2022年08月10日 23時59分59秒 | 幽玄の間

皆様こんばんは。
本日は仲邑菫二段(黒)と牛栄子四段の対局をご紹介します。
中国の女子甲級リーグの対局を、日本棋院で顔を合わせずに打っているという妙なシチュエーションです。

1図(実戦)
白△は面白い一手ですね。
普通に白Aと打つと、黒△と迫られるのが嫌だったのでしょうか。



2図(実戦)
黒△もいかにもセンスの良い一手です。
白Aには黒Bとカケて進出しにくいということでしょう。
白×の動き出しを牽制している意味もあります。
ここで白はCやDなど、黒模様の中で居直る作戦も考えられますが・・・。



3図(実戦)
実戦は白1とケイマしました。
黒2のツケコシは当然考えられる攻撃ですが、そこで白3!
これは全く予想外の発想でした。
とにかく早く中央に頭を出したいということでしょう。
白はバラバラのようですが、黒が白×や白1を取りにくれば捨てるつもりです。



4図(実戦)
実戦は黒が白×を取っている間に、白は中央で好形を作りました。
右辺の黒地はかなりの大きさですから、無欲な打ち方とも言えますが、白Aの切りを狙っている意味もあります。
工夫を凝らした打ち回しでした。
最近の牛四段は考え方が非常に柔軟になっていると感じます。



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幽玄の間シリーズその3 孫冠群-仲邑菫

2022年08月09日 23時59分59秒 | 幽玄の間

皆様こんばんは。
本日は幽玄の間で中継された、女子乙級リーグの孫冠群初段(黒)と仲邑菫二段の対局をご紹介します。

1図(テーマ図)
白番です。
黒が序盤から各所で地を稼いでいます。
白はどのような方針で臨むかの岐路に立たされています。



2図(参考図)
目先の白地を最大化させるなら、白1~9(白3は△の所)です。
おそらく棋士の一番人気でしょう。
これで形勢も白十分です。



3図(実戦)
しかし、仲邑二段は左上隅を先手で切り上げ、白5から中央黒に攻めかかりました。
「こんな眼の無い黒が知らん顔しているのは許せない!」というわけですね。



4図(実戦)
実戦は中央黒をいじめるだけいじめてから、左上隅に戻って地を確保しました。
白優勢は明らかです。

2図と実戦、どちらが勝ちやすいのかは分かりません。
しかし、鑑賞していて楽しいのは実戦の方ですね。



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第46回全国高等学校総合文化祭東京大会

2022年08月02日 23時59分59秒 | 囲碁界ニュース等

皆様こんばんは。
第46回全国高等学校総合文化祭東京大会が開催中です。
囲碁部門は8/1(月)、8/2(火)にかけて行われました。
私は講師として指導碁、大盤解説を担当しました。
大会の詳細については週刊碁で報じられる予定です。

対局風景の一部です。
男女別の個人戦と男女混成の団体戦が行われるため、かなりの人数です。
おそらく感染対策のため、日本棋院貸切で行われました。
本来なら家族・友人など応援に行きたかった方も多かったでしょうが、ともあれ無事に開催されて良かったです。
2020年は通常の開催ができず、オンラインで行われたそうです。


パンフレットです。


担当講師の紹介ページです。
小長井八段は審判と大盤解説、他の棋士は指導碁や大盤解説を担当しました。
会場にはスタッフや引率として学校の先生が多くいらっしゃっていましたが、小長井八段はそこに交じっても全く違和感の無い人柄ですね。
下坂三段の解説会&指導碁会、参加者募集中です!(笑)
七夕に結婚された星合三段は、やはり多くの方に祝福されていました。
森初段は選手とあまり変わらない年齢ですが、とても落ち着いていて的確な指導をしていた様子でした。


私の名前も発見しました。
最後に出場してから21年も経ったとは信じられません
当時から引率やスタッフをされていた方もいらっしゃって、懐かしい気持ちになりました。
長年囲碁界に携わって頂いてありがたい限りです。

ちなみに、2001年当時は全国高校囲碁選手権大会の方が先に行われていたのですが・・・。
そちらで私は優勝!
決勝戦は坂口さんの時間切れという形で決着しました。
お互いに必死すぎて、途中からの棋譜をほとんど再現することができなかったことを覚えています
当時の棋譜付けは手書きが当たり前で、担当の方も大変だったでしょうね。

そしてその後の総文祭で、またしても坂口さんと優勝決定戦を行うことになりましたが・・・。
今度は私の時間が切れました
翌年から秒読みが付いたと記憶していますが、私たちのおかげではないかと思っています(笑)
運営は大変になってしまうのですが。


さて、今年の大会結果ですが、

団体戦
優勝 東京(渕上和克、丸山通晟、黒川理彩)
2位 福岡(出口稜真、土谷仁人、中野桃花)
3位 大阪(立山寛人、黒川真依、若林艶佳)
4位 島根(玉木洸多、木戸健太、井上結菜)
5位 愛知(古川東吾、伊藤虎太郎、石原麻理菜)
6位 宮城(福田彩葉、菅原大生、大沢希)   

個人戦男子
優勝 宅見悠作(兵庫)
2位 紅林英龍(大阪)
3位 大島悟 (京都)
4位 高橋大地(神奈川)
5位 松田智貴(高知)
6位 北澤明良大(長野)

個人戦女子
優勝 玉作乙香  兵庫(近畿)
2位 小室杏花  東京(関東)
3位 長野優希  埼玉(関東)
4位 大沢巴   宮城(東北)
5位 尾島明日香 神奈川(関東)
6位 今分はな  京都(近畿)


となりました(敬称略)。
入賞された皆さん、おめでとうございます。
全体の棋力レベルも高かったですが、対局マナーも素晴らしかったですね。
また、対局中ずっと鋭い表情をしていた選手たちが、対局後は別人のようにニコニコしていたのも印象的でした。
私はなかなかそうはいかないのですが・・・(笑)
選手たちは戦友として友情を育めたことと思います。
この大会がいつまでも続くことを願っています。


明日からは高校選手権が始まります。
連戦になる選手も多いと思いますが、若いので大丈夫でしょう。
良い戦いを期待しています。



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