白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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5目中手?

2017年07月28日 21時27分56秒 | AI囲碁全般
皆様こんばんは。
幽玄の間で行われているDeepZenGoと若手棋士の対局は、相変わらずDeepZenGoが圧倒的な強さを見せています。
直近20局の成績は次の画像の通りです。



井山、村川、伊田、一力といった、そうそうたる顔ぶれをなぎ倒していますね。
もはやDeepZenGo先生と呼ばなければいけないかもしれません。

・・・おや?
この画像の中に、一箇所おかしな所がありますね。



向井千瑛五段・・・白番51.5目勝ち!?

勝敗はともかく、この大差の碁を作ったことにはびっくりです。
大石が死ぬなどして、DeepZenGoが大敗すること自体はおかしくありません。
しかし、勝つ見込みが無くなった対局は投了するように設定されており、事実半目差以外の負けは全て中押しになっています。
一体何が起こったのでしょうか?
実戦の進行を追いながら調べてみましょう。



1図(実戦)
白番の向井五段が持ち味のパワフルな打ち回しを見せ、黒△一団を屠りました。
対するDeepZenGoは代償に白△を仕留めに行きますが、白はAから凌ぎを目指します。





2図(実戦)
黒△となった場面、左下の白一団はどうなっているでしょうか?
黒石が腹中に入っていますが、白Aと取りに行くと黒Bとつながれ、5目中手の形になるので白死にとなります。
という訳で、白からは手を出せません。

では、黒から白を取りに行けるかどうかですが、最終的に白石の外ダメが全て詰まったとして、黒から白を取りにいくためには、黒AやCに突っ込まなければいけません。
しかし、直接行っても黒が当たりになるので、取られていけません。
また、黒Bとつないでから黒Aや黒Cに行くのも上手く行きません。
黒石が6つになってしまうからです。
6目中手は花六と呼ばれる形しか無く、この形では単に白地を作らせるだけになってしまいます。

結論ですが、この形は双方共に手を出せないので、セキということになります。
アマ有段者でも実戦だと結構うっかりしてしまう形ですが、まさかDeepZenGo先生が間違える訳がありませんね。





3図(実戦)
その後、黒1から無意味な手を連発しています。
これは所謂水平線効果のように見えますね。
形勢が悪い時によく見られる、簡単に言えば勝負の結論をただ先送りにする現象です。
上辺の黒を取られた上に左下の白に生きられては、流石のDeepZenGo先生も投了が近いのでしょうね。





4図(実戦)
しかし、水平線効果のような悪手を続けつつ、どういう訳かDeepZenGo先生は投了しません。
そして、白1に対して黒Aと穴を塞がず、1目ちょっとの価値しかない黒2へ・・・。
これはもしや・・・。





5図(実戦)
その後、白△とずかずか入って来られましたが、平然と黒△と後退して受けています。
ここまで来れば、不思議な進行の意味は明らかです。
そう、DeepZenGoちゃんは左下を白死にだと勘違いしているのです!
確かに、この石が死んでいるなら、そこからどれだけヨセを打っても黒地は全く減りませんね・・・。

DeepZenGoちゃんに感情があったら、こんな感じでしょうか。
「このプロは、負けが決まっているのに無意味な手ばかり打ってマナーが悪いなあ。
早く投げてくれないかなあ。」
確かに、もしこの白が死んでいるとすると、30目ぐらい黒が勝ちますね。

しかし、実際にはセキなので、打てば打つほど黒地が減って行きます。
結局DeepZenGoちゃんは最後まで死活誤認に気付なかったようで、整地まで行ってしまいました。
空前の大差負けの理由には納得が行きましたが、それにしても凄い話ですね。
トップ棋士をなぎ倒すDeepZenGo先生が、突然アマ有段者レベルのDeepZenGoちゃんに転落してしまうとは・・・。
人間味すら感じます(笑)。
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