白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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不思議な手

2018年07月18日 23時59分58秒 | 幽玄の間
皆様こんばんは。
本日は日本棋院ネット対局幽玄の間にて中継された、柯潔九段と范廷鈺九段の対局をご紹介します。



1図(テーマ図)
柯潔九段の黒番です。
黒1、3は捌きの常套手段です。
私の本や連載にもよく登場しますね。
このような配置で、白も最も自然な対応は・・・。





2図(変化図)
白1、3です。
黒4には白5と押さえ、左右をつなげながらAの切りを残します。
黒はBと切って隅で治まることになるでしょう。





3図(実戦)
ところが、実戦は白△の伸び!
目の前に黒の断点があるにも関わらず、何もしないとは・・・。

最近の碁はAIの影響もあって、何でもありという印象があります。
白AやBといった不思議な手も打たれていましたが、この白△にも驚きました。





4図(実戦)
黒1とつながれて黒の形が良いですが、その代わり黒Aの切りが成立しません。
白が非常に厚いので、左辺をまとめやすいということでしょう。
白は後手を引きますが、この局面ではそれだけの価値がありそうです。

普通の感覚では「無い手」のように見えて、筋が悪いと言うほどでもない・・・。
最近はそんな手が多く見られます。
善悪は別としても、碁の考え方が柔軟になってきているのは確かですね。