白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
ブログ移転しました→https://note.com/shiraishi_igo

柯潔九段ーAlphaGo 第3局

2017年05月27日 20時36分00秒 | AI囲碁全般
皆様こんばんは。
本日、柯潔九段とAlphaGoの三番勝負、最終第3局が行われました。

結果は残念ながら柯潔九段の負けに終わり、AlphaGoに一矢報いることはできませんでした。
それでは振り返って行きましょう。



1図(実戦黒13)
柯潔九段の希望により、AlphaGoの黒番です。
何と、黒△とカドに行きました!
序盤早々、信じられない手が飛び出しましたね。
こういう手は白を固めるだけで、メリットが無さそうに思えます。
同じカド(肩ツキ)でも、黒Aなら分かるのですが・・・。





2図(変化図1)
黒1は十分考えられる手で、もし白2、4と押してくれれば、黒5まで一歩先に伸びることができます。
この進行を期待できるかはともかく、こうなれば黒が嬉しいですね。





3図(変化図2)
しかし、実戦の黒1では、白4までと先に伸びられてしまいます。
前図とは天地の差であり、とても黒を持つ気がしません・・・。

AlphaGoはこれで黒がやれるとみているのでしょうか?
それとも、黒3で違う手があるのでしょうか?
実戦は柯潔九段がAlphaGoの意図に嵌ることを警戒し、手を抜いて他へ回りました。

ちなみに、後にAlphaGoチームと柯潔九段が三番勝負の棋譜を検討するそうです。
この手の意図も解明されるでしょうか?





4図(実戦白32~白36)
白が苦しそうな局面になっています。
右下隅の白を生きたいのですが、すると白△が攻められる展開になりそうです。

しかし、そこで白1、3の打ち回しにはビックリ!
白3で先に白△を強化しておき、黒が右上を受ければ右下の生きに回る予定でしょうね。
そこで黒は4と右下を取りに行きましたが、白5とカケれば、白1が働いて上下の黒がつながりません。
柯潔九段の天才的な構想だったと思います。





5図(実戦黒41~黒45)
ただ、その後黒1と三々に入られた局面は、気が滅入って来そうです。
白が直前に打った手が悪手になりそうで、そうなっては絶望です。

黒1は容易に予想できる手なので、白2、4と仕掛けるまでが予定の行動なのでしょう。
ただ、白の形が悪過ぎて、この碁は長く持たないと思いました。





6図(実戦黒89)
しかし、柯潔九段は必至で踏ん張ります。
白△を捨て石に、右下隅を生き、右辺も白地にする獅子奮迅の立ち回りを見せました。
白が相当挽回したように思えます。
流石人類代表、容易に土俵を割りません。

しかし、これもAlphaGoの計算の範囲内だったのでしょうか。
黒△が白〇の一団を狙う厳しい手です。
どうやら形勢好転には至らなかったようで、この後は確実に逃げ切られてしまいました。

コミ7目半の対局は高いレベルでは白有利、というのが私の持論ですが、それは落ち着いた展開になれば最後に7目半が物を言うからです。
今回は急戦になり、むしろ黒のペースになってしまいましたね。

柯潔九段はこの碁の内容に不満だったようですが、仕方ないことです。
毎回納得のいく碁を打つことは、人間には不可能なのですから・・・。
棋譜だけで柯潔九段の気迫が伝わって来る、良い三番勝負だったと思います。


そして、もう1つビッグニュースがあります。
AlphaGo同士の対局棋譜が公開されるそうです!
毎日10局ずつ、計50局が公開されるとのことです。
既に10局公開されており、さらっと手順を追ってみましたが・・・。
異次元の碁ですね、これは・・・。
もはや強いとか弱いという次元ではなく、何をやっているのかサッパリ分かりません。
棋譜はここで公開されています。

一つだけ確認できたことは、AlphaGoが完璧ではないということですね。
10局中、白番8勝で白番有利を感じさせますが、それでも2局は黒が勝っています。
引き分けが無い以上、もしミスが0ならばどちらかの手番が全勝するはずです。
まだ囲碁の必勝法は見付かっていません・・・囲碁は深すぎるので、当たり前のことですが。
生きているうちに棋士がAIに負けるとは思っていませんでしたが、囲碁の必勝法が解明されることは無さそうです。