白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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コンピュータ囲碁について・その13「今後の囲碁界のあり方は」

2016年04月03日 00時06分18秒 | AI囲碁全般
最終回です。
その1はこちら

トップ棋士には是非とも頑張ってコンピュータと戦って頂きたいと書きました。
しかし正直な所、いつまでも同じ土俵に立てるとは思えません。
2045年問題という予測がありますが、そこまで待たずとも人間に到達不可能なレベルにまで達してしまうでしょう。
そうなった時に我々囲碁棋士の対局はどこに価値があるのか、ここでもう一度考え直す機会ではないでしょうか。
ただ強ければ良い、碁の真理に近付けば良いという時代は終わると考えています。

話は変わりますが、今日の大相撲では白鵬対日馬富士の結びの一番が話題になりました。
白鵬の横綱らしくない変化で、注目の大一番が一瞬で終わってしまったというものでした。
白鵬の相撲の是非については、議論もある所だとは思います。
やはり勝負として見れば勝ちたいのは当然ですし、あっさり飛んで行ってしまう日馬富士もどうかと思います。
ただ大事なのはファンは満足しなかったということですね。
表彰式までに多くの観客が帰ってしまいました。
優勝した白鵬自身はともかく、相撲興行としては大失敗でしょう。

囲碁の世界も、ファンのためにプロの対局があるのは同じことです。
プロはファンに楽しんで頂かなければなりません。
プロの棋力を生かして、アマにはできない雄大な構想、ぎりぎりの鍔迫り合い、等といったワクワクするような碁を打たなければならないと思います。
例えば武宮正樹九段の宇宙流は、囲碁界を席巻しました。
豪快に模様を広げ、最後には相手の石を丸ごと取ってしまうなど、なんとも派手な碁でした。
その影響でプロもアマもみんな三連星を打っていたのですから、凄いものです。
武宮九段のおかげで碁が楽しくなったという方は、相当多いのではないでしょうか?
そのレベルに突き抜けるのは難しいと思いますが、魅力的な碁を打ちたいものです。

また、対局者だけでなく解説のあり方も変わっていかなければならないと思います。
プロの対局における解説とは、盤上で何が起こっているか、頭の中で何を考えているのかといったことを伝える役割です。
現在はそれが内容の正確さに拘り過ぎ、レベルが高くなって一部のアマしかついていけない状況になっているように思います。
アマがどういった所に注目すれば楽しめるか、それを伝えることを最優先しなければならないと思います。

さて、長々と書いてきましたが、一つはっきりしていることがあります。
囲碁は数千年間人々を楽しませてきた、素晴らしいゲームです。
この素晴らしいゲームの魅力を伝える役割を得られたことは、とても幸運なことだと思っています。
世界の激変にも負けず、今後も頑張っていきたいと思います。


※コンピュータ囲碁に関しての一連の記事は3月23日~3月27日にかけてfacebookやホームページで投稿したものとほぼ同一です。
日付に関する言及で一部ずれている所があります。