白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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Master対棋士 第28局&封じ手予想

2017年03月09日 22時59分00秒 | AI囲碁全般
皆様こんばんは。
第41期棋聖戦【主催:読売新聞社】第6局の1日目は、一歩一歩確実に打ち進める河野臨挑戦者と、積極的に走り回る井山裕太棋聖が好対照だったと思います。
そして河野臨九段が本格的に仕掛けた所で打ち掛けとなりました。

私の封じ手予想はM-8切り(幽玄の間座標)です。
ここから仕掛け、最終的には右辺白の破壊を目指すのではないかと思います。
対局の模様は明日も幽玄の間囲碁プレミアムで中継されますので、ぜひご覧ください。

さて、本日はMasterと孟泰齢六段の対局をご紹介します。
孟六段は3回目の対局ですね。



1図(テーマ図)
Masterの黒番です。
何度見たか分からないような布石ですね。
第9局でも似た布石を打った孟六段ですが、本局では第5局の進行をなぞって行きました。
途中までは全く同じ進行でしたが、Masterが黒1と変化しました。

碁は盤面の限られたゲームですから、必勝法は存在します。
しかし、その道筋は1通りではなく、無数に存在するのではないかと思っています。
Masterが色々な打ち方を試みる事も、いくらかその根拠になるでしょうか。

さて、実戦は孟六段も白4で変化しました。
第5局では白Aでしたが、早い仕掛けです。
予めこの布石を研究して来たのでしょう。





2図(実戦)
その後の戦いは白〇が内側に籠ってしまい、外回りになった黒がポイントを挙げました。
さて、白△となった場面では、黒Aあたりに打って上辺を大切にするのが一般的なプロの感覚ではないでしょうか。
ところが実戦は・・・。





3図(実戦)
黒1からよく分からない打ち方を始めました!
黒がばらばらになってしまったようですが・・・。





4図(実戦)
先手を取って黒8に回りました。
お互いの石の根拠の要点で、最初からここが大きいと見ていたのですね。
ここに打った時に最も良い配置になるよう、右上の打ち方を決めたと考えられます。





5図(実戦)
白1~5で黒5子が危なくなりましたが、構わず黒6、8が強手です。
白Aと繋がろうとしても黒Bと打たれ、次にCとDが見合いとなります。
これで白は困りました。

プロは常に碁盤全体を見て打つよう心がけてはいますが、それでもいざ読むとなると、視野が一部に偏ってしまいます。
これは人間の限界であり、AIと最も差が付く部分ですね。