白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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LG杯結果

2018年02月08日 22時52分52秒 | 囲碁界ニュース等
皆様こんばんは。
本日は有楽町囲碁センターにて指導碁を行いました。
お越し頂いた皆様、ありがとうございました。
昇段のお祝いの声、著書の感想なども頂けて嬉しかったです。

さて、本日はLG杯決勝第3局が行われました。
有楽町囲碁センターの入り口付近にはモニターがあり、お客様方も観戦していました。
午後の指導碁に入る直前では、井山九段の形勢がかなり苦しそうだったので、もし追い付いたら大歓声が上がると思っていましたが・・・。
残念ながら静かなままでしたね・・・。

それでは感想を述べたいと思います。



1図(実戦)
井山九段の黒1、3の仕掛けが、この碁の方向性を決定付けました。
右上の白を包囲する最強手です。
左側の黒も弱くなってしまいますが、構わず決行しましたね。





2図(実戦)
白1、3と力を溜め、遠く上辺の黒を狙っていますが、構わず黒2、4!
ここでも最強手で応じ、右辺のラインを死守しました。
どうやら上辺の黒が取られることはないようです。
このあたり、恐らく井山九段のイメージ通りの展開だったのではないでしょうか。
形勢も黒有望かと思っていました。





3図(実戦)
白1の打ち込みに対して、黒2と打った手には驚きました。
ただつながっただけの手に見える方も多いでしょうね。
ですが、この手をぬるい手と表現してはいけません。

この手では黒Aなどと挟む手も目に付きます。
すると白はBとツケ、打ち込んだ石を捨ててくるでしょう。
しかし、黒2に対してはその作戦は採れません。
右辺が目一杯の地になってしまうからです。

つまり、黒2は捨て石の捌きを封じた最強手なのです。
白としては、生きを図るしかありませんが・・・。





4図(実戦)
そこを皆殺しにしようというのです!
黒は最強、最強でやってきましたが、ここに来て極め付けの最強手です。
井山九段の方針は一貫していました。





5図(実戦)
しかし、惜しむらくは白の死活に関して何か誤算があったこと・・・。
全軍脱出されては絶望的な形勢です。
普通なら投了するタイミングでしょう。
井山九段も、国内戦なら投了していたのではないでしょうか。

しかし、本局は世界戦決勝です。
井山九段は日本中の期待を背負っているのです。
恐らくその使命感からでしょう、井山九段はとことん粘りました。





6図(実戦)
まず、取れそうもない白×を取り込む態勢を作りました。
大きな戦果ですが、しかしこれだけでは足りません。





7図(実戦)
そこで左下白は放棄し、先手を取って左上に殴り込み!
最後の決戦を挑みました。
凄い迫力ですが、相手もさるものです。
冷静に仕留められ、逆転には至りませんでした。


棋士の世界は狭く、同業者間の仲間意識は強い方だと思います。
ですが、一方で自分以外の全員が敵であるという面もあります。
他の棋士を心の底から応援するということはあまりないでしょう。
しかし、今回は日本の棋士全員が井山九段の勝利を願っていたと思います。

死力を尽くして戦った井山九段を、誰も責めることはできません。
そもそも、世界戦準優勝も立派な成績です。
それでも、井山九段には優勝して欲しかった・・・。
残念な気持ちでいっぱいです。

しかし、井山九段の挑戦はこれで終わりではありません。
必ず次のチャンスが来るものと信じています。